「大阪のおばちゃんに習え!」
 
関西をテーマにした本が出版されています。
例えば、
「京都人のイケズ」を笑いとともに解説する、入江敦彦著『イケズの構造』(新潮社)や、大阪研究家として数多くを記している前垣和義の『どや!大阪のおばちゃん学』(草思社)。特に後者の大阪のおばちゃんに関するものは話題本の一つとしてよく取り上げられています。抱腹絶倒の内容満載、暗い世の中を吹き飛ばす勢いの本書、一読の価値があります。
 ところで、大阪のおばちゃんと言えば、
「振り込め詐欺」(通称「オレオレ詐欺」)撃退率1として知られていますし、「最強!の日本人」としてその名を全国にとどろかせています。私の周りの、東北の田舎に住む女性の中にもひそかに「大阪のおばちゃんのようになりたい」と願っている人もいるようで、全国的にはかなりの人が憧れる存在となっているのではと思います(ちょっと言い過ぎの感はありますが…)。
 大阪のおばちゃんの特徴が
『どや!大阪のおばちゃん学』にはいくつも記されていますが、それは以前、日本人が共通して持っていた特徴と重なるのではないかと思います。
例えば、彼女たちの多くは気さくです。私の経験からも大阪では買い物などしているととにかく話しかけられることがよくあります。また、大阪以外の地域でも大阪のおばちゃんが誰彼なく話しかけている姿をみかけます。
 彼女たちはサービス精神満点です。自分の失敗などをネタに笑わせようとするなど、自分だけでなく周囲と一緒に楽しんでいる。何時でも飴(大阪では「飴ちゃん」)をカバンにしのばせ、咳き込んでいる人を見かけたら
「飴ちゃん、どない?」と差し出す。飴ひとつで誰とでも友だちになれる。それに大阪のおばちゃんはお得な情報を決して独り占めしません。積極的にお裾分け、前垣氏が指摘するように「喜びの分配」をします。
大阪のおばちゃんが豹柄などの目立つ服装を好むのも、
「自分だけが目立って悦に入るのではなく、接する人を楽しませ、その場の空気を盛り上げ、話題づくりを図ろうとの意図もある」(前垣和義)からです。
「おせっかい」はマイナス面がよく取り上げられますが、困っている人を見てほうっておけないので、ついついおせっかいなるのは大阪のおばちゃんが親切だからとも言えます。前垣氏は次のように述べています。
「昔の日本人は、いまよりもすっと親切であった。困った人がいれば、自分に余裕がなくても助けの手を差しのべたものだ。これは、日本人の美徳でもあるが、モノが充足されるにつれて失われつつある。見て見ぬふりをする人が、増えている。」
 
 あるテレビ番組の特集で
「ニート」と呼ばれる人たちのことが特集されていました。「Not in Employment,Education or Training」の略ですが、日本には現在、約85万人のニートがいると言われています。この「働かない、学ばない」人たちは自分の力では変わることは難しいようです。
「でもちょっとした他人のおせっかいが、働きはじめたり、学びはじめるきっかけを作るのではないだろうか」
とこの問題の専門家がその番組で言っていたことが印象に残っています。
 
 新約聖書の中でパウロは次のように勧めています

「すべての真実なこと、すべての誉れあること、すべての正しいこと、すべての清いこと、すべての愛すべきこと、すべての評判の良いこと、そのほか徳と言われること、称賛に値することがあるならば、そのようなことに心を留めなさい。」(ピリピ4:8)

 
勿論、大阪のおばちゃんの特徴の中で真似したくないこと(例えば、ルール無視や強引さ)もありますが、近所の子どもに(たとえ知らなくても)気軽に声をかけたりすることは、
「無関心が大手を振って歩いている」(前垣和義)今の時代にとって大切なことではないでしょうか。

 聖書には
「互いに」という言葉が多く登場します。
「互いに愛し合い」(ヨハネ13:34)
「互いに励まし合い」(Tテサロニケ5:11)、
「互いにあいさつをかわしなさい」(Tコリント16:20)、
「互いに仕え合いなさい」(Tペテロ4:10)
などがそうですが、無関心を克服し、まわりとの関係を育む方法を大阪のおばちゃんから学びたいと願います。