「幸せの原体験」

 
 恒例の「衡中北夏まつり」が、今年も7月29日(土)に行なわれました。長梅雨で心配された天候も午後には回復、夕方からは涼しい風も出て絶好のコンディションの中、家族総出の大イベントになりました。太鼓とバンド演奏もあり、大いに盛り上がりました。
 
 私は8年前に、祭りの会場になっている大衡村五反田住宅に移ってきました。以来毎年この祭りに参加していますが、年々盛大になって行くのを見るのは嬉しいことです。特に今年は幼い子供さんたちの姿が目に留まりました。家族全員が参加出来るこのような集まりを持つことは、今、都会では難しい時代です。この幼い子供たちが老いた後になっても、この夏の夜の祭りの情景は心の内に焼きついているに違いありません。
 
 40年前、私も7人の子供を育てていました。大阪にあった私たちの教会では毎年お盆のころに、四国の松山にある教会と一緒に集まりをするのが行事となっていて、それは5年くらい続きました。上の子供が小学生で、下はまだ乳飲み子でしたが、家族全員で旅行しました。その頃、団体の客室は船底で、一般の船客と一緒ですからタバコの煙がもうもうと立ちこめていました。そんな中で家族ゴロ寝の一晩を過ごしたものでした。
 歳月が流れ、子供たちもある程度大きくなってから、家族で旅行する機会がありました。どこかの駅だったと思います。いずくともなくタバコの煙の香りが漂ってきた時、子供の一人が
「あー、良い匂い。この匂いをかぐと幸せな気分になるなー。」と言うのです。私は驚きました。タバコを吸う者はいないので、家には無い匂いの筈だったからです。その時、とっさに思い浮かんだのがあの船室の情景だったのです。
 
 家族全員が揃っての楽しい旅行、両親がそこにいて仲良しの友達もいる。子供たちにとっては、毎年夏に訪れる至福の時だったに違いないのです。
 
「幸せの原体験」とでも言うのでしょうか。

 
 昨年、この夏まつりで、ゆかたを着て「万葉おどり」を踊った娘が、2週間前に嫁いで村を去りました。成人した子供はこれで全部親元を離れ、私たち二人が残されました。でも、村の夏まつりの思い出は、きっといつまでも残ることでしょう。
 
 秋は「ゴスペル・タウンまつり」があります。又、そこでお逢いしましょう。