明けましておめでとうございます。
 
 新年の新しい門出を祝ってくみ交わすお酒のことを、「おとそ」と言いますね。これを漢字で書くと「お屠蘇」です。屠とは屠る(ほふる)殺すこと、蘇は蘇る(よみがえる)ことで、この二つを合わせて「屠蘇」となるのですが、これをお祝いする習慣は一体どこから来たのでしょう。
 
 旧約聖書の「出エジプト記」12章に出てくる話で、モーセに導かれたイスラエルの民がエジプトから脱出する時、神が民に命じて、正月14日の夜、その家の入り口と鴨居とに殺した羊の血を塗らせた。その夜、神はエジプト全土をまわって長子を皆殺しにしたが、羊の血を塗っているイスラエル人の家だけは、素通りして殺さなかった。そして「この正月14日を過越の日として祝日とし、永久に記念せよ」と命じた。と書かれているのです。
 お屠蘇を祝う習慣はここから来たと言う説があるのです。こうした習慣は日本だけではなく、西アジア、インド、中国にもあり、その日がいずれも正月14日であることから、根源がここにあるのではないかということになっています。
 
 古い神社には今でも、鳥居が赤く塗られているところがあります。入り口の両側と鴨居に血が塗られると、ちょうど赤い鳥居の形になるのではないでしょうか? このようなことは、農民や、狩りをする人が思い付きで出来ることではありません。
 
 日本民族の歴史の中で指導的な立場にあった豪族も、元をただせば大陸から移住してきた渡来人であったことが証明されています。長い歴史の中で、神道、仏教と宗教は異なっても、私たち日本人の行事・習慣の中に、旧約聖書の思想が多く見られるのは不思議なことです。
 
 イエス様のことを「神の小羊」と呼びますが、この羊という字を、我の上に乗せると「義」となります。これなど明らかにイエス・キリストが私達の罪の身代わりとなって殺され、神がこれを蘇らせた。それを信じる者が「義」とされるという福音そのもので、漢字が出来た古い中国に、すでに新約聖書の思想が入っていたことも、考えれば驚くべきことです。
 
 「お屠蘇」を祝う日本の習慣の意味が少し判ってきたような気がします。