ゴスペルとは
現在日本で一般的に「ゴスペル」と呼ばれているのは、おもに黒人教会で歌われているもの、その中でも1960年代に登場したクワイア(聖歌隊)という形態のものです。 17世紀初めから奴隷としてアフリカから連れて来られた黒人たちは、主人からキリスト教を教えられました。現実の生活があまりに悲惨だった奴隷にとって、イエス・キリストの救いと、苦しみのない永遠の神の国の約束はかけがえのないものになり、彼らの多くは熱烈な信仰をもつようになりました。当初は従来あった賛美歌が歌われていました。アメイジング・グレイスなどはその一つです。やがて黒人の教会から彼ら独特の賛美歌が出てきました。現在「黒人霊歌」として知られている歌の誕生です。1760年ころには最初の黒人霊歌が成立したと言われています。この黒人霊歌は、奴隷解放(1863年)後の1875年頃、フィクス大学の学生たちからなるフィクス・ジュビリー・シンガーズが、欧米各地を巡回して歌ったことにより、広く知られるようになりました。その後、 1920年代にトーマス・A・ドロシーが、黒人霊歌をさらにポップな曲調で歌い、教会以外でも人気が出るようになりました。こうして黒人教会以外でも親しまれるようになり、現在の「ゴスペル」=「ブラックゴスペル」のイメージを与える下地が作られました。この後、ゴスペルは黄金期を迎え、その時代がジャズ、ソウル、R&B、カントリー、ロックンロールの源流となるのです。
以上は、現在の日本で一般的にイメージされている「ゴスペル」の流れですが、実はゴスペルミュージックについての紹介としては、ほんの一部のものでしかありません。 さらに広い視点で語れば、もともとゴスペルとは英語で“Gospel”と綴り、God Spell(神の言葉)=Good Spell(良い知らせ)が変化した言葉だと言われており、日本語では「福音(=良い知らせ)」と訳されます。さて「福音」とは聖書のメッセージそのものを表す言葉です。それは、新約聖書ヨハネの福音書3章16節「 神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」という箇所にも集約されるように「神が無条件に全ての人を愛している」というメッセージを指し示す言葉でした。すなわち、本来音楽とは関係のない言葉だったのです。
それが後に聖書のメッセージにメロディーをつけたもの全般をゴスペルミュージックと呼ばれるようになりました。ですから、音楽のジャンルには関係なく、歌詞が聖書のメッセージであれば、それは全てゴスペルミュージックであるということができるのです。従って、ゴスペルには様々なジャンルのものが存在するのです。
この文章はGPM (ゴスペル企画ミニストリー)のご好意で転載させていただきました。