[説教断片]

 説教:主イエスは、生きておられる
    
(2009年11月29日 徳田 宣義牧師)

 聖書:ルカによる福音書24章13〜27

  主イエスを十字架によって失った二人の弟子は、自分の
 生活へ戻るためエマオという村へ向かいます。そこへよみ
 がえられた主イエスが近づいて来て、一緒に歩き始めたと
 いうのです。しかし、弟子たちは、信仰の目がさえぎられて
 いて気がついていません。主イエスは、「やり取りしている
 その話は何のことですか」と言われます。二人は暗い顔を
 して立ち止まったと聖書は伝えています。どうして、弟子た
 ちが主イエスと理解していなかったのか というと、 「イエス
 は生きておられる」 と婦人達が告げたことを信じていなか
 ったからです。 主イエスが生きておられるとわからないと
 いうことは、当然、 主イエスが、自分たちと共にいてくださ
 るということもわからないということです。ですから、暗い顔
 になると聖書はいうのです。そして、それは私たちも同じで
 す。試練の中で行き詰って、しかもそこで主イエスのことが
 わからなくなるとき、私たちは、自分の苦しいことだけを見
 詰めて、暗い顔をしてしまっているからです。

  そして、暗い顔をしている弟子たちに主イエスは、「モー
 セとすべての預言者から始めて、聖書全体にわたり、御自
 分について書かれていることを説明された」というのです。
 およみがえりになった主イエスが、言ってみたら、エルサレ
 ムから、とぼとぼ歩く、クレオパたちを追いかけて説教して
 くださったのです。主イエスは、弟子たちを救いから逃がさ
 ない。それほどに弟子たちは主イエスに愛されているので
 す。そして、主イエスは、私たちをも逃がさない。 私たちを
 愛してくださっているからです。その愛が私たちの教会にも
 届いています。 そう思わずにおれないことが先日ありまし
 た。ある方が礼拝の後で 「説教の後の賛美歌が途中から
 歌えなくなることがある。賛美歌を歌いながら、語られた聖
 書の言葉が降ってくるような思いになるからです」 と、明る
 い表情で静かにそう話してくださいました。 クレオパたちと
 一緒に歩んでくださった主イエスが、この方の傍らにもいて
 くださると私は思わずにおれませんでした。そうとしか説明
 できない思いがしているのです。主イエスが共にいてくださ
 る。 それは暗い顔で立ち止まることではなく、このような落
 ち着いた喜びを私たちに与えるのです。

  先程、司式者が祈ってくださいました。今、私たちの教会
 のある仲間が、病床にあって危険な状態にあります。先日
 は、今日か明日かと告げられる状況でしたから、連日病院
 へ伺いました。もちろん、私に癒す力があるわけではありま
 せん。聖書の言葉を読んで祈り、声をかけるだけです。 何
 度も語りかけて、ようやく小さく頷くことしかできないその方
 のために、聖書を読んで祈ったある時、教会員であるご主
 人が、耳元で「よかったね」 と話しかけました。その時、もう
 聞こえないような声でしたが「うれしい」と返事をされたので
 す。 ああ、この病床においても、主イエスが、聖書をとおし
 て語りかけてくださる。聖書に書いてあることは、本当なん
 だ。そう思わずにおれませんでした。主イエスが、私たちの
 教会の仲間の病床にまで、追いかけてきてくださり、傍らに
 いてくださっている。 だからこそ、もう息も止まるような命の
 危険の中で、「うれしい」と答えることができたのだと思うの
 です。

  主イエスは、よみがえられました。生きておられます。私
 たちと一緒に歩んでくだいます。重い病になって、もう教会
 に来ることができなくなっても、祈って聖書を読むところで、
 主イエスは、私たちと共にいてくださいます。いや、私たち
 の気がつかないその時から、一緒に歩んでくださいます。
 もう駄目だと人生をあきらめてしまいそうになったとしても、
 主イエスが、皆さんの後を追いかけてくるのです。神が皆
 さんを愛する、その思いは熱い。 死んでもなお、皆さんを
 よみがえりの命へ解き放ち、神と共に生きる命へ導こうと
 されるのです。そのために主イエスは私たちの罪をみんな
 背負って十字架に架かられ、私たちに罪の赦しをください
 ました。 そして、主イエスがおよみがえりになることで、主
 イエスとつながる私たちも死んでなおよみがえりの命へ生
 かされるのです。この希望があるから、私は病床に行くこ
 とが出来ます。 この死を突き抜ける善き知らせが病床の
 人を慰めます。 この望みが看病をする家族を支えるので
 す。 そして、今、皆さんの耳にも、聖書の言葉が聴こえて
 いると思います。 これは、主イエスが、皆さんと共におら
 れる確かなしるしなのです。主イエスは、生きておられます。
 皆さんを、本当の命に生かすために。

                                 完


 説教断片のリストに戻る


※ ここは、桜新町教会のサイトです。コンテンツの著作権は桜新町教会に帰属します。