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パーシェンオルガンについて オルガンビルダー:望月広幸
 五橋教会のパイプオルガンは、776本の笛からできていて、13個のストップを備えています。これらは、二段の手鍵盤とペダルに配分されており、ストップの組み合わせを変えることによって、様々な音色を奏でます。第一手鍵盤(下の段)が主鍵盤で、これに属するプリンシパル8フィートが、このオルガンの中心となります。オルガンの前面に並んでいるのが、この笛です。プリンシパル8フィートをベースに、プリンシパル4'、オクターブ2'そしてミクスチュアーが重なっていくと、オルガン独特の重厚で輝きのある響きを生みだします。これに対して、ロールフレーテ8'は軟らかいフルート系の音色です。
 第二手鍵盤の笛はシャッター付きの箱に収められていて、これをスウェルと言います。オルガニストは、シャッターを開閉して音量を加減します。ここのストップは、主鍵盤に比べてフルート系の笛が多く、しかも音色の変化に富んでいます。例えば、クルムホルン8'というのは、リード管で、あのバグパイプを思わせるような、大変くせのある、牧歌的な音色を出します。また、ナザート22/3'は五度音を、テルツ13/5'は三度音を出し、これらを他の8'、4'、2'と組み合わせることにより、コルネの響きが得られます。主鍵盤の方が、さにび歌の伴奏、あるいは前奏曲とフーガなどの楽曲に適するとすれば、のソロ声部などに適し、シャッターを閉めた最弱音は、献金の時の奏楽などに使いやすい音量です。
 ペダルのスブバス16'、ゲダクトバス8'は共に木製の管で、オルガン本体とは少し離れて、後ろの格子の中に立ち並んでいます。これらは、文字通りオルガンの音の低音部を受け持ちます。
 キイアクションはメカニカル、ストップアクションはエレクトリックで、4つのフリーコンビネーションとテュッティが付いています。また、スウェルには、速度調節可能なトレモロが備わっています。
 伝統ある五橋教会のオルガン設置という大きな課題を与えられて、私共はとても光栄に思いました。そして先ず、独特なこの会堂の中で、オルガンに許されたスペースを最大限に生かそうと試みました。しこも、会堂の中で、オルガンが決して目立ち過ぎないように、視覚的にも音質の面でも配慮したつもりです。幸い、出来上がったオルガンは、他の要素とうまく溶け合い、違和感を感じさせません。そして、オルガン音は、よく声のでる当教会の会衆のさんびと相乗し、大きな効果を挙げています。これは、私自身、奉献礼拝の奏楽をした時に実感しました。
 このオルガンの特徴のひとつは、コンソールがオルガン本体の横に付いていることでしょう。オルガンにはペダルと大きなベンチがつきもので、これが結構場所を取ります。鍵盤の位置を横向きにすることで、ずいぶん奥行きを節約できます。同時に、オルガニストは首をあまり振らずに、あるいは鏡がなくても、会堂の様子をよく見ることができます。このように、五橋教会のオルガンは、ドイツ的とか、ネオバロック的とか言う前に、五橋教会のために生まれた楽器であります。また何よりも、礼拝における会衆のさんびを力強く支えるために備えつけられたものであります。これから21世紀に向かって当教会の働きの中で、このオルガンが充分に活かされるよう願っております。