日本キリスト教団

 
 
2024.09.22
説教ダイジェスト
礼拝説教要約
『神の富と知恵と知識』
ローマの信徒への手紙11章
28―36節

 パウロは、神の偉大さを讃える。パウロは、同胞であるユダヤ人たちがイエス・キリス トを拒絶してしまい、頑なな心であるので、神の救いにあずかれるのかと大いに心配にな った。このことを9章で、「わたしには深い悲しみがあり、わたしの心には絶え間ない痛み があります」と言う。しかし、神がユダヤの人々もすべての人々を救うためにはからって いることを気づいて、パウロは人知を超える神の知恵と力を大いに喜び、神の偉大さを讃 えている。

  パウロは、同胞であるユダヤ人が救われないのではないかと不安にされ、悩んだ。私た ちも、長い人生の中に悩みを抱える。NHKテレビの番組で、ミッドライフクライシス、5 0歳代の人たちが悩んでいることが紹介されていた。私たちは青春時代だけでなく、人生 を生きて曲がり角に悩む時を迎える。私たちの生きている現実は、いつもはっきりとした 答えがあるわけではない。様々なことが想定され、様々な場合がありうる。答えは一つで はないし、それぞれの答えが正しいこともある。複雑な現実の中で私たちは悩む。

  旧約聖書では、神は知恵に富んだ方だと見ていた。信仰深い人に神が知恵を授けると信 じていた。パウロは伝道生活では、ギリシャの思想、グノーシスに立ち向かった。グノー シスとは、知識、神の世界の知識。知識が豊かだから、十字架は問題ではないとする人々 の中で伝道した。そういうパウロは、神こそが最も知識に富んだ方だというのだ。神は富 み、深い知恵と知識をもってすべてを救いへと導いておられる。知恵と知識を、救いのた めに用いてくださる。そして、このような神は、悩むということはないのだろう。

  私たちの人生の中で、これからどうなるのかわからないということが最大の問いではな いだろうか。私たちは、わからないことがあり、知りたいことがある。しかし、これから のことは往々にしてわからないし、知り様がない。人間の限界ということを身につまされ る。そういう時、人間にはわからんことがあるのさと放っておくのか、それとも、人間だ からわからないことがあるので、これは神様に教えていただこう、その時が来るまで待っ ていようとするのか。この二つの態度は目に見える所は同じような態度に見えるが、この二つの態度の信仰のあるなしははっきりしている。私たちは神の時を待つのだ。

  やりたいことがある、このようになってほしいということがある、つまり、願望がある。 これが人を悩みに誘う。こだわりがある。こうならねばと強く力む。これが人を悩みに誘 う。私たちの身勝手な願望に囚われて、私たちの悩みは大きくなり尽きることがない。私 は、悩みながら、ああこれは私の身勝手なために悩んでいるだと気づかされる。それで、 心をしずめることもある。愛に満ちた神様には、こういうことはないのだろう。私は人間 だなあと思わされる。

  私たちは、今すぐに、知りたい、わかりたい。しかし、今この時、手にした答えが正解 だという保証はない。人間としての最大の誠実さをもって、神に託すという道がある。勇 気を与えられたい。神の領域に踏み込まず、神に期待していこう。よく言われることだが、 答えのない、あいまいさに耐える心を持とう。それは、神を拠り所とすることだ。パウロ が今日の箇所で神を讃えるのは、つまりは、こういう思いから出たことではないかと思う。

  イエス様の言葉がある。マタイ福音書6:25-34「25 だから、言っておく。自分の 命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩 むな。命は食べ物よりも大切であり、体は衣服よりも大切ではないか。26 空の鳥をよく見 なさい。種も蒔かず、刈り入れもせず、倉に納めもしない。だが、あなたがたの天の父は 鳥を養ってくださる。あなたがたは、鳥よりも価値あるものではないか。27 あなたがたの うちだれが、思い悩んだからといって、寿命をわずかでも延ばすことができようか。28 な ぜ、衣服のことで思い悩むのか。野の花がどのように育つのか、注意して見なさい。働き もせず、紡ぎもしない。・・・31 だから、『何を食べようか』『何を飲もうか』『何を着よう か』と言って、思い悩むな。32 それはみな、異邦人が切に求めているものだ。あなたがた の天の父は、これらのものがみなあなたがたに必要なことをご存じである。33 何よりもま ず、神の国と神の義を求めなさい。そうすれば、これらのものはみな加えて与えられる。 34 だから、明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労 は、その日だけで十分である。」

  神は私たちを忘れてはいない。悩みの中にある私たちの傍らで、善きことへとはからっ ておられる。
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