日本キリスト教団

 
 
2024.11.24
説教ダイジェスト
礼拝説教要約
『神は世界に満ちている』
マタイ福音書6章
25-34節

  信徒の友12月号最新号に、国連難民高等弁務官をされ、国際基督教大学で難民問題に ついて研究しておられる橋本直子先生のインタビュー記事があった。大学の時、内戦状態 の旧ユーゴスラビアに行かれ10家族が身を寄せ合って暮らす避難所を訪れた。「彼らはな けなしの配給の小麦粉を使ってパンを焼いて、・・・人間にとって本当に大事なのは、こう して他者と愛し合い支え合うことのできる人間性なのだと教えられました。」と語る。今日 の聖書の言葉「自分の命のことで何を食べようか何を飲もうかと、また自分の体のことで 何を着ようかと思い悩むな。」(25節)を読んで、この記事のことを思い出しました。

  神様に与えられた一日一日を生きることが、一人ひとりの唯一の課題。そういうことも あるのです。そういう暮らしは、何も生み出さないかもしれません。そういう生き方は無 駄でしょうか。日本人は昔、恙(つつが)ない生活を良しとしました。何の変化も事件も 問題もなく、逆に飛び上がるような嬉しいこともない、けれど、息災に、ちゃんと無事に 生きている。このような平凡な一日一日を何回も繰り返すこと。それが、恙ない生活です。 私はイエス様の言葉をそのように読みます。「だから、明日のことまで思い悩むな。明日の ことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である。」(34節)

  イエス様は、敵を愛しなさいと教えられている箇所で「しかし、わたしは言っておく。 敵を愛し、自分を迫害する者のために祈りなさい。あなたがたの天の父の子となるためで ある。父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨を降らせて くださるからである。」(5:44-45)と言われます。神様が太陽を登らせるので、私 達に新しい一日が始まります。それはすべての人に同じようになさっている。神様は私達 に新しい一日を与えて下さり、その一日を生きる命を与えて下さいます。私達は神様が下 さった一日を感謝して過ごし、神様が下さった命を感謝して生きるのです。それが私達の 一日一日です。

  一日一日を神様と共に生きる。何十年、何百年生きようとも、これが、私達の本当の姿 です。私達の思うこと、考えること、そしてこれからどうしようかと予定を建てること、 人生を計画すること。すべて、このことをもとにして成り立っているのです。 自分の力で生きているのではありません。神様が下さった命によって生かされているの です。そういう私たちの姿は、野の花や空を飛ぶ鳥と同じです。私達の本当の姿は、実は 2 本当は、一日一日を生きているということです。

  マタイ福音書25章のタラントンの譬えでは、ある主人が長い旅に出て、2タラントン 受け取った人、5タラントン受け取った人、それを元手にさらに増やしました。帰ってき たご主人様によくやったとほめられました。けれど、1タラントン受け取った人は、ご主 人様は恐ろしい方だから、地面の下に隠しておきました。この人は、これから起こる悲劇 的な結末を恐れ、大いに心配しました。タラントン、神様から託された賜物を使わないま ま、死蔵してしまいました。これはご主人様の望むことではありませんでした。

  一人の青年はイエス様に尋ねました。「永遠の命を得るには、何をすればよいのですか」。 この青年は、永遠の命を得たいと悩んでいました。焦っていました。イエス様は、この青 年に十戒の戒めを守り、持てる物すべてをささげて、それから私に従いなさいと諭されま した。十戒の戒めを守る、それは今です。十戒の戒めは今日、この時に守ります。神様と 共に、今日を生きるのです。今日を見失っていたら、明日はないのです。

  昔、ユダヤの人々は苦しみの地エジプトから指導者モーセによって導き出されました。 荒れ野を40年間彷徨い、人々はモーセに飲み水がない、食べ物がないと訴えました。神 様は荒れ野を旅する人々にマナという食物を毎日与えてくださいました。毎朝、地面に落 ちているマナを拾って食べたのです。中には、次の日のことを心配して、今日の分だけで なくさらにもう一日分も拾った人がいました。しかし、それは腐ってしまいました。神様 は、その日その日の恵みを毎日欠かすことなく与えて下さいます。私達は主の祈りで「我 らの日用の糧を、今日も与えたまえ」と祈ります。私達は神様からの恵みによって一日一 日を生かされているのです。

 イエス様は、幼い子どもたちを祝福されました。天の国は子どもたちのような人たちが 尊ばれるところだとお話になりました。子どもたちは、ただひたすらに父母を、家族や周 りの大人たちの優しさを信じ信頼して生きています。そして、今日の聖書の箇所に勧めら れている態度、何を食べ何を着ようか、どうすれば命や寿命が保たれるだろうかと心配し ない。それは子どもたちのことです。子どもは明日を心配しません。今日を生きています。 一日一日を生きることに思いを込めるなら、もっと平和な世界になるかもしれません

 愛隣こども園
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