3月20日(日)受難週礼拝
「今日、あなたはわたしと一緒に天国にいる」 説教要旨
−ルカによる福音書23章32節〜43節−  
 

 

 


   すべての人がイエスをののしっている時、たった一人例外がありました。それは、この世から見れば、全く見捨てられた人間、最下等の人間でした。それはイエスと共に十字架につけられた盗賊の一人でした。この十字架の上に、ペンテコステ前に、最初のキリスト教会が成立したのです。弟子たちがみな逃げてしまった時、最初に主を告白する者が生まれたとは、驚くべきことではないでしょうか。告白ということは、かならずしも素晴らしい状態の時、するものではありません。バルメン宣言は、実にヒットラーのナチズムが荒れ狂い、どうしようもない時代になされました。今、みにくい罪のただ中で告白がなされています。輝かしい復活の時、信じた人はいます。ペンテコステの激しい聖霊の降臨の時、動かされた者は大勢います。しかし、ただ十字架だけで信じた人は、この犯罪人ただ一人でした。こうしてこの犯罪人が、最初のキリスト教会を形成します。
   けれども、そこには、この犯罪人の告白が先にあるわけではありません。その前に実にイエス・キリストのゆるしの祈りがあるのです。イエスは言いました、「父よ、彼らをゆるしてやってください。何をやっているのか、分からずにいるのですから」と。この祈りは決してこの犯罪人のために、あるいは当時の人びとのためにだけあるのではありません。ほかでもなく、十字架の主は、あなたのために祈っておられるのです。しかも、忘れてはいけません。あなたの罪のために、あなたの良いところではなく、ほかでもなくあなたの悪いところ、あなたが忌み嫌い、憎み、いやだと思い、そんなところはなければいいのにと思っている、そういうところに、あなたの弱さ、欠け、ふつうなら非難攻撃のまとになるような、叱責の対象であるような、そのことのために、今、十字架の主が祈っておられるのであります。
   次に、そのあなたの罪のために十字架の主は、血を流すまで、戦ってくださったのです。確かにわたしたちも、苦しみの中で祈ります。しかし、それはただ苦しみから逃れることに集中していないでしょうか。けれども、今十字架の主の祈りは、自ら苦しみから逃れるためではなく、かえって自分が苦悩を負って、他の人の苦しみ、罪をゆるすことに集中します。わたしたちは、ふつう悪いことを見れば、非難します。さばきます。さばくことによって、自分の悪をカバーします。しかし、イエスは十字架の上でゆるします。それは、ほかでもなく十字架の上で、わたしたちの罪をカバーすることなのです。「愛は多くの罪をおおう」(Tペテロ四・八)。ふつう正義は罪をあばき、さばきます。そして怠惰は、罪をごまかします。けれども「愛は多くの罪をおおうのです」。ここでは二人の犯罪人が二つに分かれます。それは、ただ一つ罪を認めるか、認めないかという点にかかっています。もちろん罪のあることは、誰でも一応は認めましょう。けれどもそれは誰にもある罪で、まあ言ってみれば五分五分で、善もあれば悪もあると言った具合です。ところが神の前に立つ時、善の中にさえ宿る罪があきらかにされます。ここで一人の犯罪人は、自分が罪人の身であるのに、なおも十字架の主をののしり続けます。わたしたちの罪をあがなおうとされるイエス・キリストをののしるのです。自分の罪は棚に上げてです。本来自分の罪を言い現そうとしない者は、他人の罪をあげ、悪口を言います。しかし、自分の罪に気がつく時、悪口は言えなくなります。この人は、今、自分を変えなくてはならない時、神に「変われ」と迫ります。しかし、神がわたしたちに、「変われ」と命じておられるのではないでしょうか。自分を変えることが、ほかでもなく悔い改めであります。そして自分を根本的に変わる必要がないと思うこと、それが、罪にほかなりません。自分の罪を告白できない者は、神を告白できません。なぜなら、神とは、この十字架において、わたしたちの罪をあがなう神にほかならないからです。
 ところが、もう一人の犯罪人は、すなおに自分の罪を認め、主を受け入れました。そして言います、「イエスさま、あなたのお国に入る時、わたしを覚えていてください」。 イエスは、彼に言いました、「ほんとうにあなたに言います、今日、あなたは、わたしといっしょに天国にいるのです」。驚くべきことに、このようにイエス・キリストは、この彼の祈りに、ただちに答えておられるのです。罪を括弧に入れた祈りは、答えが遅いのです。それは、わたしたちの罪に気づかせるまで、神が待っておられるのです。

 

   
ぜひ、あなたも礼拝に出席して直接お聴き下さい。一人でも多くの方のご出席を心からお待ちしています。
   


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