7月 16日(日)「牧会カウンセリングの真理」説教要旨
   ローマ  15章 7節

   「牧会」という言葉は、ドイツ語で「ゼールゾルゲ(Seelsorge)、魂の配慮」です。魂はふつうの日常生活では、配慮の対象ではありません。お金のことや仕事のことで配慮はあっても、「私の魂のことを面倒見てくれ」とは言わないでしょう。日常生活では「魂」は忘れらた存在なのです。魂は心よりも、精神よりも、もっと奥深くにある私自身の中心です。
  魂のことを、私は、心の病んでいる友から学びました。それは人間の根幹にふれることです。相手の心が病んでいると考えてはなりません。あらゆる病名は医者が、便宜上つけた名前で、そういうものはない。そこに苦しんでいるが人いる、このことのみに目を向けること、それを「現象学的対応」と言います。そこで大切なことは、

1 敬意をもつこと、その人は優れたものをもっていると知ることです。

2 愛をもつこと、それは同情ではなく、対等の愛をもつことです。どんな子供でも、下に見てはなりません。おかしなところがある人でも、そこには他と違った優れたところがあると信じなさい。

3 対話をすること、聞くことが中心ですが、聞くだけでは駄目です。聞き取ると言った方がよいでしょう。

4 特に「受け入れる」ということは、大切です。「キリストがあなたがたを受け入れてくださったように、あなたがたも互いに受け入れあって神の栄光を表しなさい」。キリストは取税人、罪人を受け入れました。その時、「悔い改めたら」とか「改心したら」という条件はつけません。信仰義認とはキリストが十字架のゆえに、私を無条件で受け入れてくださったことです。
  このことは認知症と言われる場合にも全くあてはまります。「信仰弱い人を受け入れなさい。その考えを批評してはいけません」(ローマ14:1)、「わたしの名のゆえに、このような幼な子の一人を受け入れる人があれば、その人はわたしを受け入れるのです」( マタイ18:5)、十字架はまさに私たちの受け入れ、対話の基礎です。「空の鳥が空気を必要とするように、魚が水を必要とするように、私たち人間は互いに受け入れられることを必要としています」(モルトマン)。

5 極力相手を理解しようと努めなさい。たとい意見の違いがあっても。いや意見の違いがあるからこそ、理解しようと努めなさい。「あなたと一番意見のあわない、あなたの目には誤った考えをもっていると思われる知人を選び出してごらんなさい、そして相手の見方、信念、気持を、鋭く正しく言えていると相手が認めてくれるまで話してご覧なさい。十回試みて九回は失敗するでしょう。言葉でなく彼自身に耳を傾けるとき、そして私が彼の一個人としての意味を聞き取ったことを彼に知らせる時、多くのことが生じます」。「あたかも天空から響いてくる音楽のように、彼が直接言おうとしていることを超えた全体からの響きがあります」。

6 対話にはマイナス面があります。それは断絶です。罪の現実です。  聖書を見ても、対話に造られた人間の断絶が記されています。いや、聖書の歴史は、この罪、断絶の歴史と言っても過言ではないでしょう。アダムは、「これこそわたしの骨の骨、肉の肉」と言ったエバと断絶します。聖書の歴史は、この断絶、破れから始まっています。今日、日本でも離婚や別居が増えてきました。この対話は、いつも破れ、断絶の危機にさらされているのです。。このような私と汝の「事実関係が背かれることはあるでしょう。けれどもこの関係が破棄されることはありません」。つまり、破れている時も、人間の根本的関係が「私と汝」であることは、変わりなく存在し続けるのです。

  ここで三位一体の神にふれなければなりません。子は捨てられます。十字架の上で苦しみ、「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」と問います。子が苦しむ時、父も苦しみます。父と子は一つだからです。「暗黒の背後で、そのまま無傷な姿で、光の中に生きている」のではありません。そこに聖霊の「言葉に言い表しがたいうめき」が聞こえます。「もしも言葉に沈黙の背景がなければ、言葉は深さを失ってしまうでしょう」、「愛の中には言葉よりも多くの沈黙があります。『黙って!あなたの言葉が聞こえるように』」。聖霊なる神。それは「語ることのできない」とりなしと、助けをもって、私たちに臨みます。三位一体の神には、この沈黙も破れも含まれ、それは対話と共にあるものです。「私たちはいかに祈るべきか知らないが、御霊言いがたい嘆きをもってとりなしたもう」(ローマ8:26)。それは聖霊を求める祈りに通じます。 
 

ぜひ、あなたも礼拝に出席して直接お聴き下さい。一人でも多くの方のご出席を心からお待ちしています。
   


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