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11月9日(日)「善をもって悪に勝て」説教要旨
箴言25:21-22 ローマ12:12-21
  ここに「善をもって悪に勝て」とあります。その前後の聖書の箇所を見て見ましょう。
 「兄弟の愛をもって互いにいつくしみ、進んで互いに尊敬しあいなさい。熱心でうむことなく、霊に燃え、主に仕え、望をいだいて喜び、艱難に絶えて、常に祈りなさい。  互いに思うことを一つにし、高ぶった思いをいだかず、かえって低い者たちと交わるがよい。自分が智者だと思い上がってはならない」(ローマ12:10-16)
 とあります。この前提の下に、
 「だれに対しても、悪をもって悪に報いず、すべての人に対して善を図りなさい。あなたがたは、できる限りすべての人と平和に過ごしなさい。愛する者たちよ、自分で復讐しないで、むしろ神の怒りに任せなさい。復讐はわたしのすることである。『わたし自身が報復する』」。「悪に負けてはいけない。かえって善をもって悪にかちなさい」  なのです。
 悪と善とはどちらが強いでしょうか。ふつうは悪の方が強いと言われます。「善事は門をいでず、悪事は千里を走る」。「悪いやつほど、よく眠る」と言われます。善は弱く、悪は強いのです。善いことをしても、あまりニュースになりません。しかし、悪いことは、すぐニュースになります。
 善はどうしてそう弱いのでしょうか。それは善をするには、善い方法で行かなくてはならないからです。悪は違います。何をしたってかまわないのです。方法はいくらでもある、悪巧みをすることができるのです。
 しかし、本当に悪は強いのでしょうか。「天網かいかい粗にして漏らさず[天の網の目は粗いようでいて、小さな悪も見のがさない]」と言います。ここでは、私たちの小さな善が悪に勝つと言っているのではありません。
 「愛する者たちよ、自分で復讐しないで、むしろ神の怒りに任せなさい。復讐はわたしのすることである。『わたし自身が報復する』」。
 つまり、「思い煩うな」は「思い煩う必要がない」の意味、神があなたがたのために思い煩ってくださるから。また「さばくな」は「さばく必要がない」の意味、なぜなら神があなたがたのために、さばいてくださるからです。したがって、「善をもって悪に勝つ」とは、私たちの仕事でなく、「神を信じる」ことなのです。「神さまは、必ず報いてくださる」と信じることなのです。
 けれども、本当にそのように、神は正しいさばきをしてくださるのでしょうか。よく「もし正しい神がいるなら、どうしてこんなに悪いことがはびこるのか」と疑問が出ます。
 アウグスチヌスは、「神は、一部をこの地上でさばき、残りは天でさばかれる」と言いました。もし全部地上でさばくなら、善も悪もなく、ただ神との取引勘定になるでしょう。5つ悪ををしたら、5つさばくと。しかし、もし地上で全部さばかれないなら、私たちは絶望し、信じることもできないでしょう。
 「あなたがたのうち主を恐れ、そのしもべの声に聞き従い、暗い中を歩いて、光を得なくても、なお主の名を頼み、おのれの神に頼るものは誰か」(イザヤ50:10)。
 したがって、信仰とは、さばきを天に残しておくことです。地上ですべての決着をつけないことです。
ですから、「善をもって悪に勝て」ということが、真理となるのです。
 短い時限で見ると、必ずしも善は悪に勝てません。悪が勝利ををし、悪人がにゃにゃ笑っている場合もなきにしもあらずです。
 しかし、中長期的に見るとどうでしょう。イラク戦争を仕掛けた時、全世界で反対が起こりました。しかし、その結果はどうでしょう。ブッシュ大統領は、再選までして、勝ったかに見えました。しかし、三つの逆風が吹きました。
 第一に、イラク戦争は泥沼になりました。第二にハリケーンが吹き荒れ、ブッシュは信用を失いました。第三に今度の経済金融の嵐です。これらは、神のさばきでなくて何でしょう。それはかえって今度の民主党の圧勝を生んだのではないでしょうか。オバマが勝利の演説で結びの言葉は、「神よ、アメリカを守りたまえ」でした。
 「人の心には多くの計画あり、されど神の旨だけが、堅く立つ」(箴言19:21)
 「戦いのために馬を備える、しかし、勝利は主による」(箴言21:31)
 「正しい者は、七度倒れても、また起き上がる。しかし、悪しき者は災いによって滅びる」(箴言24:16)。
 しかし、ここでは、決して神にまかせよとだけ言っているのではありません。もっと積極的です。「あなたの敵が飢えるなら、彼に食わせ、かわくなら、彼に飲ませなさい」。「悪に負けてはいけない。かえって、善をもって悪に勝て」(ローマ12:20-21)と言っているのです。
 神にまかせる時も、私の側ですることがあります。それは「善」でもって、悪に勝つことです。これは信仰からくる愛の行為です。
 よく「悪を憎んで、人を憎まず」と申します。私たちは、歴史的にガンジーやキング牧師の行為を見ます。それはトルストイから来、さらにヤン・フスから来ると言います。ルターの出た百年も前に、チェコで宗教改革をした人です。コンスタンツに呼ばれ、火刑にされます。悪が勝ったかに見えます。しかし、残ったのはフスの教えとその勝利でした。フスの流れにヘルンフートの兄弟団、モラヴィア派があります。それはジョン・ウエスレイに多大な影響を与えました。メソジスト運動は、イギリスの産業革命ごの荒廃の時代、血を見ずに、武力によらず、ただ信仰と祈りと言葉によって、イギリス社会を変革した、革命でした。
 これが「善をもって悪に勝つ」ことの真の意味です。
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