説教要旨

	6月21日（日）「われ弱き時に強し」説教要旨　Ⅱコリント12:7-10 今から四十年ほど前、仙台で伝道していた時、菊田君という青年が教会におりました。彼は印刷屋に勤めておりましたが、夕方五時、六時に仕事が終えると、西多賀病院に行き、筋ジストロフィーの患者さんの奉仕をしておりました。今で言うボランティアです。彼の導きで、私はここの患者さんたちに聖書のお話をしに行くようになりました。筋ジストロフィーというのは、筋肉が減って行く病気で、４、５歳頃、転びやすくなり、車椅子の生活に入り、最後に心臓の筋肉が減ると呼吸困難で死に至ります。中学生くらいで死ぬ人もいます。この聖書の集会はほとんど若い二十前後の人ばかりでした。そこに山田富也君という青年がいて、質問しました。「もし神が愛の神だというなら、どうして俺たちのような難病を造ったのか」。彼らを前にしては、この質問に私は答えられず、それからマルコ福音書をいっしょに勉強して行きました。そのうち教会の自動車をもっている人が、彼らを迎にいって、いっしょに礼拝しました。ついに、車椅子の人が三人洗礼を受け、ほかの教会も加えれば、十年くらいに十人ぐらい洗礼を受けたでしょうか。山田富也君と三人の兄弟も、塩釜の斎藤久吉先生のもとで洗礼を受けました。私たちの教会で洗礼を受けた一人の中島君は、最後の息もたえだえの中で言いました。「先生、私は洗礼を受けた時、ハイデルベルク信仰問答で勉強したことをよく覚えています。『生きている時も、死ぬ時も、あなたのただ一つの慰めは何ですか』『私が身も魂も、生きている時も死ぬ時も、私んの信頼すべき主イエス・キリストのものとなることであります』今でも私はその通り信じています」と。ドイツでは信仰告白五十年後、堅信礼記念の式で七十になろうとする人びとが、同じように告白します。その長い人生には、数々の苦しいこと、病気、戦争、別離、失業、いろいろあったでしょう。その中で、「ただ一つの慰めは、わたしが自分自身のものでなく、わたしの信頼すべき主、イエス・キリストのものとなることです」。それは厳かな信仰の瞬間です。筋ジストロフィーの青年も言いました、「先生、私は今でもそのことを信じています」と。ある時、彼らの自立ホームに自殺志願の人が医者の勧めで来て泊まりました。彼は二三日いただけで、自殺をやめました。難病の彼らが先生だったのです。何の？「生命の尊さ」を教える先生だったのです。彼らは、最後に六十人収容の大きなホスピスを建てました。そこにホールがあって十字架がたっています。そのお方は、私たちの重荷、弱さ、苦しみを担って、十字架にかかられたのです。彼らは、これこそ私たちの主だと信じました。「十字架の言葉は滅びる者には愚かなれど、救われる私たちには、神の力である」（Ⅰコリント1:18) と。パウロは言いました。｢そこで高慢にならないように、わたしの肉体に一つのとげが与えられた。それは、高慢にならないように、わたしを打つサタンの使いなのである。このことについて、わたしは彼を離れさせてくださるようにと三度も主に祈った。ところが、主が言われた、『わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全に現れる』。それだから、キリストの力がわたしに宿るように、むしろ、喜んで自分の弱さを誇ろう。だからわたしはキリストのためならば、弱さと、侮辱と、危機と、迫害と、行き詰まりとに甘んじよう。なぜなら、わたしは弱い時にこそ、わたしは強いからである」（Ⅱコリント12:7-10) と。あの大伝道をしたパウロも、慢性病で悩んだのです。しかし、そこから力をいただきました。　私自身若いころ、からだが弱く、三十までもたないと言われたのに、生きることができました。「わたしが弱い時にこそ強いのです」。その弱さの中で学ぶものがあります。「わたしの恵みはあなたに対して十分である。わたしの力は弱いところに完全に現れる」と言うことです。それは神さまの力です。信仰の力です。信仰によって、私たちにこれまで見えていなかったものが見えてくるのです。この力は大きいのです。山田富也君は、今、吸入器をつけて息もたえだえです。しかし、その中で、大きな仕事をしています。詩集をつくり、映画をつくり、難病ホスピスを建てました。「わたしの力は弱いところに完全に現れる」からです。私たちは普通自分は五しかできないと思っています。しかし、信仰によって十できるのです。信仰は「見ないものを真としています」。見えない神の力をいただだいています。
	ぜひ、あなたも礼拝に出席して直接お聴き下さい。一人でも多くの方のご出席を心からお待ちしています。