説教の要約:2016年7月
 
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第一主日聖餐式礼拝:2016年7月3日
 
説教者 加藤信治師
 
今週の聖句
しかし、ピラトは言った、『あの人は、いったい、どんな悪事をしたのか』。すると彼らはいっそう激しく叫んで、『十字架につけよ』と言った。(マタイ27:23)
 
題「裁かれる主イエス」(マタイ27:11ー26)
 イエスはキリストであるから、王ではあるが、ヨハネの福音書(18:16)で言っているように、この世の王ではない、信仰上の神の国の王である。ローマに逆わせようと人々を扇動してはいなかった事をピラトは明白に分かっていたであろう。だからピラトは何度も、この人には罪は見出せないと言っている。ルカによる福音書には、ヘロデの所にも送り、ヘロデも、イエスに罪はないと送り返してきたと記されている。なぜ祭司長長老たちがイエスを殺そうとしているかについて、ピラトはねたみのためだと理解していた。(マタイ27:18,マルコ15:10)
 ピラトイエスを何とか赦そうと、毎年囚人一人を恩赦によって赦すしきたりに従って、このキリストと呼ばれるイエスを赦して欲しいかと問うたが、バラバと呼ばれるイエスを赦せと常識に反する要求を群衆はしてきた。バラバは「評判の囚人」(マタイ27:16)、「暴動と殺人のかどで投獄されていた囚人」(ルカ23:19、マルコ15:7)、「強盗」(ヨハネ18:40)であり、最も釈放したくない人間であったろう。しかし群衆が暴動を起こしそうであった。群衆は祭司長らにイエスを死刑にするように総督に要求するように説き伏せられていた。そして、罪のない人間を死刑にするように要求した責任は自分と自分の子孫に降り掛かってもよいとまで言う、完全に異常で狂っていた。だからピラトはまともな裁判を行うことに匙を投げ、群衆の要求に任せ従い、手を洗った。
裁判官は罪がないと言っている、訴えている人間や死刑を要求している者の不当を認めつつ、裁判官に正しい裁判を行う勇気や正義がなく、群衆に押し切られ、釈放してはならない人間を釈放し、罪に定めてはならない人間を死刑に定めてしまった。
 ピラトはユダヤ人たちに自分で裁けと言ったが、自分たちは人を死刑にできないから、ピラトよ裁けと言う、どんな罪があるのかと問えば、自分を神の子と自称したと言う、ピラトはその言葉を恐れた(ヨハネ19:8)。この男はひょっとしたら神の子かもしれない、自分の妻も、この義人に関わるな、随分苦しめられたからと言ってくる(マタイ27:19)、これは余程のこと。だから何とか赦そう、釈放しようとした。しかしユダヤ人たちは、自分を王とする者を死罪に定めない者は、皇帝の味方ではないと、ピラトの逃げ道を断った。(ヨハネ19:12-16)
 イエスが奇跡を行い、病を癒し、身体の不自由を癒し、悪霊から解放し、死人生き返らせている間は、群衆はイエスに付いていたから、祭司長や律法学者、パリサイ人、長老らは、イエスに手出しをできなかった。しかし、イエスが群衆から離されている時を見計らい、捕らえ、裁判にかけ、罪人にでっち上げて、殺してしまおうとした。
 群衆も、イエスが自分たちの王となり、ローマから自国を救い出す指導者となるなら、祭り上げようとしたが、しかしそれを受け入れなかった時、イエスから離れ去って行った。結局、自分たちに利益をもたらす、自分たちに都合よく動く指導者、権力者を求めていた。〔しかし神が求めておられるのは、神を従えようとする者ではなく、神に従っていこうとする者である。〕
 キリストの義しさは復活によって証明された。
キリストは裁判において、沈黙することによって、神としてのご自身を顕された。裁く権威も、知恵、知識も実績も、あったであろう。しかしそれを用いず、裁かれるままに自分の身を置かれ、赦しと救いのみわざを成し遂げて行かれた。
 イエスはこの世と違う立場を鮮明にした。そのために裁かれ、殺されることになった。主イエスの弟子である私たちも、世に迎合することなく、自分の立場をはっきりさせる必要がある。
 
 
 
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第二主日礼拝:2016年7月10日
 
説教者 加藤信治師
 
今週の聖句
そのとき、イエスは言われた、『父よ、彼らをおゆるしください。彼らは何をしているのか、わからずにいるのです』。人々はイエスの着物をくじ引きで分け合った。」(ルカ23:34)
 
題「父よ 彼らをお赦しください」(ルカ23:32-38)
 教会にとって、私にとって、なぜ十字架が必要か。人に十字架の意味をどう説明してあげますか。
十字架上での主イエスの言葉。第一言。自分を裁き、殺そうとする者のために執り成す祈り。
1)キリストが十字架に架かって下さった。木に掛けられる者は呪われる。「選ばれた者であるなら、自分を救え」。選ばれた者。イザヤ42:1。しかしイエスが王には見えない。祭司長、長老たち、群衆、律法学者、パリサイ人、弟子たちの罪。自分の罪が分からない。律法学者たちはキリストが人の罪を赦したことを裁いた。安息日を守らなかった、神を父と呼んだことを裁いた。私たちの罪は。十戒を守らない罪。人を裁く罪。私たちも同じ罪を犯すのでは。
2)「父よ、彼らをお赦し下さい」。主イエスの執り成しによって赦され、癒された。
 バビロンに征服され、捕囚に遭う神の民。苦難の僕に神の民の真実な救い、解放、そして全人類の解放が託される。イザヤ53章には苦難の僕が顕される。主イエスの姿と重なる。彼は自分のせいで神に打たれ、苦しめられているのだと、人々は思い彼を嘲り罵った。しかし実は彼の受けた懲らしめにより、我々は平安を得、打たれた傷によって我々は癒された。・・・・。彼が多くの人の罪を負い、咎ある者のために執り成しをした。(イザヤ53章)
3)主イエスが人々の罪を自分の負うて裁かれ、死んで下さった。
 私たちに何が求められていますか。弟子たちに、「わたしがあなたがたを愛したように互いに愛し合い、足を洗い合う」ように求めた。律法を行うことによっては救われない。神の義が全うされない。キリストの贖いによって、この執り成しによって救いが来る。また主の弟子たちも自分の十字架を負うてキリストに従っていく者としていただきたい。
 
 
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第三主日礼拝:2016年7月17日
 
説教者 加藤信治師
 
今週の聖句
そして三時ごろに、イエスは大声で叫んで、「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」と言われた。それは『わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか』という意味である。」 (マタイ27:46)
 
 
題「十字架上の叫び」(マタイ27:45-50)
「わが神、わが神、どうしてわたしをお見捨てになったのですか」
この言葉が何を表すのか。私たちにどういう意味があるのか。
父なる神とキリストの叫び。父なる神に捨てられたと感じる悶え苦しむ魂の叫びを挙げておられる。
 キリストの働き。父なる神が共におられて成されてきた働き。そのキリストが罪人として裁判を受け、鞭打たれ、嘲られ、十字架に架けられている。肉体的な苦しみもさることながら、精神的、霊的な苦痛が最もキリストに大きな苦悩を与えている。
 人として神の裁きの前に立たされる罪人がどれほど不安と苦しみに陥れられるか、罪の深さ、神の怒り裁きが厳しいものであるか、キリストの絶望に現れている。しかしむしろ一般の人間は、罪の深さやそれに対する神の怒りについてそれほどに考えていない。このキリストの姿の惨めさ、憐れな叫びの姿、そのかけ離れたお姿の中に、キリストが神であられたことが現れている。それほど深くキリストが神に裁かれるべき人の側に立って下さり、身代わりに神から罪の裁きを受ける者となって下さった。罪人と共に居る者となって下さった。陰府に降る苦悩を味わって下さった。
 詩篇22篇はキリストの苦難の預言として知られる。前半の深い絶望的な嘆きと後半の賛美が同居する。嘆きを顕す貧しい人であるが、主を尋ね求め、賛美を与えられている。
 人の歩みの中で多くの苦悩と通らされることがあるが、キリストはさらに深い苦悩や絶望の中を通って下さった。どんな悲惨の死よりも厳しい死を通って下さった。
 神の怒りはひととき、いつくしみは永遠。イザヤ54:7,8。
 
 
 
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第四主日礼拝:2016年7月24日
 
説教者 加藤育代師
 
今週の聖句
天にいます私たちの父よ。御名があがめられますように」 (マタイ6:9)
 
題「神を呼ぶ」(マタイ6:7-13)
 私たちの通常の祈りは、「天のお父さま」「天の父なる神様」などと呼ぶが、これを言わないと祈りが始まらないからまずそう呼ぶのであって、祈りで大切なのは、この後に続く部分だと考えやすい。果たしてそうか。この呼び名の持つ重さを考えよう。
1)神を「父」と呼ぶ
 神を父と呼ぶことにおいて、私たちは既に自分は神の子であると認めている。聖書も、「あなたがたはみな、キリスト・イエスに対する信仰によって、神の子どもです」(ガラテヤ3:26)と告げている。ということは、自分の祈りは神の子としての祈りであるということ。 また、伝道者パウロは、「私たちは御霊によって、『アバ、父。』と呼びます」(ローマ8:15)から、まるで子が親に愛を込めて「お父さん」と呼ぶような親しい関係を言っている。いや、それ以上に親密な関係を示していると言える。
 また、このような呼び名を知っていると言うことは、別な言い方で、私たちはイエス・キリストと似たところがあり、主が長男で、私たちは主の弟、妹である。(ローマ8:29) 兄弟は似ているはずだが、自分の生活のどこが主イエスのご生活に似ていることか。このことを思うと、自然に口ごもってしまう。しかし主は、「父よ」と呼びなさいと言ってくださって、主の秘密の祈りを教えてくださった。
2)天の父
 天とは私たちの手の届かない所で神が住んでおられ、地をも支配しておられる。この天におられるお方が、私たちの父となって、祈りに耳を傾けていてくださる。悲しい地上の現実と向き合いながら、このお方に祈ることが、私たちの希望のすべてであり、慰めなのだ。父なる神は、この天の御国の幸いを与えるために、天で祈りを聞いていてくださる。 
 最後に、この呼びかけひとつに主のいのちがかかっている。
 
 
 
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第主日礼拝:2016年7月31日
 
説教者 加藤信治師
 
今週の聖句
イエスは、このぶどう酒を受けると、『成し遂げられた』と言い、頭を垂れて息を引き取られた。(ヨハネ19:30)
 
十字架上の勝利宣言」(ヨハネ19:28-30)
 主イエスは、「成し遂げられた」と言われて息を引き取られた。この言葉は、口語訳では「すべてが終った」と訳されている。人間は死ぬ時、死んでしまえば何もかも終わりだ、そう思いつつ、この言葉を発する人があるかもしれない。しかし主イエスの言葉はそれではない。
1)メシヤの救いの働きを成就して下さった。
 主イエスはゲツセマネに向かって行かれた。できればこの杯を取りのけて下さいと祈られた。しかし、そうしなければならないのでしたら神の御心が成るようにと祈られた。キリストは神の御心を成すために来られた方である。新約聖書の中には、何度も、「聖書の言葉が成就するため」「預言の言葉が成就するため」という言葉が出てくる。世の終わりに、救いを完成するために、メシヤが来られる。それがどうして分かるか。旧約聖書に預言されていることを成就される方としてメシヤ、キリストが来られる。敵が衣服をくじ引きにした(ヨハネ19:24,詩篇22:18)。食事を共にしている者が裏切る(ヨハネ13:18,詩篇41:9)。渇く(ヨハネ19:28、詩篇69:21)、銀貨30枚で売られる(ゼカリヤ11:13)、苦難の僕が病を負う、人々に捨てられる、罪咎を負う(イザヤ53:)等、そのメシヤが果たすべき、神の救いを成就するための為すべきことが成就された、完成した、完了した、成し遂げられた、すべて終わったと言われたのである。
2)死をもって、贖いの供え物としてご自身を捧げ尽くされた。(ヨハネ17:17-19)。大祭司の祈り。弟子たちが真理によって献げられた者となるために、ご自身を献げ尽くされた。死と黄泉にまで降って下さった。主の弟子、キリスト者が非常な厳しい状況に追いやられることがあっても、キリストが死と罪の呪いの中を通って既に勝利し、私たちをもキリストと共にある勝利者にして下さっている、そこに立つことができる。
3)北イスラエルがアッシリヤに敗北して捕囚に遭い、100年程後の時代に立って、エレミヤは南ユダに預言した。偶像崇拝、指導者や宗教家たちの腐敗に対して、罪を告発し悔い改めを迫り、やがてバビロンに降伏を勧めたり、敗北を宣言しなければならなかったため、人々から苦しみを受け、命の危険にさらされながらも預言した。人の心がいかに病んでいて、どうしようもないか(17:9)を身をもって知っていた預言者であろう。しかし、17章の預言、主に信頼する人の祝福、31章(31:31-34)の新しい契約、イスラエルとユダの回復、心の内に新しい霊を授ける約束を語った。イエス・キリストは死んで甦られ、天から聖霊を注ぎ満たして、この約束を成就する方としておいで下さった。主イエスの十字架上の言葉は、その成就を宣言する言葉である。主イエスは旧約の預言の成就者としてみわざを行われたが、それによって始まった聖霊によるイエスの宣教・神の国の拡大の働き、使徒たちの預言の言葉は、御国の完成に向かうであろう、やがて起こるべき道筋であることを期待し、望みを持ちつつ今日を生きることができる。
 
 
 
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