2010年度説教 3月14日 主日礼拝
「信仰の高嶺をめざして」シリ−ズ(8)


題「信仰による家族 夫と妻」

「ボアズは答えて言った。「あなたの夫がなくなってから、あなたがしゅうとめにしたこと、それにあなたの父母や生まれた国を離れて、これまで知らなかった民のところに来たことについて、私はすっかり話を聞いています。主があなたのしたことに報いてくださるように。また、あなたがその翼の下に避け所を求めて来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように。」(ルツ2:11−12)

家族の中で嫁−姑の人間関係はなかなか複雑な問題です。そしてさらに難しいのが夫婦問題と言えます。2008年度統計では日本全国で25万組が離婚しています。新婚家庭は約74万組ですからかなりの効率になります。そんな中で今日、学ぶルツとボアズの信頼に満ちた関係は夫婦問題に対する聖書的な美しい一つのモデルともなっています。

さて、前回学んだように、異国の地モアブで夫に先立たれ、その上、頼りにしていた二人の息子にも先立たれたナオミは、長男の嫁であるルツとともに10数年ぶりにモアブの地からベツレヘムに帰ってきました。ナオミが味わったモアブの地での生活はことばでは表現できないほど辛く苦しいものでした。ナオミは国を捨ててまでついてきた嫁のルツに異国の生活の苦しさを味わわせたくないと心を配りました。ナオミはまるで実の娘のようにルツの幸福を考え、ルツの再婚の導きのために静かに祈りを重ねました。

1.
神の導き

ベツレヘムに戻ったナオミとルツでしたがまず、日ごとの糧を得なければなりませんでした。そこでルツは母のナオミに「落ち穂を拾いに出かけたい」と申し出ました。落ち穂拾いとは貧しい人々の生活の糧のために、畑の持ち主が、収穫に時期にわざと畑の一部を刈り取らないで残しておいたり、刈り取って束ねた穂の中から数本づつ麦穂を抜き取って落とすように命じ、落ち穂を貧しい人々に拾わせるという救済行為を指しています。

ルツが出かけた畑は、はからずもナオミの夫の親族であるエリメレクの一族に属するボアズの畑でした。しかもちょうどその時、持ち主のボアズがベツレヘムから畑の見回りに来ていたのです。こうして2つの出会いが重なりました。見知らぬ女性が落ち穂を拾っている姿を見てボアスは「誰なのか」と現場監督者に尋ねました。すると親族のナオミがモアブから連れてきた女性であり、「朝からずっと休みもせずに立ち働いている」(2:7)とそのけなげなさを紹介され、ボアズはたいへん感心しました。そこでボアズは彼女に特別に親切に配慮しました。ルツがその理由を尋ねると「あなたの夫がなくなってから、あなたがしゅうとめにしたこと、それにあなたの父母や生まれた国を離れて、これまで知らなかった民のところに来たことについて、私はすっかり話を聞いています。主があなたのしたことに報いてくださるように。また、あなたがその翼の下に避け所を求めて来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように。」(2:11−12)と答えました。

2.信仰の出会い

ボアズに下心があって親切にしたのではなく、神様の祝福を心から願っての行為でした。彼は畑で働くすべての労働者たちにも「主があなたを祝福されますように」(2:4)と声をかけています。生活の場、職場、個人的な人間関係、すべての生活の領域においてボアズの信仰は生きて働いています。信仰がアクセサリでなく、彼の人格と行動と生活の全てにまで及んでいるのです。

日曜日だけのクリスチャンや、信仰と仕事は別の問題だなどと2元論的な分離信仰であってはならないと思います。

ルツはお昼にも同席するように招待されました。ごちそうの「煎り麦」を出された時も、残りを母ナオミのために残して持ち帰りました。ボアズはそんなルツの姿を見つめていました。ルツがその日、持ち帰った麦の穂は1エパにもなりナオミを驚かせました。それはボアズが若者たちにルツの目の前にわざと多くの穂を落としておくように命じておいたからでした。

6−8週間近い、収穫の時期の間、ルツは一生懸命働きました。ボアズの行為に甘えて怠けることもなく、次第にずうずうしくなることもなく、毎日誠実に働きました。8週間も毎日一緒にいれば、その人となりはわかってきます。ばけの皮もはがれてくるものです。しかし、ルツの信仰とナオミへの愛の深さの評判はボアズの畑で働く全ての人々の中に広がってゆきました。

3.ナオミの執り成しの祈り

ナオミは神様の導きを祈りの中で感じていたようです。それはボアズの母親もイスラエル人でなく外国の女性(ヨシュア6:25 マタイ1:5)だったからです。外国人のルツの立場や苦しみを良く理解でき、ルツを受け入れやすいと思ったからです。そこでナオミは提案をしました。

「あなたはからだを洗って、油を塗り、晴れ着をまとい、打ち場に下って行きなさい。しかし、あの方の食事が終わるまで、気づかれないようにしなさい。 あの方が寝るとき、その寝る所を見届けてからはいって行き、その足のところをまくって、そこに寝なさい。あの方はあなたのすべきことを教えてくれましょう。」(3:1−4)

なんと大胆で危険な提案でしょうか。あなたがもしナオミであったらこんな危ない提案を娘にできるでしょうか。ナオミはボアズを信頼し、ルツもボアズを信頼していたからこそできた提案でした。

ルツはナオミに言われた通りにしました。酔いから目さめたボアズはルツが足下に眠っていることに気ずいてたいへん驚きましたが、ボアズは決して肉の欲に走ることがありませんでした。むしろこのように大胆にルツを寝室に送ったナオミの気持ちを理解し、問題を解決するために丁寧に対処しました。それは、ルツを妻にできる権利を持つ男性が最初に権利を放棄しない限り、法律上、ナオミの夫の畑を買い戻し、ルツを嫁としてめとるわけにはいかなかったからでした。

4.ボアズ(名前の意味は迅速)の信仰

ナオミの意志とルツの想いを理解したボアズは迅速に行動しました。正式な手続きを経てボアズはナオミの土地を買い取り、ナオミの夫と相続地の責任を引き受けました。こうしてボアズはルツの正式の夫となり、生まれる子どもはルツの先の夫でナオミの長男であるマフロンの家を引き継ぐようになることを裁判官のまえで公に約束しました。

「そこでボアズは、長老たちとすべての民に言った。「あなたがたは、きょう、私がナオミの手から、エリメレクのすべてのもの、それからキルヨンとマフロンのすべてのものを買い取ったことの証人です。さらに、死んだ者の名をその相続地に起こすために、私はマフロンの妻であったモアブの女ルツを買って、私の妻としました。死んだ者の名を、その身内の者たちの間から、また、その町の門から絶えさせないためです。きょう、あなたがたはその証人です。」(4:9−10)

こうしてボアズとルツは信仰によって固く結ばれたのでした。二人の間に生まれたオベデはやがてダビデの先祖となり、ひいてはメシヤの先祖となったのでした。

「ラハブによってボアズが生まれ、ボアズに、ルツによってオベデが 生まれ、オベデにエッサイが生まれ、エッサイにダビデ王が生まれた。」(マタイ1:1−5)

ベツレヘムの東約1キロにボアズの畑はあり、それに隣接する畑は「羊飼いの畑」と呼ばれ、1000年後に天使が羊飼いにキリストの誕生を告げた場所とされています。2000年にイスラエル旅行をしたとき、ガイドさんがこの一帯がボアズの畑であり、ルツとの出会いの場ですと説明された時に、私はたいへん深い感動を覚えたことを思い出します。

信仰によって、ナオミとルツは結ばれ、信仰によってルツとボアズは結ばれ、それぞれがやがて救い主キリストの誕生へと深く結びついてゆきます。神様のなさるみわざは人の思いをはるかに越えるすばらしいものです。信仰は真実な愛を育み、信仰は望みのない中にもかならず希望の光を輝かすのです。信仰による義人は生きるのです。

「確かに、私たちは見るところによってではなく、信仰によって歩んでいます。」(2コリント5;7)

わたしの義人は信仰によって生きる。もし、恐れ退くなら、わたしのこころは彼を喜ばない。」(ヘブル10:38)


神様の恵みと祝福があなたの上にありますように。




   

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