２０２２年8月21日　　ルカ13：18-21

今日は結婚式が午後から開かれます。お二人が出会ったのは偶然でしょうか？　それとも見えざる神の恵みの御手が働き、神のご計画の中で二人を導いたのでしょうか。私たちは物事が偶発的に生じるのではなく、すべてのことを相働かせて最善へと導かれる神のご計画のもとにあることを信じます。神の国についても同じです。不合理や矛盾や差別や偏見に満ちたこの世界は神の国とは言い難い現実で満ちています。しかし神は神の御国をご計画し着実に前進させておられます。なによりも御子キリストを通じて、彼を信じる者たちの心と共同体を神の御霊で満たし、神の国の始まり（保証・手付金）としてくださいました。

イエス様が安息日に、１８年もの病気に苦しみの中に閉じ込められていた女性を癒し、救い、あらゆる苦悩から解放してくださったあと、神の国について２つのたとえ話をされました。イエス様はユダヤ教における安息日と神の国の到来を結び付けておられます。病からの癒しとすべての苦悩からの解放と魂の救いは神の国において完成し、それはまさしく旧約聖書における安息日の完成でもあるからです。

1.　キリストとともにすでに到来している神の国

御子キリストの生涯にわたるメッセｰジは「神の国は近づいた」（完了形）でした。すでにルカ10：8で弟子たちにイエス様は「あなたがたは町の病人を癒し、神の国はあなたがあのそばに到来している（完了形）と言え」と命じました。

ルカ11：20では「私が神の指によって悪霊たちを追い出しているからには、神の国はあなた方の所にすでに来た（不定過去）のだ」と宣言されました。

イエスキリストは教科書的にはキリスト教の創立者であるが、聖書的には神の国を人類の歴史の中に呼び込んだ創始者であり、その完成者でもあるのです。イエス様は神の国の進展と深まりを2つの譬えで教えておられます。

1.　神の国は、小さなからし種が大きく成長するようなものだ

からし種は吹けば飛ぶような小さな種です。野菜の中で最も小さい種で１㎜にも満たない。こんな小さな種からは小さな野菜しか育たないだろうと思うほどですが、種を土に埋めて育てるとなんとどんどん成長して、４メートルを超える木に育つそうです。空の鳥が巣をつくるどころか、人間がよじ登ることができる高さ７メートルの木もあるそうです。人は見かけによらないと言いますが、種も見かけによらないことをからし種は教えてくれます。

この譬えは、私たちに神の国の爆発的な成長力を教えています。神の国の始まりは、からし種のように本当に小さなもの、世の人からは目に入らない、隠れた小さな存在であることを示しています。しかしながら地にまかれると大きく成長していくように神の国も爆発的に拡大していくことを示しています。

神の御子はナザレという田舎町に住むマリアという女性から生まれました。誕生した場所はベツレヘムの粗末な家畜小屋の中でした。弟や妹たちが成人して母マリアを託することができるまで、ナザレの村で石大工をしながら質素な生活を送られました。ヨルダン川で洗礼を受け、「神の国は近くなった（完了形）、悔い改めて福音を信じなさい」（マルコ1：15）と宣教の火ぶたを切られた場所も同じヨルダン川のほとりでした。イエス様の弟子たちの数はわずか１２人、多くても１００人足らずでした。一冊の書物も書き残しておられませんし、ユダヤの国から外国に出たこともありません。無に等しい小さな始まり、小さな存在でした。しかしやがてペテロ、パウロの宣教によってローマ帝国の各地にイエスをキリスト救い主と信じる人々の共同体が増え広がりました。激しい３００年近くにわたる弾圧にもかかわらずついに３１３年には時の皇帝　　　コンタンチヌスがキリスト教を公認し、やがてローマ帝国の国教となりました。こうしてヨーロッパ大陸からアメリカ大陸、インド経由で東アジア全域にまでキリスト教は拡大し、今や世界総人口の３０％以上、２０億人以上の人々がクリスチャンとなるまで拡大しています。その成長率は天文学的な数字になることでしょう。地理的拡大、クリスチャン人口の拡大だけではなく、世界の歴史はキリストの誕生を境に、キリスト以前とキリスト以後と大きく２分割されるほど多大な影響を与えています。

「おそれるな小さな群れよ、御国をくださることは、あなたがたの父の御こころです」（ルカ12：32）は文字通り、成就しているのです。

2.　神の国は、少しのパン種を粉に混ぜると全体がふっくらと膨れ上がるようなものだ

パン種とは「イースト菌」のことで、これは目に見えません。小麦粉の中に混ぜ合わせて練り上げ、一晩そっと寝かせてから釜で焼き上げるとふっくらといい香りの美味しいパンができます。イースト菌がなければ、固い小麦粉の塊のままです。イースト菌の働きで、香り良し、食感よし、味良しのパンへと変えられていきます。小麦粉そのものをなめても、イースト菌をなめてもおそらくまずくてはきだすことでしょう。実験してみる勇気はありませんが・・。

イエス様は教会が世界的に大きく拡大進展する霊的な力をペンテコステの日に注いでくださいました。目に見えない聖霊の恵みの力、宣教の情熱です。同時にその教会に招かれた人々を信仰の告白へと導き、聖霊を住まわせてくださいます。２番目の譬えの主人公は「主婦」です。一般の普通の人であり、場所は家庭の台所です。日常生活の場です。

イエス様が弟子たちに願われたことは「あなた方は地の塩、世の光」（マタイ5：13-14）であり、そのような人生を生きることできるという約束でした。家庭の料理で大きな塩の塊などは必要とされません。小さな一本のローソクでも真っ暗な闇の中では周囲を照らし出すことができます。置かれた場所であなたらしく個性豊かな存在として役目と輝きを放って生きていくことができるのです。世界を舞台に輝かなくても、あなたの置かれた場所で光を放つことを神は期待しておられます。キリストにあって以前よりも悪い人間になったという人は一人もいません。クリスチャンになって人格的に変化するとは、一言でいえば「愛において」変化する、成長することにほかなりません。神の愛を知った、経験した、だから神を愛し、隣人を愛することが豊かになるのです。このように私たちを成長させてくださるのは神ご自身であり、成長のための恵みの源泉は、御霊による神の愛、すなわちキリストの十字架の愛にほかなりません。

「それで、たいせつなのは、植える者でも水を注ぐ者でもありません。成長させてくださる神なのです。」（１コリ3：7）

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