ゆりのきキリスト教会>テキスト>礼拝説教2007年3月4日
2007年3月4日 主日礼拝説教
「ルツの結婚」(ルツ記3章)
■はじめに
エリメレクとナオミ夫妻は、飢饉のためユダのベツレヘムからモアブに移り住みました。そこでナオミは夫の死と二人の息子の死を迎えます。残されたのは3人の女、ナオミと嫁のルツとオルパでした。ナオミはモアブから飢饉が終わったベツレヘムに帰ることにしました。オルパはモアブに残り、ルツだけがナオミに従いました。
ベツレヘムに着いたときは、ちょうど大麦の刈り入れの季節でした。ルツはナオミとの生活を考え、律法によって貧しい人たちに許されていた落ち穂拾いに出ることにしました。ルツが落ち穂拾いに行った所がボアズの畑であり、ルツはそこでボアズに出会うのでした。
■ナオミの計画
1しゅうとめナオミは彼女に言った。「娘よ。あなたがしあわせになるために、身の落ち着く所を私が捜してあげなければならないのではないでしょうか。
ナオミはルツの将来を考えたときに、このままではいけないと思いました。しゅうとめのナオミは、自分のことよりも「あなたがしあわせになるために」と、嫁のルツの幸せを第一に考えました。何の保証もない古代社会では、結婚こそが不安定な生活を変える手段でした。
ナオミの計画はこうでした。ルツは落ち穂拾いの期間中、ずっとボアズの家の若い女といっしょに働いていました。その畑で、ボアズはルツに特別の好意を示していました。
刈り入れが終わりました。ちょうど今夜、ボアズは「大麦をふるい分け」をするのです。「ふるい分け」とは、風の中に麦を放り上げて、もみ殻を吹き飛ばす作業です。それは風の強い夕方に行います。
ナオミはルツに、詳しく買い戻しの権利のある親類の仕組みを説明していたでしょう。その親類の一人がボアズであることも。ルツとボアズが結婚すれば、生まれてくる子に夫エリメレクの名前を受け継がせることができ、そしてボアズが土地を買い戻してくれれば、生まれてくる子にその土地を継がせることができるのでした。神様が出会わせてくれた二人には、このようなことを神様が計画なさっておられると、ナオミは思ったのでした。
ナオミは、ルツが美しく装うように指示します。入浴をし、油をぬります(今で言う香水です)。そして晴れ着を着ます。
さらにナオミはルツに、ボアズが横になって寝るところを見届け、しばらくたってから、ボアズの寝ている足もとに入るようにと指示します。ボアズが気づいたら、あとはボアズに任せればいいのです。
ナオミは、神様を恐れ信じるボアズが、ルツのために最善をなしてくださるに違いないと考えたのでしょう。こうすれば、ボアズは、ルツが結婚したいという意志を持っていることがわかるはずです。
5ルツはしゅうとめに言った。「私におっしゃることはみないたします。」
ルツはボアズに対して、どのような思いでいたのでしょうか。初めて会ったときから、ボアズはルツに対して普通以上の親切で接してくれました。ボアズは自分に特別の好意を持ってくれていると感じ、しだいにルツは、ボアズのことを特別な人と考えるようになっていったのではないでしょうか。
さらに、ルツはナオミから、ボアズが買い戻しの権利のある親類の一人であることを聞かされました。ナオミのことを思うと、ボアズと結婚することが最善であり、神様のみこころであると確信できるようになりました。ルツは神様にゆだねました。ルツは、ナオミの提案を迷いなく受け入れたのでした。
■ルツのプロポーズ
6こうして、彼女は打ち場に下って行って、しゅうとめが命じたすべてのことをした。
久しぶりの晴れ着です。ルツは緊張のなか、胸をときめかしながら打ち場まで下って行きました。ルツはナオミの言ったとおり、ボアズの寝るところを確かめ、ボアズが寝るまで待ちました。
仕事が終わりました。ボアズはみなで飲み食いし、気持ちよくなって自分が寝るところまで来ました。疲れと同時に、気分がよかったので、すぐに眠りについたと思われます。そこにルツは静かにやってきて、ボアズの足もとに入りました。
ボアズは、すぐに起きませんでした。夜中になって、真っ暗な中、何かが自分の足もとにいることに気づきました。ボアズはびっくりして起き直ると、そこに一人の女がました。
9彼は言った。「あなたはだれか。」彼女は答えた。「私はあなたのはしためルツです。あなたのおおいを広げて、このはしためをおおってください。あなたは買い戻しの権利のある親類ですから。」
「あなたはだれか。」ボアズの問いにルツは答えます。「私はあなたのはしため」です。ボアズの意志にすべてを任せようとするルツのことばです。
ルツが言った、「おおいを広げて、このはしためをおおってください」は、私と結婚してください、という意味ですが、このことばは、ボアズがしたルツへの祈りを思い出します。「主があなたのしたことに報いてくださるように。また、あなたがその翼の下に避け所を求めて来たイスラエルの神、主から、豊かな報いがあるように」(2:12)です。
あなたは私が神様の翼の下に避け所を求めてきた、と申しましたが、それをあなたがしてください。どうぞ、あなたがその覆いを広げて、おおってください。そうすれば、神様が、翼のもとに避け所を求めてきた私に豊かな報いを与えてくれるでしょう。
この時、ふたりの年齢はいくつぐらいだったのでしょうか。ルツは20歳前後でしょう。ボアズは、その地位、財産、落ち着き、ふるまいなどを見ると、ルツよりかなり年長だったと考えることができます。ですから、たといボアズがルツを好きになっても、ボアズのほうから積極的に結婚を申し込むことはなかったでしょう。
■ボアズの返事
10すると、ボアズは言った。「娘さん。主があなたを祝福されるように。あなたのあとからの真実は、先の真実にまさっています。あなたは貧しい者でも、富む者でも、若い男たちのあとを追わなかったからです。
ルツの気持ちを知ったボアズは、年長者らしく、冷静に理性的にルツの愛を受け止めました。
「娘さん。主があなたを祝福されるように。」相手に神様のいつくしみを求める祈りです。これは、「主よ、あなたを信じます。この申し出を受け入れられるように導いてください」というボアズの思いが込められていると思うのです。何事も神様との関係において見ていく、行動して行くボアズの信仰です。
ボアズはルツへの思いを語ります。「あとからの真実は、先の真実にまさっています」と。「先の真実」とは、ルツがナオミを見捨てることなく、ナオミといっしょにベツレヘムにやってきて、ナオミのために落ち穂拾いをして生活を支えたことです。「あとからの真実」とは、これからボアズとの結婚によって、ナオミの家族であるエリメレク-マフロンの家系を守ろうとしていることでした。
先の真実もすばらしい決断であったが、あとの真実である「結婚しよう」という決断も、あなたの真心があふれています、とボアズは語ります。
ボアズは、ルツに思いを寄せている若い男たちがいたことを畑仕事をしている間に気づいていたのかしれません。しかし、若い男や自分の好みはルツの結婚の条件ではありませんでした。ルツは、自分の思い、自分の幸せではなく、ナオミへの思いや、「買い戻しをすることのできる親類」と結婚することを第一に考えていました。このことをボアズは知りました。
それでルツは自分と結婚することを選んだ、とボアズは思ったのでした。若い男ならたくさんいるのに。若い男が貧しくても、そのほうがいいはずなのに。ルツが望めば、若い金持ちの男とも結婚できたでしょう。ルツはその思いを捨てて、家族を大切にしました。そのことに、ボアズはルツの誠実さと見たのでした。
ルツの心は揺れていたと思われます。ボアズがどう思うか。断られるのか。自分のようなモアブの女がボアズと結婚して、町の人がどう思うか。
けれどもボアズは、ルツに「恐れてはいけません」、「あなたの望むことはみな、してあげましょう」と言ったのです。ボアズは結婚を承諾しました。そしてボアズは、ルツの評判がよいことを挙げました。この数か月の間にルツがしたことは、町の人たちに好意的に受け入れられていました。
しかし、ボアズはルツに、自分が「買い戻しの権利のある親類」であることを認めましたが、もっと近い「買い戻しの権利のある親類」がいることも告げました。「その人が断るなら、私があなたと結婚しましょう」とボアズは言いました。ボアズは、正しい順序と手続きを踏もうとしました。
ボアズは、朝になったら行動を起こすことをルツに約束します。ボアズはルツと結婚することを願いましたが、この結婚が神様のみこころであるかどうか、神様にゆだねることにしたのです。結婚が神様のみこころなら、二人は必ず結ばれるであろうと確信していました。主にゆだねたボアズの信仰が浮き上がってきます。
■ルツの帰宅
夜が明ける前、ボアズは、ルツの着てきた外套を広げさせて、「大麦六杯」をその中に入れました。しゅとめナオミへのお土産でした。
ルツはしゅうとめのところに戻りました。ナオミは、どうなったかをルツに聞きます。ルツからの報告を聞くと、ナオミはルツに安心して待つように言います。
18しゅうとめは言った。「娘よ。このことがどうおさまるかわかるまで待っていなさい。あの方は、きょう、そのことを決めてしまわなければ、落ち着かないでしょうから。」
ナオミはボアズの性格を知っていたのでしょう。ナオミは、ボアズが最後までやり通すだろうと確信しました。
■ボアズの信仰
今日のところからボアズの信仰を見たいと思います。
ボアズの信仰のすばらしさは、自分の富や、築いて来た地位を犠牲にしても、エリメレクの土地を買い戻し、ルツと結婚し、その子どもにエリメレクの家を継がせようとしたことです。
買い戻しの教えは、神様がイスラエルの幸せを考えて定めてくださった律法の一つでした。この律法のとおりのことが自分の身に起ころうとしている。それをボアズは、厳粛な思いをもって受け入れようとしたのではないでしょうか。
神様は、そのような信仰の人ボアズを選んだのでした。ルツとボアズの結婚によって、二人はダビデからイエス・キリストにつながる系図の中に組み込まれることになったのですから。
自分の富と立場を犠牲にしてもエリメレクの土地を買い戻そうとしたボアズの生き方は、ご自分の持っておられた神という御姿を捨てて、人となってくださり、十字架の死にまで従ったイエス様の生涯を思うことができます。招きのことばで読みました。
ピリピ人への手紙2章「6キリストは、神の御姿である方なのに、神のあり方を捨てられないとは考えず、7ご自分を無にして、仕える者の姿をとり、人間と同じようになられました。人としての性質をもって現れ、8自分を卑しくし、死にまで従い、実に十字架の死にまでも従われました。」
今週、私たちは、このボアズの信仰を思いつつ歩みたいと思います。
ゆりのきキリスト教会>テキスト>礼拝説教2007年3月4日