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2010年3月14日 主日礼拝説教
「異邦人のための救い主」(マタイの福音書2章1節〜12節)
■東方の博士たち
1イエスが、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。2「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」
「東方の博士たち」とは占星術の学者です。太陽や月や星を見て、その動きによって世の中の動きを判断している人たちです。
東方とはイスラエルの東方、現在のイラクかアラビヤのあたりが考えられています。ユダヤの民は、かつてバビロンに捕囚となって住んでいました。その後、彼らは捕囚からイスラエルに帰っていきましたが、帰らなかったユダヤ人たちもいました。彼らからユダヤに救い主が生まれることが広まっていました。
博士たちは不思議な星の輝きを見ました。そこにユダヤ人の王、救い主が生まれたということがわかりました。それは、神様がそのことを知らせ、そのお方に会いたいという思いを博士たちに与えてくださったからでした。それで博士たちは、はるばるエルサレムにやってきて、ヘロデ王の宮殿を訪ねたのでした。
■ヘロデ王
3それを聞いて、ヘロデ王は恐れ惑った。エルサレム中の人も王と同様であった。
「ユダヤ人の王」ということばを聞くと、ヘロデ王は恐れと不安を抱きました。ヘロデはユダヤ人ではなくエドム人でした。彼は、ユダヤ人が新しい王、救い主を待ち望んでいることを知っていました。ダビデの血筋にそのような子が生まれれば、自分の地位など危うくなるのは明らかでした。
エルサレムの人々もそのことを喜ぶのではなく、むしろヘロデがそのことを聞けばまた何か起こすのではないかと思って不安が先に立ったのでした。ヘロデは、自分の地位をおびやかすと思われる者は自分の子供でも平気で殺していたからでした。
4そこで、王は、民の祭司長たち、学者たちをみな集めて、キリストはどこで生まれるのかと問いただした。5彼らは王に言った。「ユダヤのベツレヘムです。預言者によってこう書かれているからです。
ヘロデは「キリスト」ということばを使いました。博士たちが「ユダヤ人の王」と言ったので、それは王ではなくユダヤ人が待っていた「キリスト」のことに違いないと思い、「キリストはどこに」と問いただしたのでした。ヘロデはキリストを信じなかったでしょうが、そのような人物の誕生の情報を知りたかったのでした。
聖書に詳しい祭司長、学者たちは、ヘロデ王に答えます。聖書の預言から、「ユダヤのベツレヘム」に生まれると答えました。それは預言者ミカのことばでした。
6『ユダの地、ベツレヘム。あなたはユダを治める者たちの中で、決して一番小さくはない。わたしの民イスラエルを治める支配者が、あなたから出るのだから。』」
ヘロデ王はひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めようとしました。
7そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を突き止めた。
内心、恐れと嫉妬心で固まっていたヘロデ王は、祭司長や学者たちを退けて、博士たちに「ひそかに」聞きました。星の出現した時から数えて今その幼子が何歳になっているかを知ろうとしました。ヘロデは次に打つ恐ろしい手を考えていたのでした。東方から来た博士たちは、星を見てから出かける準備をし、それから旅をしてきました。1年くらいの時がたっていたでしょう。
8そして、こう言って彼らをベツレヘムに送った。「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。私も行って拝むから。」
律法学者たちはどうしたでしょうか。彼らは博士たちのことばを聞いてもベツレヘムに行こうとしませんでした。博士たちの熱心さに比べれば、何と無感動な対応であったのかと思わされます。それは、当時救い主メシヤが現れたといううわさがたびたびあったからでした。
■博士たちの礼拝
博士たちは、ヘロデ王の言ったことを聞いて出かけました。
9彼らは王の言ったことを聞いて出かけた。すると、見よ、東方で見た星が彼らを先導し、ついに幼子のおられる所まで進んで行き、その上にとどまった。10その星を見て、彼らはこの上もなく喜んだ。
神様は、エルサレムからベツレヘムまで博士たちを導かれました。その星がどのように導いたかわかりませんが、幼子イエス様がいる家を指し示しました。
その家は、イエス様が生まれ羊飼いたちが訪ねた家畜小屋ではありませんでした。ヨセフとマリヤは、イエス様が生まれてからエルサレム神殿を訪れ、イエス様の誕生の儀式を受けました。それからしばらく、ベツレヘムに家を借りて住んでいたのでした。
11そしてその家に入って、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。
彼らは、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげました。これらはいずれも高価であり、彼らにとっては最高の贈り物でした。「黄金」は王としてのイエス様、「乳香」は神としてのイエス様、「没薬」は人として苦難に表すイエス様を示していると言われます。
またこれらの贈り物は、13節以降に出てくるエジプトにしばらく滞在するヨセフ一家のために役立ったことでしょう。
12それから、夢でヘロデのところへ戻るなという戒めを受けたので、別の道から自分の国へ帰って行った。
幼子に出会い礼拝した博士たちに、神様は夢でみこころを示されました。博士たちは、ヘロデ王の命令に背いてほかの道を通って帰っていきました。
■異邦人の救い主
神様は御子イエス・キリストを、私たちを救うためにこの世に生まれさせてくださいました。それがユダヤ人の救い主ではなく異邦人の救い主であることを、マタイは東方の博士たちの来訪によって示そうとしました。
最初の系図もそのことを示していました。系図の中に4人の女性が登場しています。1章3節の「タマル」5節の「ラハブ」「ルツ」6節の「ウリヤの妻」です。それは、マタイはこのダビデの系図の中に異邦人がいたことを示すためでした。
ユダの息子パレスとザラを産んだタマルは、それまでの、1代目のアブラハムの妻サラ、2代目のイサクの妻リベカ、3代目のヤコブの妻のラケルとレアと違って地元カナンの女性でした。
ラハブはエリコの町に住んでいた遊女でした。
ルツはモアブ人でした。
ダビデの子ソロモンを産んだウリヤの妻とはバテ・シェバのことです。ウリヤはヘテ人でしたので、バテ・シェバもそうであったかもしれない女性でした。
こう見てくると、いずれも普通なら系図から外したい女性たちでした。女性の名前をあげるなら、アブラハムの妻サラ、イサクの妻リベカといった女性をあげるべきでしょう。
マタイは、ダビデの系図の中に異邦人の女性が含ませることによって、この福音書を読む人たちに、イエス様はユダヤ人だけではなく、異邦人にも救い主として来られたことを伝えたかったからでした。
そして異邦人であった東方の博士たちの訪問によって、さらにそのことを伝えました。
ルカの福音書2:31−32「御救いはあなたが万民の前に備えられたもので、異邦人を照らす啓示の光、御民イスラエルの光栄です。」」
イエス様が生まれて、きよめの期間と言われる40日が過ぎて、幼子を神様にささげる儀式をするためにエルサレム神殿に詣でた時、そこにいたシメオンが語ったことばです。シメオンは、イエス様が「異邦人を照らす啓示の光」として来られたことを預言しました。
イエス・キリストを自分の王、救い主として信じる者は、その罪がイエス様の十字架によって赦され、永遠のいのちを与えられて、天国へ入るという約束が与えられています。それは、異邦人であった私たちに与えられた約束でした。
イエス様は、異邦人のために、すべての国の人の救い主としてお生まれになりました。イエス様の誕生の中にそのことが示されていることを、今日は感謝とともに覚えたいと思います。
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