ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2011年7月17日


2011年7月17日 主日礼拝説教
「バプテスマのヨハネ」(マタイの福音書14章1節〜12節)

■はじめに

 11章からイエス様がどういうお方であるかを考える出来事が続いています。先週はイエス様の故郷であるナザレの人たちを見ました。彼らは、イエス様の知恵と不思議な力を見ても信じようとしませんでした。
 今日はバプテスマのヨハネを殺した国主ヘロデが出てきます。ヘロデはイエス様とは会っていませんでしたが、自分が殺したヨハネがよみがえったのではないかと恐れていました。
 ヨハネの問いから始まった11章からの段落がヨハネの死によって閉じられることになります。これ以降、イエス様はヘロデから逃げるようにガリラヤから離れ、北の外国の地に、さらに南のユダヤのエルサレムに向かうことになります。

■バプテスマのヨハネが捕らえられる

1そのころ、国主ヘロデは、イエスのうわさを聞いて、2侍従たちに言った。「あれはバプテスマのヨハネだ。ヨハネが死人の中からよみがえったのだ。だから、あんな力が彼のうちに働いているのだ。」

 「国主ヘロデ」は、イエス様が誕生された時にユダヤを納めていたヘロデ大王の息子で、歴史では「ヘロデ・アンテパス」と呼ばれている人です。ヘロデ大王の死後、国はローマによって4つに分割され、そのうちの北のガリラヤ地方だけを治めるようになったのが国主ヘロデでした。
 ヘロデはイエス様のうわさを聞き、大きな恐れに襲われました。それは、バプテスマのヨハネがよみがえったと言われていたからでした。

マルコの福音書6:14「イエスの名が知れ渡ったので、ヘロデ王の耳にも入った。人々は、「バプテスマのヨハネが死人の中からよみがえったのだ。だから、あんな力が、彼のうちに働いているのだ」と言っていた。」

 ヘロデは人々のうわさを聞いてヨハネが生き返った、あるいはヨハネの霊がイエス様に働いてあのような力を発揮させていると信じたのでした。ヨハネを殺したことに対する良心の呵責からであり、よみがえったヨハネに殺されるかもしれないという恐れ、おののきもありました。

3実は、このヘロデは、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕らえて縛り、牢に入れたのであった。4それは、ヨハネが彼に、「あなたが彼女をめとるのは不法です」と言い張ったからである。

 ヘロデはバプテスマのヨハネを投獄しました。ヨハネが「兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで」糾弾したからでした。「ピリポ」とは国主ヘロデと同じヘロデ大王の息子で、兄「ピリポ」と弟「国主ヘロデ」は異母兄弟になります。この兄ピリポの妻であったのが「ヘロデヤ」でした。ヘロデヤはヘロデ大王の孫、ピリポ、国主ヘロデにとっては姪にあたります。
 ヘロデはすでに結婚していましたが、兄の妻ヘロデヤの美しさにひかれ、ヘロデヤと結婚することを願い、自分の妻と離縁しました。ヘロデヤもそれに応え、ピリポと別れ、娘のサロメとともにガリラヤにやってきて、ヘロデと結婚したのでした。サロメという名は聖書に出てきませんが、ユダヤ古代誌などの歴史書から知られる名前です。
 このことをバプテスマのヨハネが知り、「それは不法です」とヘロデ王を叱責しました。義理の姉妹(兄嫁、弟嫁)と、夫が生きているうちに結婚することは旧約聖書の教えに反することでした。
 ヨハネは直接王宮に行ってヘロデにその罪を突きつけたか、あるいは民衆への説教の中でヘロデ王の結婚のことに触れたのか。いずれにしてもそれがヘロデの耳に入り、ヘロデは怒ってヨハネを捕らえ投獄したのでした。

5ヘロデはヨハネを殺したかったが、群衆を恐れた。というのは、彼らはヨハネを預言者と認めていたからである。

 妻ヘロデヤは早くヨハネを殺すように夫のヘロデに言ったでしょうが、それがかなわないでいました。それは、民衆が「ヨハネを預言者と認めていた」からでした。それでヘロデは手を下すことができなかったし、またヘロデはヨハネに対してある好意と恐れを持っていました。

マルコの福音書6:20「ヘロデは、ヨハネを正しい聖なる人と知って、彼を恐れ、保護を加えていたからである。また、ヘロデはヨハネの教えを聞くとき、非常に当惑しながらも、喜んで耳を傾けていた。」

■バプテスマのヨハネの死

6たまたまヘロデの誕生祝いがあって、ヘロデヤの娘がみなの前で踊りを踊ってヘロデを喜ばせた。7それで、彼は、その娘に、願う物は何でも必ず上げると、誓って堅い約束をした。

 盛大なヘロデの誕生祝いが行われました。その席上、ヘロデヤの連れ子、ヘロデにとって義理の娘になるサロメの踊りも披露されました。サロメの踊りは列席の人々を喜ばせました。ヘロデはうれしくなり、酒の勢いもあったでしょう、「願う物は何でも必ず上げる」と誓って約束をしてしまいました。

8ところが、娘は母親にそそのかされて、こう言った。「今ここに、バプテスマのヨハネの首を盆に載せて私に下さい。」

 ヘロデからそのような約束をもらったサロメは、母ヘロデヤのところに飛んで行きました。ヘロデヤはすぐにサロメに耳打ちしました。「ヨハネの首をもらえ。」ヨハネを殺すチャンスがやってきました。サロメにとって母親のことばは絶対でした。母親のことばをそのままヘロデに伝えたのです。
 ヘロデはヨハネのことを思って動揺したでしょうが、サロメの要求を断れませんでした。娘の要求に、それは良くないと断ることもできたでしょう。しかしヘロデは、神を恐れず人の目を恐れたのでした。「列席の人々の手前もあって」できませんでした。
 一瞬の戸惑いはあったでしょうが、自分の動揺を悟られないようすぐに「彼は人をやって、牢の中でヨハネの首をはねさせた」のでした。ヨハネの首ははねられ、首はサロメに、そしてサロメは母親のヘロデヤのところに持っていったのでした。

12それから、ヨハネの弟子たちがやって来て、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。

 ヘロデが持っていたイエス様に会って恐れと不安を取り除きたいという思いは、イエス様が十字架につけられる前に実現しました。

ルカの福音書23:7「ピラトは、イエスがヘロデの支配下にあるとわかると、イエスをヘロデのところに送った。ヘロデもそのころエルサレムにいたからである。」

 その時ヘロデは、イエス様を侮辱し、あざけり、派手な着物を着せてピラトに送り返したのでした。

■バプテスマにヨハネの生涯

 バプテスマのヨハネは、人を恐れず神様を恐れた生涯でした。

マタイの福音書10:28「からだを殺しても、たましいを殺せない人たちなどを恐れてはなりません。そんなものより、たましいもからだも、ともにゲヘナで滅ぼすことのできる方を恐れなさい。」

 またヨハネは、人間の目で見れば途中で無残に終わった生涯のように見えます。ヨハネは31歳か32歳であったでしょう。しかしヨハネが神様から与えられた使命は、イエス様を紹介することでした。このことは十分果たした生涯でした。イエス様はヨハネのことをこう言われました。

マタイの福音書11:10−11「10この人こそ、『見よ、わたしは使いをあなたの前に遣わし、あなたの道を、あなたの前に備えさせよう』と書かれているその人です。11まことに、あなたがたに告げます。女から生まれた者の中で、バプテスマのヨハネよりすぐれた人は出ませんでした。しかも、天の御国の一番小さい者でも、彼より偉大です。」

 イエス様は、ヨハネが救い主の道備えをした者であり、ヨハネは女から生まれた者の中で最もすぐれた者であり、さらに「しかも、天の御国の一番小さい者でも、彼より偉大です」とおっしゃいました。イエスの十字架の救いを直接知り、そのことを信じて神の国に入る者たちは、ヨハネよりすぐれており、大きな祝福が与えられるでした。
 最後の預言者と言われているバプテスマのヨハネは、イエス様の十字架と復活を知る前に殺されてしまいました。しかし、私たちは十字架の救いを自分のものとして受けることができ、十字架によって罪を赦され神の国に入ることができることを知っています。
 私たちは、偉大な生涯を送ったヨハネよりも偉大だと言われる生涯を送っているのです。このような十字架による救いを知ることができる時代に生かされていることを感謝して、イエス様を信じ、イエス様に従って歩みたいと思います。


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