ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2011年7月24日


2011年7月24日 主日礼拝説教
「五つのパンと二匹の魚」(マタイの福音書14章13節〜21節)

■はじめに

 5千人のパンの奇蹟は、4つの福音書すべてに載せられているただ一つの奇蹟です。それだけイエス様の生涯で大事な出来事であり、またイエス様に従ってきた弟子たち、群集にとっては衝撃的な奇蹟であったのでした。
 この時は、イエス様が十字架にかかられる1年前になります。ヨハネの福音書に、この奇蹟が行われた時がいつであったかが記されています。

ヨハネの福音書6:4「さて、ユダヤ人の祭りである過越が間近になっていた。」

 このころがイエス様の生涯のうち最も華々しい時でした。人々は、このお方こそ待っていた救い主であると思い、たくさんの群衆がイエス様につき従うようになりました。しかしイエス様が教えようとされたのは、いのちのパンをもって人々を永遠のいのちに導こうとされたことであり、イエス様はユダヤをローマから解放する王ではなく、天の御国の王でした。
 それを知って人々は失望し去っていきますが、そのような中で、一番近くにいた12人の弟子たちが「あなたこそ神の御子キリストです」と告白することになるのです。

■イエス様のあとを追って

13イエスはこのことを聞かれると、舟でそこを去り、自分だけで寂しい所に行かれた。すると、群衆がそれと聞いて、町々から、歩いてイエスのあとを追った。

 「このこと」とは、ヘロデが、自分が殺したヨハネが生き返り、それがイエス様らしいといううわさを聞いて、イエス様を探し出し殺そうとしていたことでした。ヘロデがそう思っていることをイエス様は聞いて、弟子たちと舟に乗って、ガリラヤ湖の向こう側の寂しいところに行かれました。湖の向こう側はヘロデの領地ではありませんでした。
 大勢の群衆がイエス様や弟子たちが舟で移動したのを見つけました。彼らは、イエス様の一行がどこかに隠れてしまうのではないかと、駆けるように道を急ぎ、舟がつく前に上陸地点に着いてしまったのでした。

14イエスは舟から上がると、多くの群衆を見、彼らを深くあわれんで、彼らの病気をいやされた。

 舟から上がられたイエス様は、多くの群衆をご覧になられました。イエス様は迫りくる人々を、悲しみ苦しむ人々を「深くあわれ」まれました。これがイエス様のお心でした。時間を忘れたかのように、イエス様は病気の人をいやされ、またお話しをされました。

■5つのパンと2匹の魚

15夕方になったので、弟子たちはイエスのところに来て言った。「ここは寂しい所ですし、時刻ももう回っています。ですから群衆を解散させてください。そして村に行ってめいめいで食物を買うようにさせてください。」

 弟子たちは心配になってきました。大勢の人が食事もせずイエス様の話に聞き入っていました。弟子たちはイエス様に、群衆を解散させ、めいめいで食べ物を用意させることを提案しました。しかしイエス様のお答えは違いました。

16しかし、イエスは言われた。「彼らが出かけて行く必要はありません。あなたがたで、あの人たちに何か食べる物を上げなさい。」

 イエス様と弟子たちの間で、次のようなやりとりがありました。

マルコの福音書6:37−38「37すると、彼らに答えて言われた。「あなたがたで、あの人たちに何か食べる物を上げなさい。」そこで弟子たちは言った。「私たちが出かけて行って、二百デナリものパンを買ってあの人たちに食べさせるように、ということでしょうか。」38するとイエスは彼らに言われた。「パンはどれぐらいありますか。行って見て来なさい。」彼らは確かめて言った。「五つです。それと魚が二匹です。」」

17しかし、弟子たちはイエスに言った。「ここには、パンが五つと魚が二匹よりほかありません。」

 「パンが五つと魚が二匹」は大勢の人々のためには無いに等しいものでした。弟子たちは、自分たちではこれ以上どうすることもできないことを知りました。

18すると、イエスは言われた。「それを、ここに持って来なさい。」19そしてイエスは、群衆に命じて草の上にすわらせ、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて、それらを祝福し、パンを裂いてそれを弟子たちに与えられたので、弟子たちは群衆に配った。

 イエス様は弟子たちに、人々を組みに分けて草の上に座らせるように命じられました。

マルコの福音書6:39−40「39イエスは、みなを、それぞれ組にして青草の上にすわらせるよう、弟子たちにお命じになった。40そこで人々は、百人、五十人と固まって席に着いた。」

 このような組にすることは、間違いなくみなに静かにパンが渡されるためでした。またあとで何人の人に配ることができたかがわかることになります。
 イエス様は5つのパンと2匹の魚を取り、天を見上げて、祝福し、パンをさき、弟子たちに渡されて、人々に配るようにされました。パンと魚が人々の手に渡っていきます。パンと魚はさいてもさいてもなくなりませんでした。

20人々はみな、食べて満腹した。そして、パン切れの余りを取り集めると、十二のかごにいっぱいあった。21食べた者は、女と子どもを除いて、男五千人ほどであった。

 これほどの多くの人たちが十分食べて、なお残りのパン切れが12のかごにいっぱいになりました。

■イエス様が分けてくださる時

 5000人以上の人を養うにはとても足りないと思われた5つのパンと2匹の魚でした。それをイエス様は人々に配りなさいとおっしゃいました。イエス様のおことばどおり配り始めると、いくら配ってもなくならず、どんどん配ることができ、しかも余ってしまったのです。それは、イエス様に5つのパンと2匹の魚をゆだねて、イエス様のおことばに従うことから起こったのでした。
 私たちが持っているものはひとりひとり違うでしょうが、それをイエス様が受け取り用いてくださいます。イエス様が私たちがささげたものを祝福してくださり、それをありあまるほどに増やしてくださいます。それはイエス様だけが持っておられる御力です。
 私たちは、神様にゆだね、神様にささげる時に、そのような神様の御力を体験することができるのです。

■いのちのパン

 イエス様は、ヨハネの福音書によると、そのあと民衆に、あなたがたは今パンを食べ満足しているが満腹しただけで終わってはいけません。大事なのは神様が与える天からのパン、いのちのパンを食べることですと教えられました。

ヨハネの福音書6:35、51「35イエスは言われた。「わたしがいのちのパンです。わたしに来る者は決して飢えることがなく、わたしを信じる者はどんなときにも、決して渇くことがありません。…51わたしは、天から下って来た生けるパンです。だれでもこのパンを食べるなら、永遠に生きます。」

 わずか5つのパンと2匹の魚で男の人5千人に恵みを与えてくださったように、ひとりの人、イエス様の十字架の死は、イエス様を信じる数えきれない人たちに、新しい、永遠のいのちを与えることになったのでした。

ヨハネの福音書12:24「まことに、まことに、あなたがたに告げます。一粒の麦がもし地に落ちて死ななければ、それは一つのままです。しかし、もし死ねば、豊かな実を結びます。」

 これは、イエス様が最後の1週間をエルサレムで過ごされ、まもなく十字架にかかろうとしていた時に語ったことばです。イエス様の十字架の死が豊かな実りとなって、私たちに救いと喜びをもたらしました。その死によって私たちに罪の赦しをもたらしました。
 それは、その人の生き方を根底から変え、それが、さらに人々に伝えられ、恵みが次々と分け与えられていくのです。私たちは、そのような恵みの中に入れられたことを感謝して、これからも歩みたいと思います。


ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2011年7月24日