ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2014年5月25日


2014年5月25日 主日礼拝説教
「神の導きにゆだねて」(使徒の働き25章1節〜12節)

■はじめに

 21章から始まった、パウロがエルサレム神殿を汚したという罪で捕らわれ、裁判を受けているところを読んでいます。パウロはエルサレムからカイザリヤに護送され、総督ペリクスのもとで裁判を受けました。ユダヤ教側からの告発を受けて、パウロの弁明がありました。それでも決着がつかなくて、パウロの判決は下されないまま延期され、2年間カイザリヤにとどめ置かれることになりました。その間パウロは、ローマ市民として、ある程度の自由が与えられ、カイザリヤのクリスチャンたちがパウロのもとに訪問し、また総督ペリクスとはたびたび会って、キリスト教信仰について話す機会が与えられました。
 総督ペリクスに代わってフェストが着任しました。この時カイザリヤで争いが起き、そのことでユダヤ人たちがペリクスをローマ皇帝に訴えるという出来事がありました。それでペリクスはローマに呼び戻され、代わってフェストが総督としてカイザリヤにやってきました。このようなあわただしい交代でしたから、パウロのこともそのままになってしまいました。

■フェストがエルサレムへ

1フェストは州総督として着任すると、三日後にカイザリヤからエルサレムに上った。

 彼は、着任するとすぐエルサレムに表敬訪問をしました。フェストはユダヤ教指導者と会い、総督としての何をなすべきか話し合いました。その時、「祭司長たちとユダヤ人のおもだった者たち」、これはユダヤ議会の議員たちでしたが、彼らから総督に、判決が延び延びになっているパウロの裁判について話がありました。

3パウロを取り調べる件について自分たちに好意を持ってくれるように頼み、パウロをエルサレムに呼び寄せていただきたいと彼に懇願した。彼らはパウロを途中で殺害するために待ち伏せをさせていた。

 ユダヤ教指導者たちはパウロの裁判を早く終わらせるため、パウロをエルサレムに連れてきて裁判をしたらどうかと提案しました。その裏には、パウロをカイザリヤからエルサレムに移送される途中で殺害しようとの狙いがあったのでした。これは、2年前は40人以上からなるユダヤ教の過激派の考えだったのですが、今はユダヤ教議会の方針になっていました。
 しかしフェストは、ユダヤ人の言いなりにはなりませんでした。すでにパウロの裁判は、ローマ総督のもとローマ法廷で行っていることでした。しかもパウロはカイザリヤにいて、自分もこれからカイザリヤの帰ろうとしているので、パウロの裁判のためにもう一度エルサレムに来るつもりはありませんでした。それほど早く決着をつけたいならば、自分に同行して、そのままカイザリヤで裁判を行えばよいだろうと答えました。

■フェストのもとの裁判

 フェストはカイザリヤに帰るとすぐに、2年間開かれなかったパウロの裁判を再開しました。

7パウロが出て来ると、エルサレムから下って来たユダヤ人たちは、彼を取り囲んで立ち、多くの重い罪状を申し立てたが、それを証拠立てることはできなかった。

 ユダヤ人たちは、先のテルトロの告発に加えて、さらにパウロの罪状を申し述べたでしょうが、証拠を示すまでには至りませんでした。2年もたち、目撃証人に立てることも難しくなっていました。それでもユダヤ人たちは、「多くの重い罪状を申し立てた」とあるように、パウロを何とか罪に定めようと言い立てました。

8しかしパウロは弁明して、「私は、ユダヤ人の律法に対しても、宮に対しても、またカイザルに対しても、何の罪も犯してはおりません」と言った。

 パウロは今までの弁明を繰り返しました。律法に背いたことも神殿を汚すこともしていないし、さらに今までになかった「カイザル」(ローマ)に対しても何も悪いことは行っていないと付け加えました。今度裁判が開かれたら、ユダヤの律法によってではなく、あくまでローマ法にのっとって裁判を進めようとしていたからでした。

9ところが、ユダヤ人の歓心を買おうとしたフェストは、パウロに向かって、「あなたはエルサレムに上り、この事件について、私の前で裁判を受けることを願うか」と尋ねた。

 フェストはこの段階で、ローマ法によればパウロの無罪を確信したでしょう。釈放するのが当然であったにもかかわらず、着任したばかりのフェストにとって、ユダヤ人との関係を壊したくないという思いが強かったのでした。それでフェストは、エルサレムのユダヤ議会でユダヤの律法で裁判を受けないか。決定権は、ローマ総督である私にあるので、そんなにひどい判決にはならないだろう。そうしたらどうかとパウロに同意を求めました。
 しかしそうならないことは、総督ピラトがイエス様を裁いた時に、ピラトの思いに反して、イエス様を十字架刑に送ってしまったことで明らかでした。

10すると、パウロはこう言った。「私はカイザルの法廷に立っているのですから、ここで裁判を受けるのが当然です。あなたもよくご存じのとおり、私はユダヤ人にどんな悪いこともしませんでした。

 パウロは、あくまでもユダヤの律法にではなくローマの法に違反しているかどうかで裁判を進めたいと思っていました。ユダヤ議会による影響力が強いエルサレムに行けば、たとえ総督が臨席しても、またユダヤのパウロに対する憎しみを考えれば、ユダヤの律法によって死刑になる可能性が高かったのでした。パウロはこのままカイザリヤでローマ総督のもとで、ローマ法による裁判を受けることを望みました。

■カイザルに上訴する

 パウロは、ローマ法に照らして死罪に当たる罪を犯したのであるなら、ローマ法に基づいて刑を執行される覚悟はできていました。しかし、ユダヤ教の律法によって有罪とされることや、総督がユダヤ人との駆け引きにパウロの裁判を使うことを恐れました。フェストはすでにそのような方向に向かっていました。
 パウロはここで、フェストへの優柔不断な態度への抗議もあって、「カイザルに上訴」する権利を持ち出しました。これは、まだ判決が下っていないのですから、上訴するというより「私はカイザルに直訴します」と言ったことになります。
 パウロがローマに行ける道は、無罪となって釈放されるか、それとも囚人のままであるなら、これしかない方法が「カイザルへの上訴」でした。この権利はローマ市民に与えられていたもので、上訴した囚人は無事に皇帝のもとに送り届けられ、裁判はローマで行わなければならない規定でした。

12そのとき、フェストは陪席の者たちと協議したうえで、こう答えた。「あなたはカイザルに上訴したのだから、カイザルのもとへ行きなさい。」

 フェストは、直ちに審理を中断し、パウロの願いが正式に認められるものかどうか協議しました。手続き上、形式的なものであったかもしれませんが、あるいはそこまで言うのなら無罪にしようか、パウロの願ったようにローマに送ろうか、そのような協議ではなかったかと考えられています。そして、パウロをローマに送ることを決定し、宣言しました。「あなたはカイザルに上訴したのだから、カイザルのもとへ行きなさい。」

■神の導きにゆだねて

 パウロは、イエス様からローマに行けるという約束をいただいていました。

使徒の働き23:11「その夜、主がパウロのそばに立って、「勇気を出しなさい。あなたは、エルサレムでわたしのことをあかししたように、ローマでもあかしをしなければならない」と言われた。」

 イエス様の約束がいつ実現するのかを待つ2年間を過ごしました。カイザリヤのクリスチャンたちとの行き来があり、相談する時間はたくさんありました。無罪となって晴れてローマに行くのか。その場合、旅の途中にユダヤ人から殺されるかもしれない。そうではなく、最も安全にローマに行くことができるのは、ローマの兵士によって守られ送り届けてもらえるカイザルへの上訴しかない、と考えがまとまっていたのではないでしょうか。
 フェストの裁判は、パウロが上訴せざるを得ない状況に進みました。フェストがエルサレムで裁判を行うように心が動かされ、パウロにその同意を求めた時に、パウロは「カイザルに上訴します」と、それまで考えてきたことを言う機会が与えられました。それはパウロの思いと計画と、神様の導きが一致した時でした。こうして道が開かれていくのでした。

箴言16:3「あなたのしようとすることを【主】にゆだねよ。そうすれば、あなたの計画はゆるがない。」

詩篇37:5「あなたの道を【主】にゆだねよ。主に信頼せよ。主が成し遂げてくださる。」

 私たちも、神様の導きにゆだねて歩む時に、「私たちの計画はゆるがない」し、「主が成し遂げてくださる」のです。このことを覚えて、今週も歩みたいと思います。


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