ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2014年9月21日


2014年9月21日 主日礼拝説教
「おことばどおりになりますように」〜イエス・キリストの生涯3. マリヤへの告知〜(ルカの福音書1章24節〜38節)

■はじめに

 先週は、年老いたザカリヤとエリサベツ夫妻に、御使いガブリエルがバプテスマのヨハネ誕生を告げたところを読みました。

■エリサベツ

 エリサベツに、御使いの告げたとおり子どもが与えられました。

24その後、妻エリサベツはみごもり、五か月の間引きこもって、こう言った。25「主は、人中で私の恥を取り除こうと心にかけられ、今、私をこのようにしてくださいました。」

 エリサベツも、沈黙している夫ザカリヤとともに、大きくなっていくお腹をいとおしんで、ザカリヤから筆談で知ったでしょう、御使いのことばを思いめぐらしたと思います。彼女は、不可能を可能にしてくださる神様を思い、祝福された女として神様に覚えられていたことを感謝しました。そして、自分が、救い主の先触れとなる特別な子どもの母親となることを受け入れ、子どもが与えられなかったということが、かえって神様の時に組み込まれていたことを知って感謝したのでした。

■ナザレのマリヤ

26ところで、その六か月目に、御使いガブリエルが、神から遣わされてガリラヤのナザレという町のひとりの処女のところに来た。27この処女は、ダビデの家系のヨセフという人のいいなずけで、名をマリヤといった。

 ザカリヤに御使いが現れヨハネの誕生を告げてから「六か月目」のことです。「御使いガブリエル」は、今度はガリラヤのナザレに住むマリヤのもとに遣わされました。
 ガリラヤ地方はイスラエルにとって田舎でしたが、ナザレはその中のさらに田舎と言っても言いような、人口およそ3000人ほどの村でした。
 マリヤはすでに婚約をしており、相手の名はヨセフと言いました。同じナザレの村の人で、大工をしている人でした。二人とも特にどうというわけではなく、普通に暮らしていた人たちでした。ただヨセフの家系をずっとたどっていくと、1000年前のダビデ王につながる人でした。それとても1000年もたっているのですから、ダビデの家系の人は数え切れないほどいたわけで、ヨセフが特別だということではありませんでした。
 そのヨセフの婚約者であったマリヤに、御使いガブリエルが現れ話しかけました。

■おめでとう、恵まれた方

28御使いは、入って来ると、マリヤに言った。「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられます。」

 ラテン語訳が「アヴェ、マリア、恵みに満ちた方、主はあなたとともにおられます」と始める有名な箇所です。
 マリヤは、当時のユダヤの女性の結婚年齢から推測すると、おそらく15歳か16歳くらいの若い娘であっただろうと言われています。御使いガブリエルはマリヤの前に立ち、「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおられます」と語りかけました。

29しかし、マリヤはこのことばに、ひどく戸惑って、これはいったい何のあいさつかと考え込んだ。

 「とまどっている」マリヤに対して、ガブリエルは続けます。

30すると御使いが言った。「こわがることはない。マリヤ。あなたは神から恵みを受けたのです。

 神様のほうからマリヤに「おめでとう」と声をかけ、「こわがることはない」と言ってくださり、あなたは神様から恵みを受けたのですとマリヤに告げました。
 御使いガブリエルの「おめでとう、恵まれた方」、「あなたは神から恵みを受けたのです」ということばは、神様からの一方的な恵みと選びの宣言でした。ナザレの村は、人々から「ナザレから何の良いものが出るだろう」と言われてしまうような小さな町でしたが、そのような小さな田舎に住んでいた年若い娘が神様から選ばれるという恵みをいただいたのでした。
 マリヤはたいそう戸惑いながらも、次々と一方的に語られる御使いのことばを聞きました。

31ご覧なさい。あなたはみごもって、男の子を産みます。名をイエスとつけなさい。32その子はすぐれた者となり、いと高き方の子と呼ばれます。また、神である主は彼にその父ダビデの王位をお与えになります。33彼はとこしえにヤコブの家を治め、その国は終わることがありません。」

 救い主は、ダビデの子孫から生まれると預言されていました。マリヤもイスラエルの娘でした。いつの日かイスラエルに救い主が来てくださるというお約束を知っていました。今、御使いのことばを聞きながら、神の時がついに満ちて救い主がやってくることを、しかも自分がその母となるように選ばれ、それが神様の恵みであることをマリヤは一つ一つ理解していったのでした。ガブリエルのことばが終わり、マリヤは静かにガブリエルのことばを思いめぐらしました。そこにはかなりの沈黙の時が流れたと思われます。

■どうしてそのようなことがおこりえましょう

 マリヤは、旧約聖書にある不妊の女と言われていた人に子どもが与えられたことは知っていたでしょう。アブラハムの妻サラがそうでした。サラはイサクを生みました。サムエルを生んだハンナもそうでした。それらは神様のなさった不思議なことでしたが、それにしても処女がみごもるというような出来事は聞いたことがありませんでした。またすぐに信じられるようなことでもありません。マリヤはそのことを思ってまず驚きのことばを口にしました。

34そこで、マリヤは御使いに言った。「どうしてそのようなことになりえましょう。私はまだ男の人を知りませんのに。」35御使いは答えて言った。「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。それゆえ、生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます。

 御使いは、マリヤをとおして、聖なる者、神の子と呼ばれる方が生まれると告げました。そして御使いは、マリヤがこのことを信仰をもって受け入れることができるように、最後にこう語りました。

37神にとって不可能なことは一つもありません。」

 ここまで聞いてマリヤは、いま自分に告げられたことは神様が自分を選んでなさろうとしていることであると信じました。マリヤは御使いのことばをそのまま受け入れて、自分の一生を神様にささげますと告白しました。そのマリヤの信仰告白が38節です。

38マリヤは言った。「ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことばどおりこの身になりますように。」こうして御使いは彼女から去って行った。

 マリヤは「神にとって不可能なことは一つもありません」という御使いのことばをそのまま受け入れて、心にあった疑問や、不安や、恐れをすべて神様の御手にゆだねました。
 マリヤと御使いの対話がどのくらいの時間であったかはわかりませんが、御使いのことばが次々と続き、マリヤは戸惑いと、「どうしてそのようなことになりえましょう」と答えただけでした。同じような状況でザカリヤはしるしを求めましたが、マリヤは「ほんとうに、私は主のはしためです」、私は主の女奴隷ですというへりくだったことばをもって、主のみこころを受け入れました。あなたに私自身をおささげいたしますというマリヤのすばらしい信仰告白でした。
 さらにマリヤは御使いのことばを、「あなたのおことばどおりこの身になりますように」、「神様の願われるように、神様のみこころのとおりになりますように」と言って受け入れました。

■マリヤの信仰

 いま御使いのことばのとおり、マリヤの胎に聖霊によって男の子が宿ろうとしていました。しかしその赤ちゃんは、単なる人の子ではありませんでした。神が人となって生まれるのです。マリヤの胎に、無限なる神様が小さな赤子となって宿りたもうのです。
 このイエス様の誕生は、私たち人間の罪を赦し、私たちを神の子としてくださるためでした。そのために、イエス様は罪のないお方として生まれるため、聖霊によって処女マリヤの胎に宿らなければならなかったのでした。
 その罪なきイエス様が人としての生涯を歩み、最後に十字架につけられ、その身代わりの死によって私たちの罪が赦されることが神様の御心でした。
 10代半ばと思われる娘が御使いの語られることばをすべて理解できなかったかもしれませんが、これからの自分の歩むべき状況を受け入れることができました。もしかしたら世間からうしろ指を指されるかもしれない。婚約者のヨセフはどう思うだろう。しかしマリヤは「神にとって不可能なことは一つもありません」というおことばに従って、自分は主のはしため、主にお仕えするだけの者である、主におまかせいたしますと言って神様にすべてをゆだねました。
 このマリヤの信仰を私たちも思いめぐらし、今週は歩みたいと思います。


ゆりのきキリスト教会テキスト礼拝説教2014年9月21日