ゆりのきキリスト教会>テキスト>礼拝説教2014年11月16日
2014年11月16日 主日礼拝説教
「すべての人の王として生まれた」〜イエス・キリストの生涯10. 東方の博士の来訪〜(マタイの福音書2章1節〜12節)
クリスマスの日の出来事をルカの福音書2章から2回見たあと、先週は8日目にイエス様が割礼を受けられたこと、40日目にエルサレム神殿に行かれ、シメオンとアンナに出会ったこと見ました。今日はマタイに移り、クリスマスのもう一つの重要な出来事である、東方の博士たちが生まれたばかりのイエス様を訪ねてきた箇所になります。
1イエスが、ヘロデ王の時代に、ユダヤのベツレヘムでお生まれになったとき、見よ、東方の博士たちがエルサレムにやって来て、こう言った。2「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。私たちは、東のほうでその方の星を見たので、拝みにまいりました。」
ここに出てくる「東方の博士たち」とは占星術の学者です。いつも太陽や月や星を見ていて、その動きによって世の中の動きを判断している人たちでした。東方とは現在のイラン、アラビヤあたりが考えられています。
ユダヤの民は、かつてバビロニヤのバビロンに捕囚となっていました。その後、捕囚の民はイスラエルに帰って行きましたが、帰らなかったユダヤ人たちもいました。彼らから、ユダヤに救い主が生まれることが、バビロニヤの次にこの地を支配したペルシヤに広まっていたのでした。
博士たちは不思議な星の輝きを見ました。そのことによって、ユダヤ人の王、救い主が生まれたことが彼らにはわかりました。それは、神様がそのことを知らせ、そのお方に会いたいという思いを博士たちに与えてくださったからでした。
それで博士たちは、はるばる東方からエルサレムにやってきて、ヘロデ王の宮殿を訪ねました。
3それを聞いて、ヘロデ王は恐れ惑った。エルサレム中の人も王と同様であった。
「ユダヤ人の王」ということばを聞くと、ヘロデ王(ヘロデ大王)は恐れ、不安を抱きました。ヘロデはユダヤ人ではなくエドム人でした。彼は、ユダヤ人が新しい王、救い主を待ち望んでいることを知っていました。ダビデの血筋にそのような子が生まれれば、自分の地位など危うくなるのは明らかでした。
ですからエルサレムの人々も、ヘロデがそのことを聞けばまた何か起こすのではないかと思って、不安が先に立ったのです。ヘロデは、自分の地位をおびやかすと思われる者は、自分の子どもでも平気で殺していたからでした。
ヘロデは、「キリストはどこで生まれるのか」と問いただしました。博士たちが「ユダヤ人の王」と言ったので、それは王ではなくユダヤ人が待っていた「キリスト」のことに違いないと思い、「キリストはどこに」と聞いたのです。ヘロデはキリストを信じなかったでしょうが、そのような人物の誕生の情報を知りたかったのです。
聖書に詳しい祭司長、学者たちはヘロデ王に答えました。聖書の預言から、「ユダヤのベツレヘム」に生まれると答えました。それは預言者ミカのことばでした。
6『ユダの地、ベツレヘム。あなたはユダを治める者たちの中で、決して一番小さくはない。わたしの民イスラエルを治める支配者が、あなたから出るのだから。』」
ヘロデ王はひそかに博士たちを呼んで、彼らから星の出現の時間を知ろうとしました。内心、恐れと嫉妬心で固まっていたヘロデ王は、祭司長や学者たちを退けて、博士たちに「ひそかに」聞きました。星の出現した時から数えて、今その幼子が何歳になっているかを。ヘロデは次に打つ恐ろしい手を考えていたのです。
東方から来た博士たちは、星を見てから出かける準備をし、それから旅をしてきました。1年くらいの時がたっていたでしょう。
8そして、こう言って彼らをベツレヘムに送った。「行って幼子のことを詳しく調べ、わかったら知らせてもらいたい。私も行って拝むから。」
律法学者たちは、博士たちのことばを聞いてもベツレヘムに行こうとしませんでした。東方の博士たちの熱心さに比べれば、何と無感動な対応であったのかと思わされます。それは当時、救い主、メシヤが現れたといううわさがたびたびあったからです。またか、という思いもあったでしょう。
博士たちは、ヘロデ王の言ったことを聞いて出かけました。エルサレムからベツレヘムまで、神様が博士たちを導かれました。星は幼子イエス様がいるところを指し示しました。
ヨセフとマリヤは、イエス様が生まれてから40日目にエルサレム神殿を訪れ、イエス様誕生の儀式をすませました。それから家を借りて、ベツレヘムに住んでいたと思われます。
11そしてその家に入って、母マリヤとともにおられる幼子を見、ひれ伏して拝んだ。そして、宝の箱をあけて、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげた。
「宝の箱をあけて」は、原文では「宝をあけて」なので、袋であったかもしれません。彼らは、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげました。3つの贈り物があったので、博士は3人いたと言われます。これらはいずれも高価な、彼らにとっては最高の贈り物でした。
「黄金」は王としてのイエス様、「乳香」は神としてのイエス様、「没薬」は人として苦難にあわれるイエス様を示していると言われます。またこれらの贈り物は、13節以降に出てくるエジプトにしばらく滞在するために役立ったことでしょう。
12それから、夢でヘロデのところへ戻るなという戒めを受けたので、別の道から自分の国へ帰って行った。
幼子に出会い、礼拝した博士たちに、神様は夢でみこころを示されました。博士たちはヘロデ王の命令に背いて、ほかの道を通って帰っていきました。
神様は御子イエス・キリストを、私たちを救うためにこの世に生まれさせてくださいました。イエス様は、ユダヤ人の救い主ではなく、異邦人の救い主であることを、マタイはこの東方の博士たちの来訪によって示そうとしました。
最初の系図もそのことを示しています。この中に4人の女性が登場しました。1章3節の「タマル」、5節の「ラハブ」「ルツ」、6節の「ウリヤの妻」です。それは、このダビデの系図の中に、異邦人がいたことを思い出させるためでした。
ユダの息子パレスとザラを産んだタマルは、地元カナンの女性でした。ラハブはヨシュア記2章に出てくるカナンの女性で、エリコの町に住んでいました。ルツはモアブ人でした。ダビデの子ソロモンを産んだウリヤの妻とはバテ・シェバのことで、ウリヤはヘテ人でした。ウリヤの妻バテ・シェバもヘテ人であったと思われます。こう見てくると、いずれも普通ならユダヤの系図から外したい女性たちでした。
ダビデの系図の中に異邦人の女性を含ませることによって、この福音書を読むユダヤ人に、イエス様はユダヤ人だけでなく、異邦人にも救い主として来られたことを、そして2章の異邦人であった東方の博士たちの訪問によって、さらにそのことを伝えたのです。
ルカの福音書2:31−32「31御救いはあなたが万民の前に備えられたもので、32異邦人を照らす啓示の光、御民イスラエルの光栄です。」
これはシメオンの賛歌です。イエス様が生まれて、きよめの期間と言われる40日が過ぎて、幼子を神様にささげる儀式をするために、ベツレヘムからエルサレムの神殿に詣でた時、そこにいたシメオンが、イエス様が「異邦人を照らす啓示の光」として来られたことを語りました。このように、イエス様の誕生は、すべての人の救い主として来られたのでした。
イエス・キリストを自分の王、救い主として信じる者は、その罪がイエス様の十字架によって赦され、永遠のいのちを与えられて、天国へ入るという約束が与えられます。それは、異邦人であった私たちに与えられた約束でした。イエス様は、異邦人のために、すべての国の人の救い主としてお生まれになりました。イエス様誕生の中にそのことが示されていることを、今日も感謝とともに覚えたいと思います。
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