１．70年とは？

　今、日本は平和です。長く平和が続いています。ただ平和であるばかりでなく、繁栄しています。私達の親の時代、この中にも、その世代に属する方がおられますが、それは大変な時代でした。その時代に生きた人達のご苦労のお蔭で日本は立ち直り、その頑張りが次の世代の人達に引き継がれて我が国は世界有数の繁栄を築きました。

　今は、その努力の成果を楽しみ、謳歌していると言えます。いわば自分が築いたわけではない繁栄を楽しんでいます。しかしバブルの崩壊が象徴するように、日本の繁栄は下り坂です。そして確実に言えることは、消費するだけでなく、積み上げる努力を継続しなければ、先人が築いてくれたものはなくなってしまうということです。

　12節で「七十年になります」と主の御使いが言っています。それはバビロン捕囚の前にエレミヤが預言した70年のことです。こう言われています。

　「この国は全部、廃墟となって荒れ果て、これらの国々はバビロンの王に70年仕える。70年の終わりに、わたしはバビロンの王とその民、またカルデヤ人の地を彼らの咎のゆえに罰し、これを永遠に荒れ果てた地とする。」（エレミヤ25：11～12）

　廃墟となって荒れ果て、バビロンの王に70年仕えると預言されています。

　なぜ、そのようなことになるのでしょうか。

　それは、彼らが神の戒めを守らなかったからです。

　神は命じられました。安息日や安息の年を守り、自分達だけでなく雇人や奴隷、自分達の内にいる外国人も休めるようにしなさい。そればかりではありません。人だけでなく労働に使われる家畜、そして土地さえも休ませるようにと。　

　しかし彼らは守りませんでした。休ませなければならない時にも人や家畜そして土地を働かせました。そこで神は何度も預言者を遣わして警告されました。ところが彼らは聞き入れませんでした。だから予告しておられた通りにされたのです。

　レビ記26：27～28に次のように書かれています。

　「これにもかかわらず、なおもあなた方が、わたしに聞かず、わたしに反抗して歩むなら、わたしは怒って、あなた方に反抗して歩み、またわたしは、あなた方の罪に対して七倍も重く、あなた方を懲らしめよう。」

　どのようにしてでしょうか。31～35に書かれています。

　「わたしはあなた方の町々を廃墟とし、あなた方の聖所を荒れ果てさせる。（中略）わたしはあなた方を国々の間に散らし、剣を抜いてあなた方のあとを追おう。あなた方の地は荒れ果て、あなた方の町々は廃墟となる。」そして、です。その後をよく聞いてください。その後何が起こるかと言えば「その地が荒れ果て、あなた方が敵の国にいる間、その時、その地は休み、その安息の年を取り返す。地が荒れ果てている間中、地は、あなた方がそこの住まいに住んでいた時、安息の年に休まなかった、その休みを取る。」

　神の御命令に背き、雇人や奴隷、他国の人達、家畜や土地を休ませなかったので、彼らを追い払い、耕す者や種をまく者をなくして、神御自身が土地や家畜に休みを与えると言われます。

　私達が自分のものだと思っているものは、実は神のものです。神から管理を任されてお預かりしています。ちゃんと管理しなければ、神が直接必要なことをなさるのです。

　２．神の戒めの確かさ

　私達は神の御命令を聞かないという選択もできます。その場合、神は別の方法で御計画を実行されます。私達が聞くか聞かないかに関わらず神の御計画は大筋で実行されていきます。その時、それは私達にとって決して心地良いものではないでしょう。私達はそれに耐えるしかありません。いわば自業自得です。

　しかし良い面もあります。悔い改めの機会となり、私達を成長させるからです。

　「全ての懲らしめは、その時は喜ばしいものではなく、かえって悲しく思われるものですが、後になると、これによって訓練された人々に平安な義の実を結ばせます。」（ヘブライ12：11）

　しかも、それは永遠に続くものではありません。不従順に対する懲らしめは必ずありますが、その期間は定められていて、その期間が満ちると、神は必ず慰めを与えて下さいます。イスラエルの民の場合は、その期間が、ここで言われている７０年です。

　神はエレミヤを通して告げておられます。

　「バビロンに七十年の満ちる頃、わたしはあなた方を顧み、あなた方にわたしの幸いな約束を果たして、あなた方をこの所に帰らせる。」（エレミヤ書29：10）

　そして、もし私達を懲らしめるために用いられた人達に行き過ぎがあれば、彼らは裁きを受けます。今日の聖書個所に「安逸をむさぼっている諸国の民に対しては大いに怒る。わたしが少ししか怒らないでいると、彼らはほしいままに悪事を行なった」とあり（１：15）またエレミヤ25：12で「70年の終わりに、わたしはバビロンの王とその民、またカルデヤ人の地を、彼らの咎のゆえに罰し、これを永遠に荒れ果てた地とする」と言われた通りです。

　イスラエルの民の不従順にお怒りになって、諸国によって懲らしめられたのですが、諸国は必要以上にイスラエルの民を残虐に扱い、その上で安逸をむさぼっていました。彼らは主の意図を誤解して「ほしいままに悪事を行なった」と言われるのです。

　３．第一の幻の意味

　さてダリヨスの第2年のシェバテの月、これは紀元前520年の２月の末から３月のことです。その24日に神はゼカリヤに幻を見せて語られました。

　見ると一人の人が赤い馬に乗っていました。この人は主の使いであることが11節から分かります。しかし単なる天使ではありません。2000年前、ベツレヘムで人間の赤ちゃんとしてお生まれになった方です。旧約の時代には御子は、このようにして主の使いとして時々神の民の前に現れてくださいました。

　「その人は谷底にあるミルトスの木の間に立って」いました。

　ミルトスは、イザヤ55：13「茨に代わって糸杉が、おどろに代わってミルトスが生える。これは主に対する記念となり、印となる。それはとこしえに消し去られることがない」と書かれていますが、切られた後も生命力が強く、枯れ難いところから、干ばつにも耐える強木として不死、つまり死なないことの象徴となり、そしてそこから成功・繁栄の象徴ともなりました。

　その人は谷底にいました。それは、イスラエルの民の状況を表しています。谷底つまり、どん底の状態でした。しかし彼はミルトスの木の間に立っていました。切られても中々枯れない強い木です、そして不死の象徴です。死なないのです。イスラエルの民は滅びません。そして、その中に主の御使い、つまり御子が立っておられます。

　これを現代に当てはめれば、神の民である教会に対するメッセージです。

　教会が谷底にある時、つまり神の民が、どん底にある時、主は、そこに立っておられる。そして周りにはミルトスの木がある。教会は、神の民は、死にません。今、谷底にいるかもしれませんが、今が谷底であれば動けば上ります。私達が動き出せば、状況は良くなるのです。良くなっていくのです。

　預言者ゼカリヤが、「主よ。これらの赤や、栗毛や、白い馬は何ですか」と尋ねると彼と話していた御使いが、その馬達は「地を行き巡るために主が遣わされたものだ」と教えてくれました。世界がどのような状況であるのかを調べるために、主が使わされた者達でした。そして彼らは御子に、「私達は地を行き巡りましたが、まさに、全地は安らかで、穏やかでした」と報告しました。

　どこにも戦いはなく、平和で、どの国民も安らかに暮らしていたと報告したのです。

　すると、それを受けて御子は主なる神に、「いつまで、あなたはエルサレムとユダの町々に憐れみを施されないのですか。あなたが呪って70年になります」と執り成されました。すると主なる神は、ゼカリヤと話していた御使いに、良い言葉、慰めの言葉で答えられたと書いてあります。

　主は、どんな言葉を、かけられたのでしょうか。それは17節の『』の中の言葉です。特にエルサレムに帰る。エルサレムを再び選ぶという宣言です。２：12にもあります。それは、どん底にある人達にとって、慰めではありませんか？

　希望を与えますね。それだけでなく神は、「エルサレムとシオンを、ねたむほど激しく愛した」と言われます。

　４．預言の言葉

　エズラがゼカリヤとハガイについて記録しています。エズラ記５：１です。

　「預言者ハガイとイドの子ゼカリヤの、2人の預言者は、ユダとエルサレムにいるユダヤ人に、彼らと共におられるイスラエルの神の名によって預言した。」

　当時の状況を、もう一度思い起こしてみましょう。クロス王の勅令によって、心を動かされた人々がバビロニアから、遠い、遠いユダヤの地に帰ってきました。神殿を再建するためです。彼らは神殿の基礎を据えました。すると周辺の住民が妬みを起こし、うまく立ち回って王の命令を貰って妨害をしました。そのため神殿の再建は何十年も中断してしまいました。

　今、その状況にあって、「預言者ハガイとイドの子ゼカリヤの、2人の預言者は、ユダとエルサレムにいるユダヤ人に、彼らと共におられるイスラエルの神の名によって預言した」のです。

　どんな預言だったのでしょうか。ハガイ１：７～８

　「万軍の主はこう仰せられる。あなた方の現状をよく考えよ。山に登り、木を運んで来て、宮を建てよ。そうすれば、わたしはそれを喜び、わたしの栄光を現わそう。」

　神は「わたしに帰れ」と呼びかけ、「あなた方の現状をよく考えよ」とおっしゃいました。そしてユダヤの人々が主の御声に耳を傾けた時、「宮を建てよ」とおっしゃいました。そうすれば喜ぶとおっしゃいました。

　神は新しい神殿を建ててもらうのがうれしいとおっしゃるのでしょうか。そうではありません。では何を喜ばれるのでしょうか。それは人々が神の御命令に従って行動し、その結果、宮が建てられることです。どうして、それを神は喜ばれるのでしょうか。

　その答えが、ハガイ１：13にあります。「わたしは、あなた方と共にいる。」

　神は御自分の民と共にいることを望んでおられます。それは聖書の最初から最後までを貫いている神の御気持ちです。神は私達と一緒にいたいと言われるのです。

　神は「エルサレムとシオンを、ねたむほど激しく愛した」と言われ、「エルサレムに帰る。エルサレムを再び選ぶ」と言われました。「そこにわたしの宮が建て直される」と宣言されました。

　なぜなら、そこに神の民が住んでいるからです。遠い国からエルサレムに帰ってくる人々、その人達は神の民です。その人達と一緒に住むと主は言われる。神と、その民が一緒に住んでいる、その象徴としての神殿を建てるように命じられたのです。

　建て直されると受身の形で言われていますが、御自身が行われるという意味です。

　光があるようにと神が望まれた時、光が存在しました。それと同じです。神が望まれた時、それは実現します。実現しています。

　その中で、人々は神の御働きに用いていただくのです。その働きに参加するように神は招いてくださるのです。その完成を見る栄誉に共に与かるようにと招いてくださるのです。私達が参加しようがすまいが、神の御計画は完成します。その働きに参加すれば共に喜ぶことができ、栄誉を共にすることができます。神は私達の助けを必要としておられるわけではありません。参加する私達に完成の喜びを味あわせてくださるのです。

　５．神の宣言

　17節で、「もう一度叫んで言え」と言われます。神は強調なさりたいのです。みんなによく聞いてほしいのです。その上で「そこにわたしの宮が建て直される。測り縄はエルサレムの上に張られる」と言われます。「わたしの町々には再び良いものが散り乱れる。主は再びシオンを慰め、エルサレムを再び選ぶ」と言われます。

　神御自身がエルサレムと神殿を再建して下さるのです。そして、主の慰めがあり、良いものが散り乱れるほど祝福して下さいます。

　前に確認したように、神は岡山、特に、この地域を選んでくださいました。計画しておられるプロジェクトを御自身が働いて完成されます。もし私達が、自分にはとても力はないけれど、主がさせてくださるなら用いていただきたいと願うなら、神は力を与えて働きを完成させてくださり、完成の喜びを味わわせてくださるのです。

　18節以下は、神のプロジェクトが始まると、必ず妨害もあることを教えています。私達を落胆させ、意気阻喪させようとします。でも、それらの角は打ち滅ぼされます。

　4つの角の幻はダニエル８章にもあります。ダニエルの幻の時期には紀元前530年頃と550年頃という２つの説があり、違いはダニエルが書いている王が、いつ王位についていたかの資料判断から来ます。いずれにしてもゼカリヤの幻よりも少し前です。

　それらの角はバビロニア、ペルシャ、ギリシャ、ローマを表していて、何れもイスラエルの民を圧迫した4つの帝国です。しかし、どれも今は存在しません。

　ダニエルが幻を見たのもゼカリヤの幻もペルシャ帝国の時代です。その時点で滅びていたのはバビロニアだけでした。ですから、この幻は、イスラエルの民を圧迫しようとする者達は、その時どんなに強くても、バビロニアがそうだったように、必ず滅ぼされることを告げています。それは、私達が神に従おうとするのを妨げようとする敵にもあてはめることができるでしょう。

　６．結び

　わたしに帰れと神は言われます。そのお招きに応じて、それぞれの罪を告白し、赦して頂き、神の翼の陰に避け処を得ましょう。そこには平安があります。シャロームとは全てに満ち足り、欠けるものがない状態を言います。心にも、体にも必要なものは全て備えられ、何の心配もない豊かな平安、それがシャロームです。神の許には、それがあります。

　その上で、宮を建てよとおっしゃる神のプロジェクトに用いていただきましょう。

　私達は何をすれば良いのでしょうか。神は私達に何をさせてくださるのでしょうか。

　自分を整え、期待し、祈って待ちましょう。