今日の聖書の箇所は、預言者エレミヤが遠くバビロンの地に連れていかれた 人々に宛てて書いた手紙です。バビロン帝国の圧倒的な力にねじ伏せられてエ
ルサレムは陥落し、ユダヤの人々は遠いバビロンの地へ連れていかれました。 「バビロン捕囚」という出来事です。さらに、エルサレム陥落の10年前にも、
バビロンに連れていかれた人々がいました。この手紙は、その人々に宛てた手紙 です。
エレミヤがこの手紙を書いた理由は、2つ。たった2年でバビロンから解放さ れると主張する人がおり、その一方で、バビロンに連れていかれた人々がバビロ
ン帝国に対する抵抗運動をすべきだと主張する人がいたのです。浮足立つよう な話があり、その一方では、力任せな物騒な話があったのです。けれど、エレミ
ヤの考えは違っていました。
エレミヤが手紙に託したことは、神様が「平和の計画」を立てておられるとい うことです。神様は必ずエルサレムに連れ戻してくださるし、その日が来ること
を信じ祈りつつ待ちましょう。今いる場所で、バビロンで平和に落ち着いて生活 しましょうというのです。つまり、エレミヤは、ユダヤの人々がバビロンに連れ
ていかれたということは、神の御心だとしているのです。
バビロンに連れていかれた人々が、自分の状況を神の計画、み心と信じて受け 入れること。これは容易いことではないでしょう。しかし、このことがバビロン
にいる人々のこれからのすべてを決するでしょう。腹を据えて身の置き所と思 うかどうか。神様の導きを期待し委ねるかどうか。神様の御心と人間の思いが、
ここでぶつかり合うのです。すんなりとはいかないことでしょう。そのことはエ レミヤも分かっていたようで、バビロンにいる人々に、信仰生活をするようにと
勧めています。12節「そのとき、あなたたちがわたしを呼び、来てわたしに祈 り求めるなら、わたしは聞く。わたしを尋ね求めるならば見いだし、心を尽くし
てわたしを求めるなら、わたしに出会うであろう、と主は言われる。」
「そのとき」とは、神様の平和の計画が人の目に見て分かるようになる時、エ ルサレムに帰ることになる時です。「そのとき」までずっと、神の御名を呼ぶ生 活、信仰生活を続けていることが期待されています。
バビロンに連れていかれた人たちが、その地で神の名を呼び祈り、信仰生活を すること。どうして自分がここにいるのか、遠くバビロンに連れていかれたその 2 訳を、神に尋ねる生活をすること。できれば、神のみ心と受け入れること。心落 ち着いて自分のなすべきことをなし、隣人を心に留め平和に過ごすこと。そのよ うにして、神のみ栄を表して過ごすのです。しかし、これは、どこにいても神が 神の民に願っておられることです。神の民の基本です。つまり、バビロンに連れ ていかれたという重大な経験を通して、神の民はいよいよ自覚的に神の民にな るように神が願っていると告げているのです。
バビロンに連れていかれた人々は、自分の故郷、エルサレムを想っていました。 ユダヤ人にとって、故郷エルサレムは神の都であり、何より特別なのです。いつ か帰る故郷、いつか帰る安息の地です。住み慣れない土地で暮らす人々が、自分 たちの故郷を想い、憧れています。このことは、この世にいる私たちが天の故郷 を憧れていることになぞらえることができると思います。
エレミヤは、天の故郷に帰る日を待つ私たちに、この世での過ごし方を教えて います。信仰の生活をしましょうと勧めています。神と共に生きていきましょう。 隣人と一緒に平和に生きていきましょうと勧めています。
新型コロナウイルス感染症が猛威を振るっています。中世ヨーロッパでは、伝 染病ペストに襲われ、人口の3分の1が死にました。誰もが死の危険に怯えてい ました。教会は、人々が平安に死を迎えるためにガイドブックを配りました。今 この時こそ、神様に心を向け、命を司る神を尊びましょう。家族、隣人と平和な 関りを持てるように努めなさいと勧めました。
カトリックの修道女、渡辺和子さんは、『置かれた場所で咲きなさい』という 本で、「(私たちには)「こんなはずじゃなかった」と思うことが、次から次に出 てきます。そんな時にも、その状況の中で「咲く」努力をしてほしいのです。ど うしても咲けない時もあります。・・・そんな時には・・・根を下へ下へと降ろ して、根を張るのです。次に咲く花が、より大きく、美しいものとなるために。」 「根を下へ下へと張る」とは、私たちにとって、エレミヤの言うところの、神様 を信じる生活をすること、隣人と平和に過ごすように心がけることです。何かを 学んだり、身につけたり、神の前に自分自身を大切にし、さらに隣人と出会い、 平和に過ごすことです。
イエス・キリストの十字架によって、神の愛が示されました。私達の目に見え ないところで、神様は私達のために「平和の計画」をなしてくださっています。
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