日本キリスト教団

2020.10.25 説教ダイジェスト
礼拝説教要約 「初めであり、終わりである」マタイ福音書10章26-31節
  ある時、本を読んでいて印象深い言葉があった。「山より大きな猪 いの は出ん」。人 は恐れたり怯えたりすると、恐れているものが、とてつもなく大きなものだと思 ってしまう。猪(いのしし)は恐るべきだが、それとて、山よりも大きな猪はい るはずがない。人は勝手に大きな敵を想像して怯えるが、妄想を膨らませて無駄 に恐れ怯えることはないという勧め。私は、思いました。山より大きな猪はいな いし、山も猪も神様がお造りになったもの。猪や山を恐れはしても、神様を恐れ るなら、猪も山も一番恐ろしいものではないということだ、と。

もしも猪に襲われたら、神様に助けてと祈ります。御心であれば、訳もなく助 けてくださるでしょう。猪に噛みつかれて怪我をしても、万事良いことに導いて くださいます。神様は天地の初めから終わりまでの一切を良いことに変えてく ださる力を持っています。今、願い叶わないで泣いたとしても、いつの日か、神 様のみ力に、慈しみに感謝する日が来ます。

今日の箇所の言葉は、信仰者に向けて「迫害を恐れるな」と勧めています。迫 害する人、襲い掛かる人、目の前の人々を恐れず、ただ神様だけを恐れよ。神様 の愛と救いの力をこそ心の支えとして、今、語るべきことを語り、なすべきこと をなして、今この時の苦しみを耐え抜きましょうというのです。

目の前にいる人たちは罪や不正を隠して偉そうにするけれども、神の目には 罪深い人々ではないか。神の尊さと救いを、愛を語り続けなさい。黙っているな。 肉体と魂、人の歩みの最初と最後を司っているのは神様。この神様だけができる ことがあるのです。

今日の箇所は、本当に恐れるべきものは何か、誰なのか。このことを正しくし ましょうと呼びかけています。日常生活の中に私たちはいろんなことを恐れま す。いろんなことが恐れの原因になります。そういう私たちに、神様を恐れまし ょうと呼びかけています。

恐れがないということは、良いことです。自分の思う通りになるし、何も気に することはなく、自由です。でも、そういう自由は、自分の都合や楽ばかり、利 益ばかりを追い求めることになります。そうなると、その人も周りの人も幸せに なれないのです。けれども、その反対に、恐れるべきものがあり、恐れるべきも のを恐れて、それで一切の恐れから解放される。こういう自由があります。神を 恐れて、その他一切は恐れない。だから、自由なのです。神様は恐れるべき方で すが、神様は私たちの味方なのです。頼りになる方です。

今週の最後の日10月31日(土曜日)は、宗教改革記念日。3年前にちょうど 500年祭でした。ドイツの神学者マルチン・ルターが宗教改革のきっかけとな る「95か条の提題」を公表した日と言われています。

16世紀当時、ヨーロッパの中世、人々は神をとても恐れ怯えていました。神 だけでなく、教会の権威を恐れていました。法皇、聖職者たちは神様の代理人。 誰を救うのかを決められる天国の鍵を持っていると言われていました。それで、 免罪符を買って、煉獄の苦しみから逃れることができると教えました。このよう に教えることができたのは、人々が神様だけでなく、教会の権威を恐れていたか らです。つまり、目の前の教会の聖職者たちを恐れていたからです。

そういう時に、ルターは、教会の聖職者ではなく、神様だけを恐れようと呼び かけました。後に『キリスト者の自由』という本を書いて世の人に訴えました。 神様ただお一人を恐れるので、その他一切を恐れることから解放され、自由にな る。すべての人を愛する神様を恐れるのですから、自分勝手は許されません。神 様の御心のとおりに、神を愛し人を愛する生き方を実践する人になろう。これが 福音なのだと呼びかけました。

今、新型コロナウイルスは恐れるべきですが、無暗に恐れるのではない、恐れ 方があると言われています。相手を知って、正しく恐れるのです。三密を避ける、 マスクをする、手洗いをするなどです。同じく、神を恐れるなら、正しく恐れま しょう。正しく尊びましょう。教会(人)が作り出した伝統ではなく、聖書のみ 言葉をこそ尊びましょう。

神様は、すべての初めからすべての終わりまでを支配しておられます。永遠の 神です。さらに、最も大きなものから最も小さなものまで、雀一匹も、頭の髪の 毛すら、すべてを心に留めておられます。そして、内容のある見どころのある者、 神様の喜ばれる者から、反対に乏しい者、見どころのない者、神様を悲しませる 者まで、すべての人を神様は心に留めておられます。

神様は、全知全能のみ力をフルに用いて、罪人を愛してくださっています。全 知全能だからこそ、私達罪人を救ってくださるのです。全知全能だからこそ、神 様は尊い御子をこの世に生まれさせ、十字架にかけ、死に打ち勝たれ、御子イエ スを復活させられたのです。詩編46編をもとに、ルターは有名な讃美歌「神は わがやぐら」を作詞しました。「神はわたしたちの避けどころ、わたしたちの砦。 苦難のとき、必ずそこにいまして助けてくださる。わたしたちは決して恐れない /地が姿を変え/山々が揺らいで海の中に移るとも、・・・万軍の主はわたした ちと共にいます。ヤコブの神はわたしたちの砦の塔。」

 
   
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