今日の聖書の言葉は、使徒パウロがテサロニケの教会の兄弟姉妹に向けて書 いた手紙の一節です。パウロは、信仰上の助言をしています。「既に眠りについ
た人たちについては、希望を持たないほかの人々のように嘆き悲しまないため に」ぜひ知っておいてほしいことがあると言っています。
テサロニケは、ギリシャの町です。ギリシャというとギリシャ哲学を思い出す 方は多いと思いますが、それは一般庶民からは遠い存在でした。哲学者たちは、 人は死ぬと肉体という牢獄から魂が解放されるとか、霊魂不滅とか言っていた のですが、それはほんの一部のエリートたちの言っていることで、一般庶民はそ んなこと全く考えていなかったようです。人は死ぬと肉体を残して消えてなく なる、と思っていたのです。死はすべての終わりであると、多くの人は思ってい ました。
こういう人々に対して、パウロは神の救いを語りました。イエス・キリストが 私たちの救いのために、十字架にかかり復活した。そこで、私たちは救われる、 神のみもとに行くのだと語りました。ですから、死は終わりではないということ を語ったのです。希望があるのです。今日の言葉は、テサロニケの人々に対して、 このことを、既にパウロから聞いている救いのことを思い出してほしいと言っ ています。
イエス・キリストが十字架にかかり、この世の人々の罪を一切解決してくださ ったので、死んだ後には、神のもとに行くことができます。すべての人が神様に 慈しまれ愛され、罪を赦されているからです。私たちがこの世に存在し、生きて きたこと、この世を歩んだことは、神様にずっと覚え続けていただけるのです。 死は、肉体以外に何も消し去ることはありません。
さらに、天には私たちの財産、神様からいただく豊かな恵みがあります。本物 の豊かさが備えられています。Ⅰペトロ 1 章3-4節「神は豊かな憐れみによ
り、わたしたちを新たに生まれさせ、死者の中からのイエス・キリストの復活に よって、生き生きとした希望を与え、また、あなたがたのために天に蓄えられて
いる、朽ちず、汚れず、しぼまない財産を受け継ぐ者としてくださいました。」 天に私たちが受け継ぐ財産、豊かな恵みがあります。天で私たちは計り知れない
ほどに豊かになるのです。この豊かさのことを、別の言い方をすれば、永遠の命 です。神様のすべての良いものに与って、いつまでも神様のもとに憩いを得るのです。
パウロは続けて、「イエスを信じて眠りについた人たちをも、イエスと一緒に 導き出してくださいます。」と言っています。死んだ人が、死から永遠の命へと
導き出されるのです。つまり、死んだ人が復活して、永遠の命に与る時が来るの です。イエス・キリストは十字架の死の後、復活しました。死を克服したのです。
それで、もう金輪際、私たちに死はありません。私たちも、復活、永遠の命にあ ずかるのです。
私たちは、神様のみもとで、イエス・キリストのもたらしてくださった永遠の 命にあずかり、憩いを得ることができるし、死は克服され復活する。いたずらに
嘆き悲しまないで、この救いを希望としようとパウロは呼びかけています。永眠 者記念礼拝に際して、このことを信じてくださいるなら、とても嬉しいです。神
様からの慰めとしていただければと思います。 私たちは死んで神のみもとに行く、復活する、永遠の命に与る。これらのこと は、どうしてなされるようになったのでしょうか。まさに、神様が一人ひとりを
愛しておられるからです。私たちは家族や愛する人と別れることはとても辛い です。しかし、そのときこそ、神様の愛を思い出してください。神様の愛がある
ことを心の支え、希望としてください。神様は先に召された方々を愛し、この世 に生きてあるよりもさらに良いことを一人一人になしてくださるのだと信じま
しょう。
ヘブライ人への手紙11章では、信仰の偉人アブラハムのことを振り返り、神 のもとに素晴らしい恵みがあることが記されています。アブラハムは、この世の
故郷よりも素晴らしいところがある、神様のもとに都があると信じ、そこに行く ことを熱望していました。そして、「はるかにそれを見て喜びの声をあげ、自分
たちが地上ではよそ者であり、仮住まいの者であることを公に言い表したので す。」つまり、この世は仮住まい。私たちに、この世にあって嬉しいこと楽しい
こともあります。私たちは、生きていくのはこの場所、この世しかないと思って いるのですが、しかし、天にある都、天にある素晴らしい恵み、神の愛を思うな
ら、この世は仮住まいでしかないというのです。それほどに、神のみもとは、す べてが行き届き、恵み豊かなのです。
神様のもとには、永遠の命があります。復活があります。神様の愛があります。 愛に溢れた神様のもとに、先だった方々がおられること、憩いを得ておられるこ とを覚えましょう。これを慰めとし、これからを歩む希望としていただけるなら 何よりの喜びです。
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