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今日の箇所では、神様が預言者を立てるという約束をなさっています。20 節 「わたしの命じていないことを、勝手にわたしの名によって語り、あるいは、他
の神々の名によって語るならば、その預言者は死なねばならない。」と厳しいこ とを言われます。神学者カール・バルトは、「神は神である。聖なる神である。
人間が神の言葉を語りうるのか。」ここから思索を深めました。
旧約の神は、聖なる神であり、近づきがたい、人間とは隔絶した存在です。出 エジプト記３３章で、指導者モーセが十戒を授かり、シナイ山から下るとモーセ
の顔が光を放っていたといいます。その輝きは聖なる神の栄光の光が移ったも のです。神様は、燦然と栄光に輝き、光に満ち、汚れがない。
神様は預言者を遣わされます。聖なる神の考えは、この世の垢でいっぱいの、 俗なる、自分中心の罪ある人間には思い至らないことばかりでしょう。神のみ心
が知られるため、私たちが知るためには、語られなければなりません。神のみ心 を語る人、預言者が必要です。神のみ心を知り、私たちが神のみ心に適って歩み、
救われるためです。
旧約聖書には、預言者と呼ばれる人が幾人も現れました。神の言葉を語りまし たが、活動している時はまだ人々から認められませんでした。人々には目の前の
人が本当に預言者なのか、本当の神の御心を語っているのか、わからなかったの です。誰が本物の預言者なのか、本当の神のみ心を語っているのか、区別しなけ
ればなりません。今日の箇所には、その区別の仕方が述べられています。それは、 語った言葉が実現したら、その人は本物の預言者。実現しなかったら、偽物です。
けれども、これでは実際には区別できないのではないか。これは、意味のない区 別の仕方だと思います。
私たちは煙に巻かれたように思うのですが、ユダヤ人にはこれで良かったと いうことです。この箇所から私たちが聞くべきことは、神様が預言者を立てると
約束されたこと。そして、この意味をなさない区別の仕方のもとになっているユ ダヤ人のものの考え方。つまり、「神の言葉は語られると出来事になる」という
ことが信じられているということです。旧約聖書のヘブライ語で「言葉」と「出 来事」とが、同じ語「ダーバール」です。創世記の初めに神は、天と地を創造さ
れました。その時、神は言葉を発せられました。「光あれ」すると光があった。 神の言葉によって、天と地は創られました。
似たようなことでは、日本の神道の祝詞（のりと）。これは、「言霊」（ことだ ま）、言葉に内在する霊力というものが信じられ、言葉が発せられるとその内容
が実現されると信じられているのです。
ヨハネ福音書 1 章 1―４節には、イエス・キリストが「言（ことば）」といわ れています。「初めに言があった。言は神と共にあった。・・・万物は言によって
成った。・・・言の内に命があった。命は人間を照らす光であった。」
もうすぐクリスマス。神の救いはキリストによって、言葉によってこの世に実 現したのです。預言者を立てられた神は、御子イエスをこの世に送られたのです。
イエスがお生まれになる前は、イエスの十字架の救いをまだ知らない旧約時 代です。その時、聖なる神様が人間と関わってくださいました。この聖なる神が、
御子イエスを十字架にかけました。聖なる神の目にかなわない人、罪人の代表と してです。このことがあったので、今、聖なる神は、私たちの罪を赦してくださ
る愛に満ちた神様だと知られています。
神様は、昔も今もずっと聖なる方です。しかし、今は聖であるだけではないで す。私たちを愛し救うために御子を与え、私たちに近づいてくださる神様なので
す。たとえば、私たち人間とそっくりな神様よりも、人間には近づきがたい、常 に正しく聖なる神様が共にいてくださる。このことの方が心強いと思いません
か。聖なる神が、私たちと共にいます。これは、聖なる神にとってあり得ないこ と、神の奇跡です。
教皇フランシスコは、教皇庁立生命アカデミー総会に出席され、教皇としての 訓示をされました。「人の命に区別や違いはない。貧しく生まれた命もまた聖な
るものだ」と言われました。「命は聖なるもの」です。なぜ、人を殺してはいけ ないのか。それは、命は人間が左右することを許されていないもの、聖なるもの
だからです。聖なる神様が与えたものだからです。そして、聖なる命を守るため には、神様が聖なる方だと知っていることが必要です。知らされていることが必
要です。それで、旧約の時代に、預言者を通して神様は、ご自身のことや救いに ついて語られたのです。
語られた言葉が実現する。神が働かれます。それで、御心に適って生きようと する人を導き助けてくださいます。それで、神の言葉を聞いてイエスを信じる人
は救われます。神の言葉は実現するからです。神の言葉イエスによって、神の愛 は私たちにもたらされています。この世で命を燃やして生きた、私たちの人生、
その命は、聖なる神様がいつまでも永遠に大切にしてくださいます。
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