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イエスは、洗礼者ヨハネから洗礼を受けた。イエスは、洗礼を受けることを正 しいこと、神のみ心と確信していた。洗礼を受けたイエスに、聖霊が降った。そ
して、「これはわたしの愛する子。わたしの心に適う者。」と神は宣言した。イエ スがこれから救い主として働くのは神が認めたことであり、神が認めた人が働
くのだ。神が承認した人を、神様が派遣する。
洗礼者ヨハネの働きは、多くの弟子を得て、大きな集団となって、大きな勢い となっていた。聖書学者は、「洗礼運動」と呼ぶ。この世の楽しみを避け、真剣
に罪を悔い、神に救いを求める人々がユダヤの国の中に大勢現れた。黙示的な時 代だったと言われる。ヨハネの運動は、一時代を画すほどの大きな運動だった。
律法を守ればよいとあぐらをかいていたユダヤの人々の中から、心の在り方を 問い詰め、罪を悔いる人々が現れたのだ。イエスはこの人々におざなりにできな
いものを見ていたので、自分も同じように洗礼を受けようと思われたのだ。
イエスは神の子だから、罪はない。それなのに、罪がなくても罪を悔いる洗礼 を受ける。罪ある者のようになる。ここに、神のみ心を見出したのだ。つまり、
世の人々のためにへりくだり、世の人々の罪を背負うことがご自身の使命だと、 神から課せられた役割だと確信したのだ。それで、洗礼を受けたのだ。そして、
このイエスを神は認められた。神の派遣するものと喜ばれた。イエスが神のみ心 をしっかりと現すことができるように、神の霊、神の力を降し、イエスを励まし
守られた。
イエスはヨハネについてこう言っている。１１：１１「はっきり言っておく。 およそ女から生まれた者のうち、洗礼者ヨハネより偉大な者は現れなかった。し
かし、天の国で最も小さな者でも、彼よりは偉大である。」イエスはヨハネ、そ の運動に並々ならない偉大なものを見ていた。そこに、世の人の真実な思い、魂
の奥底からの叫びを聞かれたのだ。だから、その一人になりたいと願われ、洗礼 を受けられたのだ。イエスの世の人に向ける温かい思い、熱い思いを思わされる。
そして、世の人の魂の叫びを見過ごさないイエスという方は、もともとこういう ことに目を向ける心を備えておられたのだ。私たちはどこに目を向け、何に心を
向けているだろうか。生きる上で、一番大切なことは何だろうか。
イエスは、罪を悔いる気持ちをなおざりになさらない。詩編 51 編 19 節「神 の求めるいけにえは打ち砕かれた霊。打ち砕かれ悔いる心を／神よ、あなたは侮
られません。」この真実な思いに応えてくださる。罪を悔いる人に、神の慈しみ を現してくださる。そのためのイエスの洗礼なのだ。
洗礼はユダヤから受け継いだものではない。ユダヤ教の中に水を用いること を探せば、罪や汚れを清めるためのエッセネ派の淋浴、またはユダヤ人でない人
がユダヤ教徒になる儀式があるが、伝統的なユダヤの習慣にはないことだった し、ヨハネの発明と言ってもよい。そして、その洗礼をイエスは重要なものとみ
なされた。人々に洗礼を授けて、死と復活、神のみ心を表す方法、信仰者を生み 出す方法とされた。イエスは今までにないやり方を見て、そこに大きな意義を見
出されたのだ。今までにないことを始めるということは、大きな決心が必要だ。 それほどに、イエスは世の人の真実な思いを受け止めようとされたのだ。
洗礼という儀式に、世の人の魂の叫び、真実を受け止めるイエスの大きな慈し みが込められていることを覚えたい。洗礼を受けて、私たちにも聖霊が降ってい
る。イエスの慈しみによって、十字架によって、神のみもとへの道は備えられて いる。神のみこころを世の人に示す私たちの働きは、イエスと共になされる働き
であり、神の霊によって導かれ励まされる。
今までなされていないことを採り入れるとは、当たるか外れるか、賭けではな かっただろうか。哲学者のパスカルは、「神の存在を決めることは賭けだ」と言
った。信仰は賭けだという。信仰生活は、神のみ心を探す、答えのない賭けの連 続かもしれない。洗礼を受ける為にヨハネのもとに現れるまでに、イエスの胸の
内に熱い思いが渦巻き、どれほどの深い祈りがあったかと想像する。イエスの賭 けに、神は承認をくだし、神のみ心を見続けられるように聖霊を降された。
今、世界中がコロナ感染に苦しんでいる。予測不能の状況の中、決断を迫られ る人たちがいる。いつの世にも私達の判断が神の前に試されている。私達の歩み
が神と共にあり、聖霊によって良き判断ができるよう、道が示されるよう祈る。
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