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ユダヤの律法学者たちは、律法を解釈し、それが正しいこと、神の御心である ことを証明することを求められた。川の水が血に変わる、川の水が逆流する。イ
ナゴマメの木が勝手に５００m 移動する。こういう普通では起きないような奇 跡や異常な出来事、「しるし」を引き越すことができる力を持つことをもって、
自分の正しさを証明した。
ここでイエスが、その「しるし」を求められた。するとイエスは、そのような 異常な出来事に心奪われていることは正しい信じ方、神様との正しい関わり方
ではないと言われた。３９節「よこしま」とは、ねじ曲がり歪んだ関わりをして いることを言う。イエスが示した「しるし」は、ヨナのしるしと、ソロモン王の
知恵を聞くために南の国からやってきた女王のしるしだった。
預言者ヨナは、ニネベの町に行く神の言葉を語った。預言者が神の言葉を語る という、いつもなされていることをした。それが「しるし」だという。ヨナの語
る言葉に、ヨナが語るという行動に、それを聞いた人々が悔い改めたということ に、神のみ心を見ることができるというのだ。
そして、ソロモン王は知恵に満ちており、南の国の女王はそれを聞きにやって きた。旧約聖書で「知恵」というのは、信仰深い人に神様が授けるものだった。
生活の中、人生において、どのように振る舞いべきか、物事の賢い処置の仕方を 教えるものだった。ソロモンの語る知恵は、神の授けたものであり、女王はその
神のみ心を聞きたかった。神を尊ぶ気持ちがあったのだ。これは、当時の人々に は、特別なこととは思われなかっただろう。今のことに置き換えれば、テレビの
ニュースでアナウンサーが「今、南の国の女王が我が国を訪問しています。ソロ モン王と会談し、その知恵の豊かさに驚いたそうです。女王は TV 局のインタビ
ューに応え、国のトップ同士が親交を深め、とても有意義な外交がなされたと語 りました。」とでも報じられるようなことだろう。
これは国同士の外交の世界、政治の世界のことと思うかもしれないが、そのこ とがまさに私たちの生きている現実で起きているのであり、イエスは、そこに神
のみ心が現わされていると言われているのだ。信仰の世界という特別な世界が あるのではない。信仰や礼拝と日々の生活とが区別されるべきではない。決して
特別なことや異常なことではなく、いつも通りの、何のこともない平凡なことに 神のしるしがある、神のみ心が現わされている。日々の平凡なこと、普通になさ
れていることに神のみ心を見る。それが信仰だというのだ。今、あなたの横に預2 言者ヨナがいませんか。あなたの国に南の国から女王が来ていませんか、と言う
かのようだ。
そして、預言者ヨナ、南の国の女王以上に神の御心を現す者、ヨナにまさり女 王にまさる者がこのイエスだと言われた。十字架と復活の主イエスに、神のみ心、
救いのしるしがある。イエスをよく見よく聞いてほしいというのだ。
イエスの十字架と復活に示された救い、神の慈しみと命を尊ぶ思いをもって 自分の周りで起こっていることに神のみ心を見出すならば、それは神の喜ばれ
ることであり、神の祝福と祈りを豊かに受けることになる。「わたしの弟子だと いう理由で、この小さな者の一人に、冷たい水一杯でも飲ませてくれる人は、必
ずその報いを受ける。」（マタイ１０：４２）
今日は十字架と復活の主イエスが魂を救ってくださる、天国に招いてくださ るという話よりも、今、私たちが生きている所で、この広い世界の動きの中で、
信仰をもって生きていくことへの招きだ。信仰に基づく生き方、信仰の倫理とも いうようなことだ。
申命記は「主があなたに求めておられることは何か。ただ、あなたの神、主を 畏れてそのすべての道に従って歩み、主を愛し、心を尽くし、魂を尽くしてあな
たの神、主に仕え、わたしが今日あなたに命じる主の戒めと掟を守って、あなた が幸いを得ることではないか。」（１０：１２－１３）と言い、「見よ、わたしは
今日、命と幸い、死と災いをあなたの前に置く。わたしが今日命じるとおり、あ なたの神、主を愛し、その道に従って歩み、その戒めと掟と法を守るならば、あ
なたは命を得、かつ増える。」（３０：１５－１６）と言う。
「命」を得よと、神は私たちを救いに招く。「命を得る」とは、神のみ心を尊 び、それで神に喜ばれ、祝福されて生きること、人生が満たされることを言う。
旧約聖書は「戒め、掟、法」というが、これは私たちが日ごとに心がけるべきこ と、を言う。一日一日が、その積み重ねが「命」につながっているのだ。平凡な
一日一日の中で、日常の中で、神のみ心を尊び生きるが勧められている。
当時のユダヤの人々は、イエスという名の犯罪人が十字架にかけられたこと を、どのように見たのだろうか。いつものように犯罪人が処刑されたのであり、
決して異常なこととは思わなかったのだろう。しかし、神のみ心は、このイエス に、十字架と復活の主「イエスというしるし」に表されている。この方をよく見
よく聞くことが神のみ心を知ることへと導くのだ。
イエスの十字架、復活が私たちにもたらす恵みや力を心に刻み、それに生かさ れ促されて、私たちは神のみ心に生き、「命を得る」ことができる。
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