|
聖霊降臨の日、聖霊に満たされた人々が世界各地の言葉で語り出しました。さ らに、イエスの弟子ペトロが語り出しました。聖霊に満たされた人々が語り出し
ています。聖霊は一人一人の内側に働きかけ、言葉を語り出させます。
ペトロは、旧約聖書の言葉を引用して、神様が聖霊をすべての人に降り注ぐ、 まさに聖霊降臨の出来事が起こることを予告していたと語りました。さらに、イ
エスこそ神から遣わされた人、救い主であると語ります。福音書は、弟子たちが イエスと共にいた時には、弟子たちはまだイエスのことを十分に理解していな
かったとしています。けれど、聖霊が降り注ぎ、イエスが救い主だと確信を持っ て語り出したのです。
ですから、イエスの弟子たちが、名実ともに、本物の弟子になった記念すべき 日です。イエスのことを見捨て、イエスのことなど知らないと偽った、あの裏切
り者ペトロが、イエスが救い主だと語り出したのです。弟子たちは、イエスの十 字架を見て、よみがえりを見て、聖霊に満たされて、今、イエスの弟子となった
のです。イエスは、１２人の弟子たちを伴って弟子たちと一緒に活動されました が、それはこの日を迎えるためでした。この時のために、それまでのイエスと共
に歩む日々、働く日々があったのです。
イエスの弟子のペトロ、イエスを裏切る不肖の弟子ペトロが、その名の通りイ エスに対する岩のように堅い確信を抱き、イエスに成り代わって神の救いを語
る人になったのです。イエスの本物の弟子の誕生です。聖霊によってペトロは弟 子となって新たに生まれたのです。聖霊がイエスの弟子を生み出しました。
言葉を話すことができるということ、これは他の動物にはできない、人間だけ ができること、人間の大きな特徴だと思います。ある人類学者は、私たち人類の
祖先は、声を発する喉の構造がだんだん複雑になり、言葉を話せるようになった。 言葉によって互いに意思疎通する手段を手に入れ、それは互いに身を守る手段
でもあったので、弱肉強食のこの世界の中にも生き延びられたのだそうです。人 間は、言葉を話す生き物なのです。
お子さんをお育てになったお父さんお母さんは、幼い子どもさんが片言でも 話し出した時のことを、覚えておられるのではないでしょうか。それまでは言葉
を話せなかったのに、目の前の人に何かを自分から言い出した時。子どもが言葉を話し出す時、それはそれまでとは違う関わり方が始まる時ではなかったでし
ょうか。
私のささやかな思い出ですが、上の娘がまだ幼い頃、言葉が遅かったのです。 大人が話しかけても、声を出さないでうなずいたりするくらいで、ほとんど言葉
を発しませんでした。そんな子でしたので、初めて話をしてくれた時のことはは っきり覚えています。庭でウサギを飼っていて、その仕草がかわいいんだと、娘
の方から私の前に近寄ってきて一生懸命に話してくれた。私に話したい、そうい う胸の中の思いがいっぱい溢れ出していました。一生懸命に話す姿を見ている
と、ウサギがかわいいということを心の底から感動しているんだと思いました。 だから、伝えたかったのです。人が言葉を発するということは、それぞれの内面、
心を持つということがあってのことだと感じさせられました。話したい伝えた いことがあり、話したいという意欲を持つ。人の内側に思いがあるから、それで
言葉は発せられる、人は話し出すのです。
あの日、ペトロは立ち上がりました。語り出しました。ペトロは確信していま す。イエスこそ救い主です。ペトロは言いました。「イスラエルの人たち、これ
から話すことを聞いてください」（２２節）。聖霊は、ペトロに確信を与え、語る べき言葉と、語らねばならないという熱意を与えました。イエスとペトロが出会
ってから、そのペトロが語り出すまでに、どれだけの時間がかかったことでしょ うか。イエスは世を去りましたが、聖霊は降り注ぎ、神の力がペトロを力づけま
した。ペトロは、イエスのために命を差し出して殉教の死を遂げるまで、イエス を信じ続け、イエスの救いを語り続け、イエスの弟子であり続けました。
私たちは、聖霊降臨の日の出来事に、何を聞くべきでしょうか。聖霊降臨の日 に、弟子たちが聖霊が降り注ぐのを待っていたことを心に留めましょう。誰も、
聖霊が降り注ぐ時がいつなのか知りませんでした。待ち続けていました。そのよ うに、私たちも、私たちに聖霊が働きかけるその時を知らないままに、待ち続け
たいと思います。信じて待つ人に、人知れず、神様の導き、計らいがなされてい ます。聖霊が降り注いで、ペトロが語り出しました。それは、ペトロの熱意によ
ることですが、それにも増して神様が語らせているのです。
私たちにも聖霊が働きます。神の力によって助けていただけるのです。イエス を信じる心を豊かに与えてくださいます。私たちをイエスの弟子にしてくださ います。一人一人にふさわしい神様のための働きをさせていただけるのです。こ のことを信じて参りましょう。
|
