日本キリスト教団

2021.07.11 説教ダイジェスト
礼拝説教要約 「1 日にて成らず」
マタイによる福音書 7 章 24-29 節
 イエスは、マタイ福音書5-8章にあるように、ある山の上でご自分の教えを語られた。 「山上の説教」と呼ばれる。今日の御言葉は、山上の説教の最後のまとめの言葉だ。 24 節「御言葉を聞いて行う人は、岩の上に家を建てた賢い人に似ている」。山上の説 教で語られたイエスの教えを聞き、実行する人は、岩の上に家を建てる人である。何が 起きても、土台がしっかりしているので倒れない。土台がしっかりしないなら、人生のあ れこれに振り回され、しっかりとした人生を歩めない。どこに建てるのか。岩の上に建て るかそうでないか。イエスの御言葉を聞いて行おうと勧めている。

 山上の説教の初めの言葉は、「あなたがたは地の塩である」「あなたがたは世の光で ある」とある。御言葉を聞くだけでなく行う人は、自分の救いを得るだけでなく、この世 に神の御心をもたらす。人々に生きる喜びや生きがいをもたらし、神の愛で暗いこの世 を明るくする。

  そして、山上の説教で教えてくださったことは様々あるが、まとめれば、神の愛に倣 い、隣人を愛し、世に正義をなし、平和を求めることだと思う。特に、「敵を愛しなさい」 と言われて、「父は悪人にも善人にも太陽を昇らせ、正しい者にも正しくない者にも雨 を降らせてくださるからである。」という言葉に全てが凝縮されていると思う。神は全ての 人を尊び愛し、命を守り養うことは平等なのだ。山上の説教は、十字架の救い、神の愛 を前提としつつ、神に愛されている人の生き方はどういう生き方なのか、心構えを示し ている。

 20 世紀の後半から西欧では、キリスト教信者が大きく減っている。英国民の半数が無 宗教と言い、ドイツでは移民が多く、教会が売り出されモスクになっているという。しか し、その一方で、アメリカ合衆国の調査では、国民の80%がキリスト教信者を自認して いる。しかし、教会に毎週行くかどうかは別なのだが。

  アメリカ特有の信仰のあり方、つまり、信仰によって神に報いを求めるという。1 万人 以上の会員を持ち、野球場のような礼拝堂を持つメガ・チャーチが、各地に1300以上 ある。共和党の大統領のおかかえ牧師、福音派のことだ。9・11 に際してイスラムは悪 魔だと聖戦を呼びかけた。方や、昔からの教会は、低調だという。大学のチャペルの主 任牧師ウイリアム、ウィリモンは、著書『教会を必要としない人々への福音』『教会を通り 過ぎていく人々への福音』で、教会に根付かない世俗的な人たちに福音を語ることを 話題にした。今日の教会は、共通の伝統を持たない人々(キリスト教の素地が薄く、聖 書に親しんでいない)に説教をすることを余儀なくされている。

 世の人々に「罪」という言葉はピンとくるのかどうか。教会は、罪に苦しみ、問題を抱 えた困った人たちが行く所だという考えが多くの人の思いかもしれない。けれど、聖書 は、それだけでなく、人間とは何かということ、一人の人間の生きる道を指し示している。 神に愛されている私ならば、どう生きるべきなのかを語っている。この世のいろんなこと に戸惑い悩む時、道を選ぶ時、イエスの教え、神の愛がその人の心に馴染んでいれ ば、その思いのままに良い道を選んでいくだろうと期待する。

  今日の御言葉は、家を建てるなら、何の上に建てるのか、岩の上に建てよう、御言 葉に倣うような生き方をしようと勧めている。ルカ6章では、地面を深く掘って柱を岩の 上に達するようにすべきというが、マタイ福音書は、そうではない。岩の上に直に建てる ことを言っている。だから、岩を穿つ水滴のように、歳月をかけて、苦労して建てるとい うことだ。「ローマは1日にして成らず」と思って根気強くなせば、びくともしないしっかり した家が建つだろう。

  砂の上の家は、川が氾濫して流されてしまうというが、これはノアの洪水、終末の時 に備えていようという勧めだと言われている。一体いつ完成するのか気の遠くなる大事 業だと、一生かけてのこととわきまえていようということだろうか。しかし、すべてのことが 「1 日にして成らず」と思って努力すれば良くて、時間をかければなんとかなるのだろう か。魂の救いは違う。努力や時間ではなく、神の御子が十字架にかかるという出来事 の新しさによるのだ。十字架の救い、愛を感謝して、赦されて、それを土台にして、励 まされて「1 日にしてならず」と根気強く繰り返しやり直すのだ。

 永遠の都と呼ばれるローマ、歴史の重さを感じさせる遺跡や建物、多くの人が感動 を受ける所だ。「ローマは1日にして成らず」。もともと湿地帯、人が住むには条件の悪 い所だった。紀元前8世紀頃から人が住み始め、排水路を巡らせ、城壁を作り町を囲 み、競技場、劇場などを建て、多くの教会、歴史的建造物が建てられていく。今では、 たくさんの歴史的遺産がある。人間の英知、優れた技術、並々ならない熱意が、素晴 らしい都、永遠の都を作った。「1 日にして成らず」とは、優れたものはたくさんの歳月 や努力が積み重ねられて作られるのだから、根気強く努力するなら素晴らしいもの、確 かなことが得られるということだ。

  「1 日にして成らず」というが、ローマは完成したのだろうか。完成への途上にあるの か。世の終わりの救いの日を待っているのだ。「兄弟たち、わたし自身は既に捕らえた とは思っていません。なすべきことはただ一つ、後ろのものを忘れ、前のものに全身を 向けつつ、神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目 標を目指してひたすら走ることです。」(フィリピ3:13-14)


   
 愛隣こども園
宮城県仙台市青葉区五橋1-6-15
〒980-0022 ℡:022-222-3242