神は人を創造され、独りでいるのは良くないとし、野の獣や空の鳥を造り、人 のところへ持ってくるが、人にふさわしい「助ける者」は見いだせなかった。そ
して、神は人の肋骨から女を創造した。すると、それは人にふさわしい「助ける 者」であった。人は他の生き物とは違い、人としての尊さを持っていることを言
い表している。
人としての尊さを表現する言葉として、法律用語なら「人権」、哲学用語なら 「尊厳」や「人格」がある。聖書は人としての尊さを、「霊的な存在」だと言い
表している。2章7節には、神は人を造り、命の息、神の霊を吹込まれたという。 それで、人は霊を宿す者、神とつながり、霊的な感受性を持ち、心の奥底の魂で
生きるものとなった。
人は人と共鳴し合い、霊的な存在は霊的に共鳴し合い、男と女はふさわしい助 け手として夫婦となる。霊的な感受性は、言葉では言い表すことのできない深み
を感じ合い、神の御心を感じ取り、人同士が互いを深く理解し合う。
宮沢賢治は、動物を擬人化して童話を書いた。『よだかの星』は、強いワシに いじめられる、醜い“よだか”という名の鳥が、辛い境遇を思い詰め、魂の悲鳴を
響かせながら、ついに天高くを目指して飛翔する。“よだか”は鳥なので、そもそ も人の思いはないはずだが、だからこそ、“よだか”が飛翔する姿、その叫び声に、
私たち人間の魂の叫びをより一層強く響かせる。読む者は、霊的な思いを掻き立 てられる。
イエスは羊に託して、一人のことを思う私達の思いの深さを問う。99匹をそ の場に置いて1匹を探す羊飼いの思いとは、その魂の震えはいかばかりか。見失
った羊がどんなに困っているか、我が子のこととして想像してみたい。私達の魂 は震える。イエスは、私達の魂の震え、霊的な悲鳴を聞いていてくださる。私達
のうめきに耳を傾けてくださっている。
震災で家族を失った方々が、魂を震わせている。グリーフケアがなされている。 魂の悲鳴を聞くために、教会の牧師や僧侶の方々が活動しておられる。学校で生
徒が被害者になる痛ましい事件が起こる。カウンセリングが必要だ。コロナ感染 の中で、多くの人が悲しみを堪えている。魂の震えが少しでも落ち着いて、良い
クリスマスを迎えてほしい。
不治の病になり、最期を看取るホスピスで過ごす方々がおられる。自分の人生 の意味を問う思い、罪の赦しを請う思いを解決する場所だ。人生の霊的な問いを、 最後に解きほぐしていく。ホスピスで聖書の言葉が読まれる意味は大きいと思う。
|