日本キリスト教団

2022.05.01 説教ダイジェスト
礼拝説教要約
「神に養われる」
エゼキエル書34章11-16節
  預言者エゼキエルが神の言葉を語った時代、ユダヤは、強大な力を誇ったバ ビロン帝国と戦争をして敗北します。その敗北のかなり前からバビロン帝国の 軍隊は、そのとてつもない強さを見せつけていました。エルサレム陥落の20 年前に、ユダヤの人々、エルサレムの人々、特にエリート階級の人々を捕虜と してバビロン帝国の領土まで連行しました。バビロン捕囚です。最初の捕囚は 紀元前605年、その10年後にもう一度。ついにエルサレムが陥落した58 7年に最後の捕囚がなされ、3千人もの大勢の人々が敵国バビロンの国に連れ ていかれました。3回も捕囚を経験しました。このことを今日の聖書の言葉で は、12節で「塵尻になっている」「散らされた群れ」と言っています。

  聖書では、王様とその民との関わりを、牧者(羊飼い)と羊の群れという関 わりとして描いています。今日のエゼキエルや他の預言者の語ることによれば、 ユダヤの国が滅びたのは、ユダヤの人々(神の民)が神様のことを忘れていた から、特にユダヤの国の牧者(指導者)が神を忘れ、民を省みることなく、自 分の利益ばかりを追求していたからです。

  12節「雲と密雲の日」、それはエルサレムが破壊され、ユダヤの国が亡ぶ ことが決定的になった日のことです。ユダヤの人々は、無理矢理自分の町から 引きはがされ、捕虜となってバビロンに連行されていく。また、バビロンに行 くことを良しとしない人たちは、バビロンとは反対の方向、エジプトを目指し て逃げ出して行く、散らされていく。ユダヤの国の指導者の不信仰や自己中心 のせいで国が滅び、人々を各地に散らしてしまうことになりました。

   しかし、今、各地に散らされた人々を神様が探し集め、再びユダヤの地で神 様が養うと宣言しています。指導者たちの過ちが国を滅ぼしましたが、今、神 様ご自身が動き出され、目を覆うような悲惨なユダヤの国のありさまに神様自 ら介入されて、神様自らが民を養うと言われるのです。10節「牧者たちに立 ち向かい」「彼らに群れを飼うことをやめさせ」、11節「わたしは自ら自分の 群れを探し出し、彼らの世話をする 」と言われます。

  「養う」とは、どういうことでしょうか。壊れたもの、失ったものを元通り に取り戻すだけではありません。16節「わたしは失われたものを尋ね求め、 追われたものを連れ戻し、傷ついたものを包み、弱ったものを強くする。」と 言うのです。民の一人ひとりが、羊たちが受けるべき神様からの心のこもった 温かい計らいを受けること、神様の救いや恵み、平和を与えられること。一人 ひとりが生きていることを喜んで生きられるようにしてくださることです。牧 者の愛は、神の愛は、最も弱くされている人へと向けられます。

  このエゼキエルの語ることが、新約聖書に救い主イエス様によって成就した と記されています。真の羊飼いであるイエス様は、弱い人、打ちひしがれてい る人のもとに近づかれ、豊かに神の慈しみと命と力を与えてくださいました。 疲れていた人々が元気になり、そして生きる希望を与えられました。神様の養 い、イエス様の養いは、心に勇気を与え、魂に希望を与えます。今生きている ことの喜びに満たされます。神の慈しみを受け、守り導かれ、そして、死から よみがえられた主のよみがえりの命に満たされるのです。すべてが終わりだと 思う時に、新しい命がある。独りぼっちだと思う時に、イエス様が共にいてく ださる。私たちには、人生の苦境にも、確かな拠り所があります。イエス様が 私たちを本当に養ってくださる方です。
  
  今日の聖書の言葉に、ユダヤの国の人々が各地に「散らされている」と言わ れます。ウクライナの人々が、ロシアの攻撃を避け安全な場所を求めて隣の国 に避難しています。昨日の新聞では、500万人が国外に避難しているそうで す。ロシアの指導者の慢心のせいでが人々が散らされていく。指導者の心がけ 一つが、とても大きな事態を招くことを見せつけられています。ミャンマーで は、国民を顧みない指導者と軍隊が国土を荒廃させ、60万人が国外に避難し ているそうです。

 神様は、エゼキエルに語らせ始めた当初は、ユダヤの人々の不信仰を厳しく 問い詰めました。しかし、一旦ユダヤの国が亡びることが明らかになるや、誤 れる指導者を叱責し続けつつ、同時に弱い人々に深い慈しみを注ぎます。強い 人には正義を、弱い人には慈しみを。これがこの世界を平和に導きます。

   
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