ソロモン王は、ユダヤの歴史の中で、最も国を繁栄させた王様です。一番広 い領土を手に入れました。王様の権威や支配が国中に行き渡り、混乱すること
なく秩序を保っていたようです。経済的にも発展し、繁栄を極めていました。
ソロモンは、知恵が豊かであるということで有名でした。列王記上3章では、 ソロモンに神様が「知恵」を授けたことが記されています。聖書は、「知恵」
によって、ソロモンは一番の繁栄を手に入れたのだと言うのです。
旧約聖書で言う「知恵」というのは、簡潔に言うと、様々な局面を、人と人 との間をできるだけ問題なくこなしていくための問題解決能力のことです。た
だの理屈ではなく、地に足をつけた、実際に役に立つ思考力、判断力です。
知恵は、誰でも授かるものではなく、神様に従う人に授けられます。箴言1 章7節に「主を畏れることは知恵の初め」とあるのです。箴言には、神を畏れ
る人に知恵が授けられ、その人は平和に生きることができるということが繰り 返し記されています。
そして、箴言では知恵のことを、まるで一人の人のことのように女性の代名 詞(彼女)で呼んでいるのです。さらには、知恵は、神様が天地を創造された
時、その業を目撃していたと言われています。知恵が、天地の最初からこの世 にあり、まるで神様のようにこの世界を造ったかのように書かれています。こ
ういうことから、知恵とは、神の創造されたこの世界の秩序に調和すること、 調和するように計らうように導くことだとされていました。一つひとつの知恵
(判断)が、この世界を成り立たせている秩序と一致しているから、争いや混 乱がなくなり、平和をもたらし、繁栄をもたらすと言うのです。
知恵が豊かだと噂されるソロモンのもとに、南の国シェバの女王が訪れまし た。シェバとは、今、イエメンという国のある辺りにあった国です。シェバの
女王は、ソロモンの知恵の豊かさによってユダヤの国は豊かなのだと言い、知 恵を授けた神様がユダヤの国を豊かにしていると言って讃えました。
詩編の1編「1 いかに幸いなことか/神に逆らう者の計らいに従って歩まず /罪ある者の道にとどまらず/傲慢な者と共に座らず 2 主の教えを愛し/そ
の教えを昼も夜も口ずさむ人。 3 その人は流れのほとりに植えられた木。とき が巡り来れば実を結び/葉もしおれることがない。その人のすることはすべて、
繁栄をもたらす。」
これが、旧約聖書の典型的な信仰です。神様に向ける思いは、とても真っ直 ぐです。ソロモンの場合は、神に従う信仰によって知恵を授けられ、ユダヤの
国は繁栄したというのです。シェバの女王は、ソロモンの知恵の豊かさや国の 豊かさを神様のお陰だと讃えました。神様に感謝したいことは、心の底から精
一杯感謝すべきです。
しかし、物事は、単純ではありません。振り返れば、知恵というものを尊ぶ ことは、神に従う正しい人は知恵を授かり、知恵はその人に繁栄をもたらすと
いうことです。まとめて言うと、正しい人は繁栄するというのです。しかし、 それは、いつも誰にとってもそうなのでしょうか。神に従って正しい人でも苦
しみにあうこともあります。物事がうまくいかないこともあります。知恵とい うものを神様からの賜物として尊重するとしても、殊更に知恵を尊ぶことは、
現実を見誤ることにならないでしょうか。
新約聖書では、救い主イエス様が神様からの知恵であると言われています。 Ⅰコリント 1:30「 神によってあなたがたはキリスト・イエスに結ばれ、このキ
リストは、わたしたちにとって神の知恵となり、義と聖と贖いとなられたので す。」十字架にかかり復活したキリストに、神の知恵が示されています。 私たちはイエス様こそ神の知恵と信じ、聖書に記されているイエス様のなさ
ったこと、話されたことに学んでいきましょう。イエス様は、神の御子、正し い人なのに十字架にかけられ、とても苦しみました。けれども、それで終わり
ではなかったのです。神は苦しむ人を復活させられました。この正しい人であ るイエスの十字架の苦しみがあればこそ、神の愛がすべての人に向けられるよ
うになりました。すべての人に救いと平和をもたらす「へりくだる愛」こそ、 神様からの何よりの知恵だと示されます。
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