まず九節と十節とに注意するを要する。邦譯聖書において見るに、左のごとくある。

　愛は僞ることなかれ。惡は憎み、善は親しみ、兄弟の愛をもて互いに愛し、禮儀をもて相譲りとありて、行文すこぶる簡潔である。パウロはロマ書を論文としてしたためないで、書簡としてしたためたのである。勢い言葉は簡潔ならざるを得ない。かつ�ﾍ義の説明にかなりの字數を用いたる後であるから、終わりを急ぎしと見え、用語はあだかも電文のごとく簡潔である。しかし短き語の中に深刻かつ高遠なる眞理が含まれてゐる。注意深く一語一語を研究する時は、少なからず�ﾍえられるのである。

　「愛は僞ることなかれ」とある一句は、英譯聖書は五字を用いてゐるけれども、ギリシャ原文はわずかに二字より成つてゐる。すなわち「愛」という字と「僞りなし」という字より成つてゐるのである。從つて「愛は僞りなし」（僞りなきものなり）とも解することができる。しかし「愛に僞りあるなかれ」との誡めと解するのが正しいであろう。僞りあるなかれの原語は、「僞善あるなかれ」の意である。僞善（英語 hypocricy）は假面を意味する語である。そして假面とは、元來演劇より起こりし語である。わが國においても、いずれの國においても、最初の演劇は、俳優が假面をかむりて舞臺に演ぜしものである。ゆえに「愛に僞善あるなかれ」は、愛を俳優的に演劇的にするなかれの意である。人は心に悲話をいだいていても、外に愛を装うことができる。この世においておこなわれる愛というもののごときはおおむねこの類である。すなわち愛の假面を面（おもて）にかけただけである。人生における愛の交換は多くは假面劇である。不信者はもちろんしかり。信者の中にさえ、これがはなはだ多いのである。われらはこの弊におちいらぬように心せねばならぬ。假面の愛をもつて人に對せぬよう、注意せねばならぬ。

　これ愛に關する一般的注意である。これより、さらに細密なる注意を述べるのである。まず一般的のことを述べ、次に細密にわたつて述べ、兩々相待つて了解を助くるが、パウロ式叙述法である。「惡は憎み」という。まずこの事を勧めしは注意すべきである。愛の�ﾍえの細則を説かんとして、第一に憎惡（にくみ）を説くは、人の意表に出づることである。愛といえば全然愛にして、その中に憎の一部分なりとも含まるべきでないと、普通の人は考える。しかしながら眞の愛は惡に對する憎意を充分に含むものである。假面的の愛または淺き愛は、惡を憎むことを知らない。けれども深き眞なる愛はかくあることはできないのである。強く惡を憎む人ならでは強く善を愛するを得ない。キリストの愛がこの種の愛なることは四�ｉｹ書に明示さるるところである。そしてすべて彼の忠實なる弟子はこれであつた。ダンテ、ミルトンら、高貴なる�拐~に燃えていた人の詩文を見よ。いかに惡に對する激烈なる憎惡が表明されてゐるか。彼らは惡と虚僞と僞善とに對して憤激措（お）くあたわなかつたのである。かかるありさまなればこそ、�~に對し眞理に對して熱愛をいだき、また人に對しても深き愛をいだきいたのである。これ吾人の學ぶべきことである。強き憎みをいだかずして、強き愛をいだき得るはずがない。博士ジョンソンが、憎み得ざる者をそのクラブ員に加えなかつたというのは、この事を知つていたからである。さればいう、強く惡を憎めよ、しからずしては其の愛の何たるかを知り得ないと。

　惡を憎むは、愛の消極的半面である。次には例によつてその積極的半面がしるさる。すなわち「善は親しみ」である。これを邦譯聖書のごとく「惡は憎み善は親しみ」と譯してはすこぶる語に力のなきをうらむ。「憎み」の原語 αποστυγεω（アポスツュゲオー）は「嫌惡を感じて退縮す」の意である。また「親しみ」の原語 κολλαω（コラオー）は「膠着す」の意である。共に強き感情のこもりたる語である。惡を見ては、へびに会いしごとく嫌意（けんお）を覺えて退縮し、善を見ては、にかわをもつてするごとくそれに固着すべしというのがこの誡めである。愛はこの要素を缺いてはならない。人を愛するというても、その人のなす善をも惡をも共に愛してはならぬ。これ眞の愛ではない。眞の愛は、その人の惡を強く憎むと共にその善を強く愛するのである。從つて惡に向かつては充分忠言を與え、その善に向かつては充分の助力をなすのである。實にパウロ式の勧めである。彼自身がかかる人であつたことは、彼の生涯の行動、また彼の書きしもの−−ことにガラテヤ書やコリント後書等−−が明示してゐる。しかしこれはただ氣質の問題ではない。眞に�~の靈に占領せられたる者は、いずれもかくあるのである。かくあらざるを得ないのである。

　善に對しても意に對しても平然たるは不信者の常であるが、ことに日本人にこの傾向の著しきは痛歎の至りである。自己の利益に關する事なれば、非常なる熱心を表わし、寝食を忘れて狂奔する。けれども正義に對して少しも熱烈なる贊成を表わさないと共に、不義に對しては何ら著しき反對を示さない。善に向かつても意に向かつても常に冷々淡々、あだかも別世界の事柄に對するがごとくである。社会全体にみなぎる不まじめと倦怠（けんたい）、公義の念の缺乏、人生に對する厳粛なる態度のなきこと、眞正なる友誼に乏しきこと等、いずれもみなかかる心理状態の産物である。この邦人の通弊は、キリスト信者となりし者の中にも往々にして残存する。ゆえにわれらはパウロのこの誡めに深き注意を拂わねばならぬ。そして大いに省るところなくてはならぬ。「愛」というがごときはわかりきつたことと思つてゐる人が多い。しかしパウロのこの誡めに接して愛の眞性を學ぶ時、いかにそれが人の意表に出づるものであるかを覺ゆ。實にみずからよく知れりと思える者はいまだその知るべきほども知らないのである。注意せよ、人々！キリスト�ﾍ的愛のいかなるものなるかを學べ！　そしてこれを實行し得るよう祈れ。

　愛に僞りがあつてはならない。そして愛の要素として缺くべからざることは、惡を強く憎み善を強く愛することである。さらば次に必要なることは何か。それは「兄弟の愛をもて互いに愛し、禮儀をもて相譲」（一〇）ることである。「兄弟の愛」とは、いわゆる兄弟姉妹の愛の意ではない。肉親の兄弟の愛の意である。原語 φιλαδελφια（フィラデルフィア）はこの意味である。「互いに愛し」は、原語を φιλοστοργοι（フィロステルゴイ）という。家族に對する情的の愛情を意味する語である。ゆえに「兄弟の愛をもて互いに愛し」は、兄弟、肉親、骨肉の間の愛のごとき愛をもつて、深く強き愛着の心をもつて、情的に相愛せよとの意である。キリスト信者の問の愛はかくあらねばならぬ。眞のクリスチャンは相互に對してこの愛をいだく。この愛のおこなわるる處がすなわち「エクレジヤ」である。初代の�ﾍ会はこれであつた。また�ｉｹの、思いのほか早く世界にひろがりし理由の一つは、初代信者間に實在したこの愛のためであつた。わが國においても、明治の初めにおいて、一時�ｉｹが盛んであつたころは、信者間の愛は實にうるわしく、かかる清き愛のおこなわるる處にわれも加わりたしとの考えから、�ﾍ会に加入した人が多かつたのである。

　ああ四十年前においてはわが國にもこのうるわしき信者間の愛があつたのである。しかるに近時はいかに。どこにこの種の愛がおこなわれてゐるか。兄弟姉妹とは口にのぼせる言葉たるだけにとどまつて、その實はどこにあるか。信者の間に存するものは、嫉妬、憎惡、惡感、惡口、陥穿（かんせい）等である。�ﾍ会堕落のありさまいかに。實に痛歎すべき限りではないか。共に主にある者は當然この愛をもつて結ばるべきであるに、事實しからざるは、これその信仰に何かの缺陥がある證據である。われらは信仰を深く養い、心の底より兄弟姉妹に對して深き愛情を感じ、この愛をもつて互いに相愛するようならねばならぬ。しかして理想的エクレジャの建設を計らねばならぬ。

　贊美歌三百二十三番は博士Ｊ・フォーセットの作にして、この兄弟姉妹の愛を歌いしものとして有名である。ことに博士がこの歌を作りし由來を聞いて、いっそううるわしき歌となるのである。博士は英國バプチスト�ﾍ会の�ﾍ師であつて、學識深く人格高潔の傳道者であつたが、長くいなかの小�ﾍ会を牧して、何ら名聞を求むるなく、貧しき生活に安んじて無欲淡白の生を送つていた。しかし博士の學識と信仰とは、博士をして首都の大都会の牧者たらしむべく充分であつた。ロンドンの大�ﾍ会は博士を迎えんとした。博士もまた中央において主のため充分に働きたくなり、かつ、いなかのその村のために盡くすことすでに多年にして、ほぼ盡くしたこととて、ついにこの招聘（しょうへい）に應ずることとなつた。やがて別るる時は來たつた。最後の安息日に�ﾍ会においてなしたる最後の説�ﾍは、一同をして涙を絞らしめた。かくていよいよ別るる時は來た。村人一同は博士夫妻を村境まで送り來たつた。いよいよ最後の別離の時となつた。老幼男女より成るこの一群は、理想的の牧者に別るるの悲しみに堪えなかつた。牧者を失つたのちの淋しきを思いて、胸に少なからぬ痛みを感じた。ついに一同はいい合わせたごとくに泣いた。この涙を見て、博士夫妻もまた泣いた。妻は夫に向かつていうた、「この順良なる村人を捨てて都に赴任することができようか」と。夫は聲に應じて答えた、「不可能」と。かくて荷物を運び行く馬車は家に歸ることを命ぜられ、博士はまたその村の牧者としてとどまるに至つた。村人の愛は深く博士の心を動かした。その時作つたのがこの歌であるという。「�~によりていつくしめる友の交じらいはいとも樂し」という。時は千七百八十二年、今を去ること百四十年前の事であつた。これを今において見んとするも見るあたわざるうるわしき出來事である。信者間の愛の稀薄となれる今日、われらはことにこのうるわしき事件とこのうるわしき歌とを想起せざるを得ない。

　次は「禮儀をもて相譲り」である。これは意譯であるが、大体において原意をよく傳えた譯である。英語聖書には in honour preferring one another とある。名譽においては、互いに他をおのれにまされりとせよの意である。名譽の原語を τιμη（チメー）という。むしろ「尊敬」の意である。人が人に對していだく敬意をいう。ゆえにこの場合においては、「信者が兄弟に對し、彼もおのれとひとしく、キリストにあがなわれて�~の子となりし者としていだくところの尊敬の念をさす」（ゴーデー）のである。この語を、ロマ書二章七、十節、ヘブル書五章四節等には「尊貴」と譯し、マタイ傳二十七章六節には「價」と譯してゐる。すなわち他のものに對していだく價値の感をさしたのである。兄弟に對する敬意においては、互いに他をおのれにまされりとせよという。すなわち兄弟に對して充分の敬意をいだき、自己以上の人として相對せよという意である。後年、パウロがピリピの信者に對して、「おのおの、へりくだりたる心をもて、互いに人をおのれにまされりとせよ（ピリピ書二・三）と勧めたのは、全くこれと同じ心である。

　「愛は非禮をおこなわず」（コリント前書十三・四）とある。狎（な）るるは愛の乏しき證據である。兄弟に對して深き眞の愛をいだく時は、互いに他をおのれにまされりとして、その間にうるわしき禮讃が生まれざるを得ない。兄弟の缺點のみに着目するは、愛の足らぬためである。キリストにあがなわれし者、�~の子とせられし者、後にはキリストに似る榮えの姿に化せられんとする者、これすなわち兄弟姉妹である。ゆえに、まずいだくべきは、尊敬を含みたる愛である。愛の中に宿る禮儀、禮讃である。ただの人すら、�~に造られし者として、また心靈的存在者として、これに敬意をいだくを當然とする。ましてキリストがそのために命を捨ててあがないたまいし兄弟姉妹に對しては、特別の尊敬を持つべきである。

　今や信者間に愛の缺乏著しきは、信仰の衰頽（すいたい）に基づくこと當然であるが、また實にこの注意を忘れしもその一因であると思う。尊敬の念なきところ、人々相狎るるに至り、相狎るれば相争うに至る。すなわち更に禮儀の缺くるときは、その愛自身が消え失（う）せるのである。禮儀、尊敬は、今やかえつて不信者の間にあつて、信者の間にない。從つて信者間に信用のなきこと著しい。キリスト信者と稱する者が、同じく信者なる主人に仕える場合のごとき、主人とおのれとを同樣と思い、また特別の愛を要求し、何らの禮儀をも表わさざるわがままは、われらをして大いに不快を感ぜしめる。かくのごときはわが國信者間の大通弊である。

　以上、九、十節を反覆�画､せよ。いかに深き、またゆきとどいた誡めであるか。まず「愛は僞ることなかれ」と、一般的注意を與え、次には細則に入りて、その第一に「惡を憎み」と、たいせつなる注意を與えて、人々の怠りがちなる點を誡め、次には「善は喜び」と注意し、そしてなお「兄弟の愛をもて互いに愛し」と、積極的の勧めをなし、次には「禮儀をもて相譲り」と、人の忘れやすき點に注意を促す。まことに至れり盡くせる層の�ﾍえである。

　

　

第四十九講　約　　　説

キリスト�ﾍ道�ｺその二　愛

　

　謙遜は何びとにも必要である。しかしことに有力者に必要である。傲慢（ごうまん）は特に才能に伴う罪である。ゆえに、第三節においてパウロが謙遜について説き始むるにあたつて、「われ、受けしところの惠みによりて、なんじらおのおのに告ぐ。なんじら、心を高ぶり思いを過ごすことなかれ」といいたるその中に、「なんじらおのおの」と譯されし原語は、「なんじらの中の名ある者」または「能（ちから）ある者」とも譯することのできることばである。英語に譯していうならば　To all who are among youである。are とは、單に「ある」という助動詞ではない。「ある者」は、「存在を認めらるる者」すなわち、いわゆる�ﾍ会の有力者である。ガラテヤ書六章三節に「人もし、あることなくしてみずからありとせば、これみずから欺くなり」とある。その事である、「われ、なんじらのうち、あることある者に告ぐ。高ぶるなかれ」と。パウロの用意周到を思うべし。

　謙遜はことに有力者にとりて必要である。されども愛は何者にとりても必要である。「愛のほか何ものをも人に負うなかれ」とありて、人に何の負うところなきクリスチャンは、愛だけはこれを何びとにも負うのである。�~がわれを愛したもうがごとくに、われは人を愛せねばならぬ。これわが義務である。責任である。

　「愛は僞ることなかれ」。または「愛に僞りあるなかれ」と譯してもよい。愛は慈善と同じく單純なるを要す。愛、愛といいて、愛にも不純なる愛がある。「愛に僞善あるなかれ」と譯して、原語の意味に最も近くある。英語の hypocrisy（僞善）と原語を同じゅうす。愛は假面をかむるなかれ。または愛は演劇的なるなかれ。愛をおこのうに俳優のごとくするなかれ。僞善（ヒポクリシー）は、劇場に關する言葉である。しかしてクリスチャンの愛は率直、赤裸々、自然的であつて、演劇的、粉飾を施したるものであつてはならぬとの�ﾍ訓（おしえ）である。

　單純の愛にさらに定義を付すれば、これ「惡を憎み善と親しむ」ものでなくてはならない。愛にもまた消極積極の兩面がある。惡を憎む方面と善と親しむ方面とがある。ことに注意すべきは惡を憎む方面である。愛は愛であつて、惡をもこれを憎んではならないという者は、愛の何たるかを知らない者である。ほんとうに愛する者は、同時にまたほんとうに憎む者である。博士ジョンソンの有名なる言として、「強く憎まざる者は、わがクラブ員たることあたわず」というのがある。愛するにも心より愛し、憎むにも心より憎まざる人は、ほんとうの人でない。「惡を憎み」である。キリストも、パウロも、ヨハネも、ダンテも、ルーテルも、ミルトンも、すべてこの種の人であつた。すなわち情愛の激しい人であつた。眞の愛の何たるかは、愛の使徒ととなえらるる使徒ヨハネにおいて見ることができる。彼は強く愛して強く憎みし人であつた。ヨハネ傳または黙示録を讀んで、眞の愛と共に眞の憎を學ばざる者は、これを�画､したる者でない。

　「惡を憎み善と親しみ」というだけで、眞の愛の記述として著しいものである。しかしながらパウロの言葉はそんな弱いものでなかつた。これを直譯すれば、「惡を見ては縮みあがり、善とあればこれに愛著す」となる。パウロは強い人である。ゆえに、かかる場合には強い言葉を使う。恐怖をもつて縮みあがる。にかわをもつてするがごとくに付著する。クリスチャンに、善惡に對してかかる敏感がなくてはならぬ。惡を見ても平然たり、善に接してもさほどに喜ばざるがごときは、その人がいまだ眞實に�~の愛を感受せざる證據である。世にはみずから無抵抗主義者ととなえて、惡を見ても怒らず、これと戰い、これを除かんと努めざる者がある。クリスチャンは暴力をもつては争わないが、靈力をもつては勇敢に戰う。彼は惡は惡なりととなえてはばからない。友人の争うを見て、これに携わりて自己に投書の及ばんことを恐れ、惡にも逆らわず善にも與（くみ）せず、自己は第三者の地位に立ちて、ひとえに兩者の好意を失わざらんと努む、これは愛ではない。自己中心の罪である。正直は最良の政略なりというと同じく、愛の名をもつてする自己利益の擁護である。眞の愛は、惡は憎んでこれを排し、善は親しんでこれに與す。憎のない愛は暗やみのない光と同じく、あるがごときに見えて實はないものである。

　愛は純なるを要す。これに表裏あるべからず。その外に現わるるや、惡は誠をもつてこれを憎み、善は心よりしてこれと親しむ。しかしてその内に働くや、「兄弟の愛をもて互いに愛し、禮義をもて相譲る」という。なんじら肉親の情をもつて互いに相愛すべしと。原語の φιλοστοργοι（フィロステルゴイ）にこの意味がある。キリストの血によりてあがなわれし者は、骨肉もただならざる愛をもつて互いに相愛す。信仰の純正なるところに必ずこの愛がある。「われらの心をキリストの愛に、つなぐその愛はさいわいなるかな」という贊美歌第三百二十三番の意である。「見よ、兄弟相むつみて共におるは、いかに善く、いかに樂しきかな」とある詩篇百三十三篇の情である。ほんとうの兄弟姉妹の情は、これをクリスチャンの間において見るべきである。しかし事實はいかに？

　骨肉もただならざる愛と、これにあわせて禮儀が必要である。禮儀または敬意である。「禮儀をもて相譲り」、愛は禮儀によりて維持せらる。Famlliarity begets contempt（なれ過ぎて輕蔑生ず）と。禮儀の缺くるところに愛は消え去る。しかして禮は虚禮でない。尊敬である。信者の間にありては、各自のうちに宿りたもう聖靈に對する尊敬である。この尊敬がありて、眞（まこと）の愛が生（おこ）るのである。自分の救われし實驗に照らしてみて、信者は相互を敬い愛せざるを得ないのである。「禮儀をもて相譲り」、「おのおの、へりくだりたる心をもて、互いに他をおのれにまされりとせよ」。禮儀をもつて現われざる愛は、�~より出でたる愛でない。