シリーズ ハレルヤ! 03 
『シメオンのハレルヤ』 ルカ 2:25-35 
  
今週の箇所は、「今こそ……去らせてくださいます」(29節)のラテン語から、「ヌンク・ディミッティス」と言われている、シメオンの賛美です。 
今日は、この29節を中心に、御言葉を開いていきたいと思います。 
  
みなさんには、「・・ができるなら、死んでもいい」「・・のためなら死ねる」と思えることがありますか? 
私は、10代・20代の頃にはたくさんありました。 
「あの人(女性)と付き合うことができたら、死んでもかまわない」とか、「この試合に勝てるのなら、死んでもいい」とかです。 
恋愛やスポーツに、いのちをかけてもかまわないと大まじめに思っていたのですが、実際に手に入れてみると、「こんなものかぁ」というものばかりでした。 
それから10数年経ち、「子どもたちが一人前になってくれたら、思い残すことはない」なんて思っているのですが、これも、一時的なものかもしれません。 
  
さて、シメオンはどういう人だったのでしょう。 
「この人は正しい、敬虔な人で、イスラエルの慰められることを待ち望んでいた。 
聖霊が彼の上にとどまっておられた。」(25節) 
ここに書かれているシメオンは、旧約時代の理想的な信仰者の姿です。 
正しく、敬虔な人で、自分の利益を追うのではなく、イスラエルへの救い主・慰め主を熱望している人でした。 
また、自身の信仰の姿勢がすばらしいだけでなく、神様との関係も健全で、いつも聖霊様が彼と共にいました。 
  
そして彼は、聖霊様から「主のキリストを見るまでは、決して死なない。」(26節)という約束を受けていました。 
理想的な信仰者である年老いた彼が、若い頃から待ち望み続けたもの、それが救い主です。 
神様は、救い主を見るまでは、決して死なないと約束してくれたのです。 
必ず救い主を見ることができる、彼はどんなに励まされたことでしょう。 
もちろんこれは、「救い主を見たら、お前は死ぬ。」という約束ではありません。 
  
そして、シメオンはついに、約束の救い主に出会いました。 
両親の懐に抱かれ宮に入ってきた、幼子イエスさまと出会ったのです。 
この瞬間、シメオンの人生に、劇的な転換が起こりました。 
慰めを求めていた旧約時代が終わり、新しい希望の時代が始まったのです。 
  
そして彼は賛美します。 
「主よ。今こそあなたは、あなたのしもべを、みことばどおり、安らかに去らせてくださいます。」(29節) 
自分の人生の目的を遂げた人の姿がここにあります。 
シメオンにとっては、死んでもいい、喜んで死ねると思えるほどの、イエスさまとの出会いだったのです。 
  
私は生きる希望を失ったときに、イエスさまに出会いました。 
30歳のときのことでした。 
そこで与えられた十字架の救いは、生きる希望でした。 
死への過剰な恐怖もなくなりましたが、イエスさまとの出会いは、死の克服よりも、生きることへの希望を与えてくれました。 
いのちが与えられた出会いだったのです。 
私には、シメオンのように、死んでもいい、喜んで死ねるとは、到底思えませんでした。 
  
でも、それでいいのです。 
シメオンにはシメオンの人生の目的が与えられていたのです。 
そして、私には私の人生の目的、あなたにはあなたの人生の目的が与えられているのです。 
  
私がブラジル伝道に来るちょっと前に、先輩牧師に言われました。 
「あなたの伝道の目標はなんですか?」 
彼は、アルゼンチンでとっても大きな働きをしている牧師でした。 
私は「死ぬまで神様のメッセージを伝え続けること」と答えました。 
すると「何でそんなちっちゃな目標しか持たないんだ。神様の力は無限なのだから、もっと大きな目標を持ちなさい。」と指導されました。 
  
確かに彼の言うように、神様の力は無限です。 
しかし、私は自分自身に与えられた目標でいいと思っています。 
神様は私たち一人ひとりに、それぞれの人生を与え、それぞれの人生の目的を与えているのです。 
誰も、他人の人生を生きることはできないし、神様はそんなことを望んではいないのです。 
  
もしかしたら、あなたの人生の目的は、他の人には理解できないかもしれません。 
しかし、神様が与えてくれた目的を生き抜いたとき、あなたは喜びであふれることでしょう。 
そして生涯の終わりに、「神様、この生涯をありがとう。」と言えるのです。 
シメオンだって、悪い言い方をすれば、ただ救い主に会っただけです。 
そこから一生懸命伝道したという記述はありません。 
しかし、そこに無限の喜びがあったのです。 
  
さあ、私たちは、神様が与えてくれた私たちの人生を歩んで生きましょう。 
神様が与えてくれたあなたの人生の目的を持って、神様と共に、喜んで生き抜いていきましょう。 
  
  
あなたでなくては成し遂げられない、あなたの人生の目的があります。 
誰の真似をすることもないし、誰に支配されることも必要ありません。 
人生のゴールまで、神様と共に、生きる希望を持って生き抜きましょう。 
シメオンのように、喜びを持って生き抜きましょう。 
死の力に打ち勝った、喜びの生涯のゴールは、あなたのものなのです。  
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