シリーズ イエス様と話そう 06  
『ザアカイ』 ルカ 19:1-10 
  
「強盗と人殺しと取税人」この三者は、当時のユダヤの世界で、同列に並べられる嫌われ者でした。 
強盗と人殺しが嫌われるのは、納得できます。現代でも嫌われ者です。 
しかし、取税人はどうでしょう。 
税務署に勤めているからといって、嫌われることは現在はありません。 
当時のユダヤの特殊事情です。 
  
当時のユダヤは、ローマの属国(植民地)でした。 
ローマはそこから税金を集めるために、取税人を任命したのです。 
取税人になるのは、ユダヤの人で、ローマに取税人になるための権利金を多く払った者です。 
ローマから命じられた税金を集め、ローマに納めるのが仕事です。 
しかし、彼らは民衆から不当に税金を取り、私腹を肥やしていたのです。 
ユダヤ人でありながらローマに仕え、同胞のユダヤ人から不当に税を取り、私腹を肥やす取税人は、嫌われ者だったのです。 
  
エリコの町は、ユダヤの中でも特に富んでいる町なので、税額も多かったことでしょう。 
そこの町の取税人の頭が、ザアカイです。 
取税人の中の取税人、嫌われ者の中の嫌われ者です。 
当然彼は金持ちでした。(2節) 
  
「衣食足りて、礼節を知る」という言葉があります。その通りです。 
しかし、さらに物が豊かになって、財産が満ちたらどうなるでしょう。 
「財産満ちて、・・・を知る」この中にあなたは何を入れますか? 
  
20代のころ、私は大手進学塾に勤めていました。 
講師の数だけで200人以上という大きな塾です。 
その中で、私はナンバーワン講師でした。 
私は自分の能力を信じ、収入を誇り、地位・名誉を高々と掲げていました。 
誰も、何も、私の勢いを阻むものはありませんでした。 
  
しかし、その後私が得たものは、孤独でした。 
そして、言いようもない絶望感。 
仕事にトラブルがあったわけではありません。 
すべて順調です。 
でも、どうしようもない孤独、どうしようもない絶望でした。 
無意識のうちに、私は追い込まれていきました。 
そして、私はすべてを捨てて逃げました。 
私は知りました。 
「財産満ちて、孤独を知る」 
「財産満ちて、絶望を知る」 
  
ザアカイは背が低くてイエスさまを見ることができませんでした。 
普通なら、まわりの人が「お前は背が低いから、前に行けよ」と開けてくれることでしょう。 
しかし、彼にはそういうことを言ってくれる人もいなかったのです。 
逆に意地悪されて、入れてもらえないような男だったのです。 
大群衆の中、ザアカイは孤独でした。 
彼には、満たされない心の渇きがありました。 
彼の魂は、救いを求めていました。 
彼は、自分でもわからないうちに、イエスさまの中に救いを求めていたのです。 
恥も外聞もなく、彼は木に登ります。 
  
「上を向いて写真を撮ると、5歳若くなる」という話しを聞いたことがあります。 
皆さん、真上を見てください。 
次に、真下を見てください。 
上を見ると、自然に口が少し開きます。 
しかも何の作用かわかりませんが、顔の皮膚が引っぱられて「ハイ、チーズ」のときの顔になります。 
逆に下を見ると、口は閉じ、皮膚が集まってきて、にこやかな顔がしにくくなります。 
「上を見る顔」と「下を見る顔」は、それほどちがうのです。 
  
イエスさまはこの「上を見る顔」でザアカイに呼びかけました。 
「ザアカイよ」(5説) 
彼にとってこの呼びかけは衝撃的でした。 
彼は今まで真心をこめて「ザアカイ」と呼ばれたことはありませんでした。 
ユダヤの人たちからは「裏切り者」「ローマの手先」「ザアカイ(皮肉たっぷりに)」と呼ばれ、手下の取税人からは「ザアカイ様」「お頭」と呼ばれていたことでしょう。 
  
イエスさまは違いました。 
彼を「ザアカイ」と呼んだのです。 
ザアカイという言葉は「聖い人」「義人」という意味です。 
取税人の頭に対して、イエスさまは「聖い人」と呼びかけたのです。 
イエスさまはザアカイに対して、信頼と愛をお示しになりました。 
「きょうは、あなたの家に泊まることにしてあるから。」 
  
今までの生活の中で、彼はこのザアカイという名前を恨んだ事も多かったでしょう。 
彼にとってまったく似つかわしくない名前なのです。 
しかし、これからは違います。 
彼は生まれ変わったのです。 
  
孤独の中で、イエスさまの愛に満たされた彼は変わります。 
彼は財産の半分を貧しい人たちへの施しに使います。 
そして残りの半分は償いに使います。 
彼は「4倍にして返します」と言いました。 
本来は、2倍でいいのです。 
いえ、彼の場合は、自主的に返すことになるので、1.2倍でいいのです。 
4倍というのは、意識的な強盗の場合なのです。 
  
生まれ変わった彼にとって、財産は存在の支えではなくなりました。 
彼にとって誇るべき物は、いまや財産や地位ではなく、神様の愛なのです。 
すべてを捨てて、彼は神様の愛に飛び込びました。 
まさに「愛満ちて、神様を知る」人生です。イエスさまは、ザアカイのように本当の居場所を失った人を捜し、救うために来られたのです。(10節)  
私たちを本当の居場所に帰すために。 
  
イエスさまは、あなたの孤独を知っておられます。 
イエスさまは、あなたのむなしさを知っておられます。 
イエスさまは、あなたの本当の居場所を知っておられます。 
イエスさまは、あなたに呼びかけます。「聖い人よ」 
イエスさまの愛に満たされて、あなたは生まれ変わります。 
ザアカイのように・・・ 
  
あなたのためにお祈りしています。 
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