怒りがもたらす結果

「怒りがもたらす結果」創世記4章1節~8節

カウンセリングの学びも二年目に入り、後期の授業は心のケアと感情について学んでいます。先日、怒りの感情について学びました。今日は、聖書を通して怒りについて考えたいと思います。

1.カインとアベル

カインとアベルのお話は何度もお話しましたので、皆さんも良くご存知の出来事です。この出来事の中で、大切なことばを神様はカインに投げかけています。6節7節「なぜ、あなたは憤っているのか。なぜ、顔を伏せているのか。あなたが正しく行ったのであれば、受け入れられる。ただし、あなたが正しく行っていないのなら、罪は戸口で待ち伏せて、あなたを恋い慕っている。だが、あなたは、それを治めるべきである。」カインは神様がアベルの捧げ物に目を留め、自分の捧げ物に目を留めてくださらなかったことに憤りを感じました。カインはアベルに対して、嫉妬と怒りの感情を抱いたのです。神様はカインに対してその怒りの感情を治めるべきだと警告されたのです。しかし、カインは神様の警告を無視して、アベルに襲い掛かり、アベルを殺してしまったのです。

2.怒りとは何か

(1) 怒りとは環境や出来事に対する自然な情緒的、身体的反応である。
怒り自体は誰しも自然に抱く感情でそれ自体は悪ではなく、その取り扱いを誤ると大きな問題となる。

(2)非常に激しいエネルギーを持つ扱いにくい感情である。
感情には色々な感情が共存しているが、その中でも怒りはコントロールが難しい感情である。

(3)怒りは二次感情である。
一次感情(不安、辛い、苦しい、痛い、疲れた、寂しい、ストレス、悲しい、etc.)
怒りは一次感情の蓄積によって発せられる感情である。

3.怒りの原因

(1)個人的な原因
・自分自身や大切な人(家族や友人など)が傷つけられた。
・大切な物が奪い取られた。

(2)社会的な原因
・不当な扱いを受けた。
・社会的に理不尽なことが起きていると感じた。

4.怒りをコントロールする方法

(1)時間をおく
・怒りから注意をそらす(その場を離れる)。
・冷静に考えるために10数える(場合によっては5分でも10分でも)。
・長く、ゆっくり息を吐く(3回~数回)。

(2)怒りに向き合う
・怒りに向き合い、心の中を整理する。(何が問題であったのか考える)
・神に書き出し(怒った時の気持ち)、怒りを相対的に見る。

(3)感情を選択する
・怒りを感じようと思えば怒りは湧き、反対を選択すれば抑制できる。
・怒りの感情を外に出す。

(4)他者に援助を求める
・家族や信頼できる人に、先輩、教師に相談してみる。
・カウンセリングを受ける。

(5)エネルギーを発散させる
・スポーツなど別な事にエネルギーを向ける。

5.マルタとマリヤの場合(ルカ10:38~42)

マリヤは、旅を続けているイエス様とその弟子たちを家に迎え入れ、お食事でもてなしをしました。マリヤは喜んでイエス様とその弟子たちを向け入れたのですが、ここで、大きな失敗をしてしまいました。マルタはイエス様と弟子のために忙しく食事の準備をしていたわけですが、妹のマリヤがイエス様の足元に座り込んで、男たちに混ざってイエス様のお話に耳を傾けていたのです。当時の常識からいうと、男性たちは先生からお話を聞き、女性たちはお客様のために食事の準備をするというのがあたりまえでした。しかし、この忙しい時に、手伝いもせず、マリヤはイエス様の話に耳を傾けていたのです。マルタはそのマリヤに対して、また、そのことに何も言わないイエス様に怒りをぶつけてしまいました。40節「主よ。妹が私だけにおもてなしをさせているのを、何ともお思いにならないのでしょうか。私の手伝いをするように、妹におっしゃってください。」イエス様はマルタに言いました。41節42節「マルタ、マルタ。あなたは、いろいろなことを心配して、気を使っています。しかし、どうしても必要なことはわずかです。いや、一つだけです。マリヤはその良いほうを選んだのです。彼女からそれを取り上げてはいけません。」マルタは自ら選んで、食事の準備をしていたのです。しかし、彼女の頭の中は、食事の準備をするのは女性の努めという考えがありました。しかし、マリヤはイエス様の話を聞くのが第一だと考えたのです。マルタは自分の考えに従わないマリヤを理解できず、自分を手伝わないマリヤに怒りを感じたのです(「自分ばかり働かせて」)。ここでマルタには別の選択肢がありました。マリヤのところに行って。「少し準備の方を手伝ってくれない」と直接頼むことです。そうすれば周りの雰囲気を壊すことも、イエス様を咎めることもなかったでしょう。新共同訳聖書では、イエス様はマルタに対して「あなたは多くの事に思い悩み、心を乱している。」とあります。マルタは準備の事で心乱し、余裕を失っていたのです。先ほどの対処法からすれば、心の中で10数えるか、深呼吸を二回~三回して、冷静に考えれば、人々の前で、怒りを爆発させる必要はなかったでしょう。

6.霊的な対応(サムエル記第一1章)

サムエル記第一の1章に、預言者サムエルの両親の話が登場します。夫のエルカナは妻ハンナが子を産めないので、もう一人ペニンナを妻としました。ペニンナには子を産みましたが、ハンナは依然として子を産むことができませんでした。夫のエルカナはハンナを愛していました。それゆえ、ペニンナは自分がエルカナに子を産んだことで、ハンナをさげすみ、いら立たせてとあります。ここで、ハンナは、ペニンナに対抗するのではなく、神様に祈りました。夫のエルカナはハンナを愛していましたから、夫に頼んでペニンナを追い出すこともできたでしょう。また、ペニンナに仕返しすることもできました。しかし、ハンナは神様に祈ることを選んだのです。そして、預言者サムエルが生まれたのです。