異邦人ルカが書いたイエスの生涯

「異邦人ルカが書いたイエスの生涯」 ルカの福音書1章1節~4節

イエス様の生涯を描いた福音書の著者で、マタイ、マルコ、ヨハネの三人はユダヤ人です。特にマタイの福音書はマタイがユダヤ人の救いのために書きました。それゆえ、マタイの福音書の中に旧約聖書の引用がたくさん見られます。そういう意味では、マタイの福音書を理解するためには、旧約聖書をある程度、知らなければ理解するのに難しい書かもしれません。しかし、ルカの福音書は違います。ルカは異邦人(ユダヤ人以外の民族)で、ルカの福音書は、ルカがローマの高官テオピロにイエス・キリストを紹介するために書いた福音書です。それゆえ、私たち日本人には、他の福音書よりは理解しやすいかもしれません。

また、ルカは直接イエス様に出会った人ではありませんでした。ルカは、パウロが異邦人伝道をしている時に出会い、パウロに伝道されてクリスチャンになった人です。彼の職業は医者で、パウロが伝道旅行する際、医者であるルカがいることで、パウロはずいぶん助かったのではないかと思います。では、イエス様と出会ったことの無いルカが、どうしてイエス様の生涯を書くことができたのでしょうか。ルカの福音書1章3節に「私も、すべてのことを初めから綿密に調べておりますから」とあります。ルカは、イエス様の生涯を書くにあたって、実際にイエス様が生まれた町に行き、当時、生きていたイエス様の家族や友人、弟子たちからイエス様のことを聞いて、この福音書を書いたと言われています。そういう意味で、ルカのことを歴史家と呼ぶ人もいます。

もう一つの特徴として、ルカの福音書には、羊飼いや、やもめ、貧しい人々、弱い人々が多く登場しています。それは、当時の医者自体が、地位が低かったことを表しているのではなかと思われます。大きなお屋敷に雇われた医者は別として、一般の医者は、貧しく、また患者も貧しい人が多くお金儲けにはならなかったように思います。だからこそ、ルカはそのような、貧しい人や弱い人のことを心にかけていたのではないかと思います。

ルカの福音書15章に、有名な放蕩息子のイエス様のたとえ話が登場します。ルカは、この放蕩息子に自分の姿を重ねていたのではないではないでしょうか。また、テオピロにも、自分たちは神様から遠く離れた放蕩息子で、神はこの父親のように私たち異邦人が神のもとに帰ってくることを願っていること伝えたかったのではないかと思います。

また、ルカの福音書23章39節の所で、ルカは、イエス様と共に右と左に十字架に付けられた犯罪人について詳しく書いています。犯罪人の一人は、イエス様に悪口を言いますが、もう一人の犯罪人は、自分の罪を認め、イエス様の無罪を認め、イエス様に、イエス様が御国の位につく時には、私を思い出してくださいと言いました。それを聞いてイエス様は、彼に、43節「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」と言われたのです。ルカはこの出来事を通して、テオピロに、私たち異邦人、罪人であっても、イエス様に救いを求めるならば誰であっても救われることを伝えようとしたのではないでしょうか。

来週の日曜日からアドベントが始まります。アドベントは、私たちクリスチャンがイエス様の誕生日クリスマスを迎えるために準備の期間として定められました。もちろん、それは、教会をきれいにし、クリスマスの飾りを飾ることを意味していますが、それだけではなく、クリスマスを迎える私たちの心を整える期間でもあります。もし、神の子であるイエス様が一人の人間として生まれてくださらなければ私たちの罪の問題は解決しませんでした。ユダヤ人たちはこの罪の問題を解決するために旧約聖書の律法に望みを置きました。ユダヤ人は神様の戒めである律法を完全に守ることによって、神の前に正しい人間となろうと努力する者となったのです。ルカにしろテオピロにしろ、私たち異邦人は律法と関係のない世界に生まれました。そういう意味では、私たちは神様から遠く離れた存在でした。ユダヤ人から見れば、異邦人は神に見捨てられた民、神に呪われた民でした。しかし、ユダヤ人たちは律法に望みを置いているがゆえに、神様からの恵みの救いイエス・キリストのことばに耳を閉ざし、神の恵みによる救いを拒む民となってしまいました。救いは、まず、ユダヤ人に向けられたのです。しかし、ユダヤ人はイエス・キリストを無視し、十字架に着けて殺してしまいました。しかし、神は、私たち異邦人の救いのためにイエス・キリストを死より甦らせて、私たちの救いの希望とされたのです。ルカはパウロから異邦人も救われることを聞きました。彼はどんなに驚いたことでしょう。そして、ルカはイエス様による救いを信じ救われたのです。ルカはこの喜びを自分だけではなく、自分と同じ異邦人にこの喜びの知らせを伝えたいと願いました。それゆえ、ルカは、パウロの同労者となり、パウロの伝道の旅に同行したのです。それだけではなく、ルカがどうして、ローマの高官であるテオピロと親しくなったのかわかりませんが、彼にイエス様のことを伝えるために、自分でイエス様の事を調べ、この福音書を完成させたのです。ルカの喜びの原点は、異邦人である私でも救われた言う喜びでした。私たちはどうでしょうか。私たちもそのような感動を体験したでしょうか。特に、日本と言うクリスチャンの数が少ない国で、神様の話を聞き、救われたのです。これは特別な出来事です。それほど、日本で真の神を知り、救いを受けると言うことは大きな恵みなのです。