「星に導かれた博士たち」

「星に導かれた博士たち」 マタイの福音書2章1節~12節

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 キリスト教の偉大な伝道者パウロは、神様の存在について、ローマの教会の人々にこのように教えています。ローマ人への手紙1章20節「神の、目に見えない本姓、すなわち神の永遠の力と神性は、世界の創造された時からこのかた、被造物によって知られ、はっきりと認められるのであって、彼らに弁解の余地はないのです。」パウロは、神の存在を信じない人々や動物や月、太陽を神としてあがめている人々に対して、私たちは神の姿を見ることはできないが、被造物(神によって造られたもの)によって、神が存在することは明らかであって、神はいないという人々、動物や月や太陽を神として信じている人々の間違いは明らかであると教えています。

以前、科学雑誌「ニュートン」を本屋で見たとき、太陽と地球の距離について書いてあったか所を読みました。それによると、太陽と地球の距離は大変微妙な距離で、今の距離より太陽に近ければ(金星のように)、地球の温度は高熱となり生き物は存在しなかったであろうと書いてありました。また、逆に、地球が太陽から離れただけで(火星のように)、地球の気温は大幅に下がり、これまた、地球上に生命は誕生しなかっただろうとありました。また、月と地球の関係も同じように、もし、月がもっと地球に近ければ、毎日が台風のような日々が続き、生き物の生存は難しかっただろうと書いてありました。それを考えると、だれが、このように正確に、生き物が生活できる環境に太陽と月、地球を配置したのでしょうか。偶然にしてはあまりにも、正確すぎます。創世記の1章に神様が六日間ですべてのものを創造されたと記されています。そして、その神様の創造の六日目に神様は人を創造されました。もしこの順番が変わっていたとしたら、人間は生きることができませんでした。神様は人間がこの地上で生きることができるように、六日間を費やして人間が生活できる環境を整えそのうえで、神様はご自身に似せて人間を創造され、この地上を管理するものとして、人間を誕生させてくださったのです。科学者の中にも多くのキリスト者がおられると聞いたことがあります。彼らは、専門であるがゆえに、私たちが知らない知識をたくさん持っています。その彼らが、宇宙や人間の体を研究するとき、宇宙や人体の神秘に触れ、神様との出会う人々が多く起こされると聞いたことがあります。

初めにお読みしましたマタイの福音書2章で、東方の博士たちが登場します。この東方の博士たちがどこからエルサレムの町に来たのか、はっきりとは場所を特定することはできません。しかし、イスラエルの歴史において、南ユダ王国は、紀元前585年にバビロニヤによって滅ぼされ、王族や貴族、技術者などが、バビロニヤに強制的に移住させられました。(バビロン捕囚)。その歴史を考えると、東方の博士たちが星に導かれたのは、バビロニヤ地方、現在の、シリアあたりではないかと言われています。また、聖書では博士と紹介されていますが、当時の状況を考えると、星の動きによって、豊作や飢饉を予測したり、どこで戦争が起こるかを予測する占い師に等しい人々ではなかったかと思われます。その彼らが不思議な星に導かれて、エルサレムにまでやって来たのです。当時はヘロデという王様がユダヤの国を治めていました。実は、このヘロデはユダヤ人ではなく、ヤコブの子エサウの子孫でエドム人だと言われています。当時の世界はローマという大きな国によって支配されていました。ヘロデはローマ政府に取り入り、ローマ政府の助けを得て、ユダヤの国の王に就任した者です。それゆえ、ユダヤの人々はヘロデ王を尊敬しませんでした。ヘロデ王は凶暴な人間で、力と恐怖でユダヤの国を治めていたのです。そんなところに、東方から博士たちが訪ねてきて、2章2節「ユダヤ人の王としてお生まれになった方はどこにおいでになりますか。」と尋ねたのですから、ヘロデ王は恐れまどったのです。自分の知らないところで、自分に代わって王になる者の誕生ですから、ヘロデ王は恐れ不安になったのです。

不安になったヘロデ王は、祭司長たち、学者たちを集めて、キリストがどこで生まれるのかを問いただしたとあります。祭司長たちは、神殿で神様に仕える者たちです。この時の神殿は第三神殿と呼ばれるもので、ヘロデ王がユダヤ人の関心を得るために建てた神殿です。それゆえ、ヘロデ王と祭司長たちは親しい関係であったと思われます。彼らはヘロデ王に対して、旧約聖書から救い主がユダヤのベツレヘムで生まれることを知らせました。それは、旧約聖書のミカ書に「ユダの地、ベツレヘム。あなたはユダを治める者たちの中で、決して一番小さくはない。わたしの民イスラエルを治める支配者があなたから出るのだから。」と書いてある聖書の箇所を知っていたからです。ヘロデ王は博士たちに、その場所についてわかったら教えるように告げて、彼らを送り出しました。幼子探し出し、救い主を礼拝した博士たちは、夢でヘロデ王のもとに帰るなとの戒めを神様から受けて、別の道を通って自分の国に帰っていきました。ヘロデ王は博士たちに騙されたことを知ると、ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子を一人残らず殺させたとあります。ヘロデ王はそれほど、新しいユダヤの王を恐れ、また、関係のない二歳以下の男の子を殺させるほど残忍な王様だったのです。

ここで、疑問に思うのは、神様はなぜ、異邦人(外国人)の博士たち(占い師)たちに、救い主の誕生を知らせたかということです。ユダヤの国には神殿がありそこでは神様に仕える人々祭司たちが働いていました。それなのに、なぜ、神様は東方の博士たちに知らせたのでしょうか。当時のユダヤの国は、ローマ政府に支配されていました。ローマ政府はユダヤ人たちに自治権を与え、選ばれた議員によって最高議会が構成され、国の様々なことが決められていました。それをサンヘドリン(ユダヤ人議会)と呼び、70人または、71人で構成されていたと言われています。また、その半分はサドカイ人(祭司階級)半分はパリサイ人(神様の戒め律法を人々に教えるユダヤ教の指導者)で占められていていました。また、パリサイ人はローマ政府に敵対するグループでした。それゆえ、ローマ政府はサドカイ人に近づき、サドカイ人を優遇し、金銭的にも援助を与えていました。それゆえ、サドカイ人たちは、大きなローマ風の家に住み、豊かな生活をしていました。ローマ政府は、ユダヤ人に宗教の自由を与え、サドカイ人を操ることによってユダヤの国を治めていたのです。祭司たちにとってこの状況は好ましく、救い主の誕生を願う気持ちはありませんでした。それゆえ、神様は祭司たちではなく、東方にいる博士たちはあえて選んだのではないかと思います。次に、神様に選ばれたのは羊飼いたちでした。雇われた羊飼いたちは貧しく、神様の戒めを守れない人々でした。それゆえ、ユダヤ教の指導者パリサイ人たちは、、羊飼いたちを神様から遠く離れた人々、また、神様から呪われた人々と彼らをさげすんでいました。しかし、主の使いが彼らに現れ、救い主の誕生を知らせたのです。羊飼いたちは主のことばに励まされ、救い主を探しに出かけて、救い主を探し当てたとあります。

堀先生が学生の時代、教会に来る人々の多くが、「真理とは何か」「人は何の目的で生まれたのか」という、哲学的な悩みで教会に来る人々が多かったが、現在は、家庭や職場の人間関係に悩んで教会に来る方々が増えたとお話になられました。確かにそうだと思います。東方の博士たちも、羊飼いたちも神様を求める気持ちがありました。しかし、ヘロデ王や祭司たちは、現在の状況に満足して救い主を求める気持ちがありませんでした。皆さんはどうでしょうか。苦しみや悲しみ、問題を抱えるところから、人間の知恵や力を超えた神様を求める気持ちが生まれてきます。しかし、現状に満足している人にとって神様は必要なし、邪魔な存在です。今、あなたの気持ちは何に向かっているでしょうか。豊かな生活でしょうか。それとも、神様を求める気持ちでしょうか。聖書に、求めなさいそうすれば与えられます。とあります。神は、神を求める者に必ず答えてくださいます。神は私たちの心をご存じです。今、私たちの心は何に向いているでしょうか。