ヤコブとイスラエルの12部族

創世記29章15節~30節 

 アブラハムの家族関係、イサクの家族関係について学びました。今日はヤコブの家族関係について学びます。

 ヤコブは父イサクをだまし、兄になりすまし、兄エサウに約束された父イサクによる祝福の祈りを横取りしました。それを知った兄エサウはヤコブを憎み、父の亡き後、彼を殺そうと考えました。それを知った母リベカはヤコブを助けるために、彼に自分の生まれ故郷、兄のラバンのもとで身を隠すように進言し、ヤコブを兄のもとに送り出しました。母の生まれ故郷に着くと、ヤコブはそこで、叔父ラバンの娘ラケルと出会いました。16節17節「ラバンには二人の娘がいた。姉の名はレア、妹の名はラケルであった。レアは目が弱々しかったが、ラケルは姿も美しく、顔立ちも美しかった。」とあります。ヤコブはラケルに一目ぼれしました。そして、ヤコブは叔父ラバンのもとで働き始めました。15節「ラバンはヤコブに言った。『あなたが私の親類だからといって、ただで私に仕えることもなかろう。どういう報酬が欲しいのか、言ってもらいたい。』」そこでヤコブは叔父ラバンに言いました。18節「ヤコブはラケルを愛していた。それで、『私はあなたの下の娘ラケルのために、七年間あなたにお仕えします。』と言った。」20節「ヤコブはラケルのために七年間仕えた。ヤコブは彼女を愛していたので、それもほんの数日のように思われた。」とあります。七年の後、ヤコブはラケルとの結婚を叔父ラバンに申し出ました。ところがラバンも狡猾な者で、ヤコブの働きにより財産が増えたのを知り、彼を手放すことが惜しくなりました。そこで、妹のラケルではなく姉のレアをヤコブの寝室に送りました。翌朝、ヤコブはラバンに騙されたことを知り彼に抗議しました。それに対して、26節27節「ラバンは答えた。『われわれのところでは、上の娘より先に下の娘を嫁がせるようなことはしないのだ。この婚礼の一週間を終えなさい。そうすれば、あの娘もあなたにあげよう。その代わり、あなたはもう七年間、私に仕えなければならない。』」ラバンは初めからヤコブをもう七年間ただで働かせるために、姉のレアを先に与え、その後に妹のラケルをヤコブに与えたのです。可哀そうなのはレアです。強欲な父ラバンのために、望まれてもいないヤコブと結婚させられ、さらに、妹ラケルとも同じ妻として生活しなければなりませんでした。当然、ヤコブの愛はラケルに向けられています。レアはどれほど悲しい日々を過ごしたことでしょう。しかし、神はこの可哀そうなレアを見捨てることはありませんでした。31節「主はレアが嫌われているのを見て、彼女の胎を開かれたが、ラケルは不妊の女であった。」この後、レアは、ルベン、シメオン、レビ、ユダの四人の子を産みました。妹ラケルは姉のレアに嫉妬し、自分の女奴隷ビルハをヤコブに与え、彼女によって子を得ようとしました。そしてビルハはダンとナフタリを産みました。レアもラケルに対抗し、同じように自分の女奴隷ジルパを夫ヤコブに与えました。そして、ジルパはガドとアシェルを産みました。さらにレアはイッサカルとゼブルンを産みました。ラケルはヨセフを生み、その後、ベニヤミンを産んで亡くなりました。まとめると、レアはルベン、シメオン、レビ、ユダ、イッサカル、ゼブルンの六人を産みました。ラケルの女奴隷ビルハは、ダンとナフタリの二人を産みました。また、レアの女奴隷ジルパは、ガドとナフタリの二人を産みました。ラケルはヨセフを産んだ後、ベニヤミンを産んで亡くなりました。これでヤコブの子は12人となります。叔父ラバンの悪だくみとはいえ、ヤコブはレアとラケルの姉妹を同時に妻に迎えました。さらに、二人の姉妹の嫉妬により、二人が自分の女奴隷をヤコブに差し出すことによって、ヤコブは四人の妻を持ち12人の子と一緒の生活が始まりました。そのような複雑な家庭がうまくいくはずがありません。この複雑な家族のゆえに兄弟同士の憎しみ合いが始まったのです。

 創世記の最後の部分(創世記37章)から、ヨセフと兄弟たちの和解の話になります。ヤコブは愛するラケルを失い、ラケルの子ヨセフを特別に愛しました。その事は兄弟の間に憎しみを産むことになりました。ヨセフを除いた兄弟たちが仕事に出ているとき、弟のヨセフが兄弟たちの様子を知るために父ヤコブから使いに出されました。兄弟たちはヨセフを見つけると、彼を捕らえてエジプトに行く商人に奴隷として売り渡しました。そして、父にはヨセフが獣に殺されたと報告したのです。ヨセフはエジプトで奴隷として働かされました。また、主人の妻にいたずらをしたと訴えられ、無実で監獄に入れられました。しかし、そんな彼と神は共におられました。

 そのころエジプトの王は不思議な夢に悩まされていました。それは、エジプトに起こる七年間の豊作とそれに続く七年間の飢饉を意味する夢でした。しかし、誰もその夢の意味を解き明かす者がいませんでした。ところが、一人の侍従長が監獄にいたヨセフが夢を解き明かす力がある事を思い出しました。そして彼は、王様にヨセフの事を告げたのです。ヨセフは王の夢を聞き、その意味を解き明かしました。エジプトの王はヨセフをエジプトの王の次の位に任命し、この飢饉を乗り越えようと考えました。ヨセフは七年間の豊作の内にできるだけ多くの穀物を蓄えさせました。そして、七年間の飢饉が訪れました。ヤコブが住むところも食べ物が無くなり、ヤコブはこどもたちをエジプトに向かわせました。兄弟たちがエジプトに着くと、ヨセフの前に立たされました。兄弟たちはエジプトの高い地位に就いたヨセフを見ても彼だとは気づきませんでした。しかし、ヨセフは兄弟たちと気づき、末の弟ベニヤミンを連れてくるように強く命じたのです。兄弟たちはこの出来事を父ヤコブに伝えました。初め、ヤコブはベニヤミンをエジプトに連れて行くことに反対しましたが、食べ物が尽きたために、兄弟と共にベニヤミンをエジプトに送りました。ヨセフはベニヤミンを見て喜びました。そこで、彼はベニヤミンをエジプトに留めようと、一つの計画を行いました。それは、自分の杯を密かにベニヤミンの袋に入れ送り出し、後で彼らを呼び戻し、その杯を持った者だけをエジプトに残るように仕向けたのです。そして、ベニヤミンの袋から杯が見つかり、ヨセフはベニヤミンをエジプトに留めるように命じました。ところがそれを聞いたユダは、自分がベニヤミンの代わりにエジプトに留まるので、ベニヤミンを父の許に返してほしいと嘆願したのです。実は、このユダこそヨセフをエジプトに行く商人に売り渡した張本人でした。ヨセフはそのユダが父のことを心配して、ベニヤミンをかばう姿を見て、兄弟たちを赦す決心をしたのです。ヨセフは兄弟たちに自分が弟のヨセフであることを明かしました。創世記45章4節5節「ヨセフは兄弟たちに言った。『どうか私に近寄ってください。』彼らが近寄ると、ヨセフは言った。『私は、あなたがたがエジプトに売った弟のヨセフです。私をここに売ったことで、今、心を痛めたり自分を責めたりしないでください。神はあなたがたより先に私を遣わし、いのちを救うようにしてくださいました。』」8節「ですから、私をここに遣わしたのは、あなた方ではなく、神なのです。神は私を、ファラオには父とし、その全家には主人とし、またエジプト全土の統治者とされました。」ヨセフは全部の計画が神の御手の中にあることを認め、兄弟たちを赦す決心をしたのです。

 実は、12部族の中にヨセフ族はありません。ヤコブがエジプトに移住して後、天に召される日が近づいた時、ヤコブはヨセフの子マナセとエフライムを自分の子と同じにすると約束しました。そこで、イスラエルの十二部族は、ルベン、シメオン、ユダ、ゼブルン、イッサカル、ガド、アシェル、ダン、ナフタリ、ベニヤミン、マナセ、エフライムとなります。レビ族は神に仕える部族として土地は与えられませんでした。

 ヤコブの家族は叔父ラバンの悪だくみによって、また、レアとラケルの嫉妬によって、四人の妻と12人のこどもが共に生活する複雑な家庭となりました。また、ヤコブはラケルの子ヨセフを特別に愛したために、ヨセフは兄弟たちに妬まれ、エジプトに奴隷として売られてしまいました。もし、ヨセフが兄弟たちを赦さなかったら、十二部族は一つになれなかったかもしれません。ヨセフはすべてが神の御業と信じて兄弟たちを赦しました。人間の力で被害者が加害者を赦すことは出来ません。被害者はいつまでも加害者の事を忘れることは出来ません。私たちは、自分たちの罪を認め、その罪がイエス・キリストの贖いによって罪が赦されたことを知る時、はじめて、加害者のことを赦すことが出来るのです。また、私たちはヤコブやレア、ラケルのように弱く、失敗しやすい者です。しかし、神は人の失敗をも益に変えて下さる神様です。私たちはそのような神を知る時、安心して神と共に歩むことが出来るのです。