「失敗をも益に変えてくださる神」創世記45章1節~8節
神は天地全てを創造され、地上を管理する者として人間を創造されました。しかし、最初に創られた人、アダムとエバは罪を犯してしまいました。本来なら、罪を犯した二人は自分の罪のゆえに死ななければなりませんでしたが、神様は二人を哀れみ、エデンの園から追い出すだけで、命は助けられました。その後も、旧約聖書を見ると、人間は罪を犯し続けましたが、神はいつも人を助けてくださいました。
創世記の最後の部分は、ヨセフと兄弟たちの和解の姿を描いています。元々、ヨセフに対する兄弟たちの憎しみは、ヤコブが四人の奥さんを持ったことに原因があります。当時は、一夫多妻の時代とは言え、四人の奥さんに、それぞれ母親が違う子供たちが同居するという複雑な家庭が問題だったのです。ヤコブは兄の祝福を奪い、兄の怒りを逃れるために、叔父のラバンの下に身を寄せました。そこで、ヤコブはラケルと出会い、ラケルと結婚するために、7年間ラバンの下で働きました。7年後、ラバンがヤコブに与えたのは姉のレアでした。ラバンは姉のレアをヤコブに与え、その上でなければ妹のラケルを嫁がせることは出来ないとヤコブに条件を出したのです。ラケルを愛するヤコブはしかたなくラバンの条件に従い、もう7年ラバンの下で働きました。ヤコブはラケルを愛しました。哀れなのは姉のレアです。神様は夫に愛されないレアのために四人の子を与えました。ラケルはそれを見て姉に嫉妬し、自分の女奴隷ビルハをヤコブに妻として与え、ビルハによってラケルは子を得ました。レアもそれを見て自分の女奴隷ジルパをヤコブに与え、彼女によってさらに子を増やしました。子どもが多いということは、当時、神様の祝福を表していますが、ヤコブの家庭の場合、女同士の嫉妬のゆえに子が増えた家族です。そんな家族に神様の祝福があるわけがありません。さらにヤコブは、ラケルの子ヨセフを特別に愛しました。それを見た、兄弟たちはヨセフに対して、嫉妬と憎しみの感情をいだいたのです。
ある時、兄弟たちは羊を追って家から離れていました。父ヤコブはヨセフに兄たちの様子を見るために使いに出しました。兄弟たちはヨセフを見つけて、彼を殺す話し合いを始めたのです。しかし、長男のルベンはヨセフを助けようとしますが、彼がいない間に、兄弟たちはヨセフをエジプトに行く商人にヨセフを奴隷として売ってしまいました。そして、父ヤコブにはヨセフが獣に襲われ殺されたと報告したのです。父ヤコブはどれほど悲しんだことでしょう。
17歳で、兄弟たちに奴隷として売り飛ばされてしまったヨセフはどれほど傷ついたことでしょう。それでも、ヨセフはエジプトのポティファルのもとで、一生懸命働きました。そのかいあって、ヨセフは主人に認められるようになりました。しかし、主人の奥さんがヨセフに目を付け彼に言い寄りました。ヨセフはその場から逃げましたが、主人の奥さんはヨセフが自分に悪さをしようとしたと嘘を主人に告げたために、ヨセフは監獄に入れられてしまったのです。しかし、監獄でもヨセフは一生懸命働き、監獄の長に認められるようになりました。ヨセフはそこで、王様に仕える、料理官長と献酌官長と出会い、彼らの不思議な夢を解き明かしました。その後、エジプトの王パロも不思議な夢をみました。ヨセフによって自分の夢を解き明かされた、献酌官長はヨセフのことを思い出し、エジプトの王にヨセフのことを知らせたのです。ヨセフのことが、王様に伝えられ、ヨセフはエジプトの王の不思議な夢を解き明かし、王様から総理大臣の地位が与えられ、これから全世界で起きる大規模な飢饉のために備える大切な役目が与えられたのです。
ヨセフがエジプトの王の夢を解き明かした通り、世界中に大きな飢饉が起こりました。ヤコブはエジプトに食料があると聞いて、食べ物を得るために息子たちをエジプトに遣わしました。そこで、ヨセフは兄弟たちと出会いますが、兄弟たちはヨセフだと気づきませんでした。ヨセフは兄弟のひとりを監禁し、末の弟ベニヤミンを連れてくるように兄弟たちに命じました。しばらくして、兄弟たちはベニヤミンを連れて、エジプトを再び訪れました。ヨセフはベニヤミンを自分の手元に置こうとして、彼の袋に金の杯を忍ばせ兄弟たちを送り出しました。そして、すぐに呼び戻し、杯を忍ばせたベニヤミンを置いていくように兄弟たちに命じたのです。それを知ったユダはベニヤミンをかばい、代わりに自分を牢獄に入れるように申し出ました。実は、自分(ヨセフ)を奴隷に売るように言いだしたのはユダでした。ヨセフはベニヤミンをかばい、身代わりに自分の身を差し出すユダの姿を見て、兄弟たちを赦し、自分が弟のヨセフであることを兄弟たちに明かしたのです。ヨセフは兄弟たちに言いました。創世記45章5節「今、私をここに売ったことで心を痛めたり、怒ったりしてはなりません。神はいのちを救うために、あなたがたより先に私を遣わしてくださったのです。」ヨセフは兄弟たちの憎しみの背後に神様の御手を見ていました。ローマ人への手紙8章28節「神を愛する人々、すなわち、神のご計画に従って召された人々のためには、神がすべてのことを働かせて益としてくださることを、私たちは知っています。」とあります。ここで言われている「すべて」とは、人間の罪や失敗も含まれています。ヤコブの家族の問題はヤコブが4人の奥さんを持ち、複雑な家庭を築いたことにありました。しかし、神様はヨセフを選び、彼によって家族を和解させられたのです。この後、出エジプト記に話が繋がります。この時、もし、12部族が互いに憎しみ合っていたなら,出エジプトはありませんでした。神様はイスラエルの12部族を誕生させるために、ヨセフを選び、彼を訓練し、イスラエル民族を完成させられたのです。
家族カウンセリングも似たような形を考えます。今までのカウンセリングは、問題のある子供の問題を解決することだけを考えてきました。しかし、家族カウンセリングでは、問題のある一人の子どもではなく、家族全体の問題が一人の子を通して表されると考えます。それゆえ、家族全体の問題を解決することによって、一人の子の問題を解決するという考えです。堀先生がモビールを見せて説明してくださいました。一番弱い所に家族の病理が現れるといわれました。ヤコブの家族の問題は、ヤコブがラケルの子ヨセフを特別に愛したことによって起きた問題です。しかし、神様は兄弟たちの憎しみを用いて、家族の和解の道を備え、イスラエルの12部族を誕生させてくださったのです。
私たちもヤコブのように不完全で失敗の多い者です。もし、神様との関係が主人としもべだけの関係ならば、とっくに、私たちは捨てられていたかもしれません。しかし、私たちと神様との関係は父と子の関係です。子はいつも正しい行いをするわけではありません。時には反抗し、失敗をすることもあります。しかし、父は、あの放蕩息子の父のように、私たちに対して、寛容で、愛情をもって接して下さいます。それゆえ、私たちも失敗を恐れず、つねに、万事を益に変えてくださる神様を信頼し、神様に近づくことができるのです。