日本基督教団小月教会

平民の福音

平民の福音 ■山室軍平著
■救世軍出版供給部
■B6版・156ページ

救世軍の山室軍平による、キリスト教入門書です。私が持っているのは1995年刊ですが、なんとその時点で通算527版を重ねているというから、尋常ではありません。この本を通じて、いかに多くの人が福音に触れ、信仰に導かれた事でしょうか。

この本の初版は1899年。今から100年以上も前に出た本ですから、言い回しなどは古く、表現にも現在ではそぐわない点も見られます。ですが、豊富なたとえ話を用いて、また難しい言葉は一切使わず、あの手この手で福音を伝えようとする山室の意気込みが満ちていて、いつ読んでも新鮮な喜びがある本です。

前書きに「私の小さい胸の中にあるたった1つの願いは、いかにもしてこの大いなる神様の御慈愛を、ことに我が愛する平民諸君に、お知らせ申したいということであった」とありますが、この「平民の福音」全編を貫くのは、この山室の「とにかくどうにかして福音を伝えたい」という、ストレートな福音伝道への意欲です。そこには「筆を抑えた」とか「オブラートに包んだ」様子はありません。山室はずばり福音を語ります。だからこそ、この本は不朽の輝きを放ち続けているのでしょう。山室軍平の実直で誠実な信仰の一端を垣間みる事のできる本です。

山室のたとえ話は大変分かりやすくまた面白く(古い本なので、言い回し自体は分かりにくいですが)、誰にも楽しく読めるでしょう。救世軍だけに、語り口は「立てよキリストの兵士諸君!」という感じではありますけど(笑)。また、キリスト教の中でも、特に「悔い改め」に重点を置いて書かれているように思います。語り口の力強さと相まって、読んだ人を悔い改めに導く力を持った1冊です。

ところで、救世軍と言えば、「禁酒・禁煙」です。山室は「酒と色は、悪魔が人間を陥れる2つの最も大きな落とし穴」と書いています。現在の世の中の荒んだ状況に目をやると、山室のその主張にも、なるほど大いに同調できるところではありますが、それにしても、書中で書かれている、賭博の道具や煙草などを「悪魔の葬式」として葬り去る儀式?は、ちとやりすぎという気がしなくもない(笑)。

ただ、この本現在では大変入手困難らしいです。要は差別語や不快語の問題で、これは本書の冒頭にもわざわざ「用語を書き改めようと思ったが、そうすると山室の意図が十分表現できず芳しくない結果に終わった」と書いてあります。なので、今後用語を書き改めた新版が出る可能性はないでしょう。もし幸運にもこの本を見つける事ができたら、既に信仰をお持ちの方にも(もちろん、求道中の方やキリスト教に興味がおありの方には、なお一層)、ご一読をお薦めします。



〒750-1144 山口県下関市小月茶屋3-2-2
日本基督教団小月教会
TEL 083-282-0805
FAX 083-282-0865