日本基督教団小月教会

救世主〜人類を救いし者

みんなの聖書マンガシリーズ1 ■原案/熊井秀憲 画/ケリー篠沢
■日本聖書協会
■A5版・288ページ

今回取り上げるのは、聖書をマンガ化した本です。「みんなの聖書マンガシリーズ」と銘打っており、現在第3巻まで刊行されています。これはその第1巻。発行は、大御所である「日本聖書協会」。表紙にもちゃんと「『聖書 新共同訳』準拠」と明記してあります。

聖書のマンガ化は今まで何度もありましたが、なかなか満足できる物はありませんでした。書いている側に聖書の知識が乏しかったりすると、全く元とかけ離れたものになりますし、かと言って聖書をそのままマンガにしたところで、マンガとして面白い物にはなかなかなりません。

「聖書に忠実」というのは何より大事で、マンガではないのですが、とある一般向け(信徒が読むような本ではなく)の聖書解説本では、列王記上のエリヤとバアルの預言者対決のところで、「雨乞いで対決した」などと書かれてありました。本当に聖書を読んで解説書いてるのか、と(笑)。まあ確かに結果的に雨は降りましたが、ちゃんと聖書を読んでいれば、「雨乞い対決」ではない事は明白です。いやしくもタイトルに「聖書」の文字を入れるなら、少なくとも元に忠実であって欲しいものです。

で、このマンガです。結論から申しますと、これは本当に素晴らしいです。4つの福音書から主要なエピソードを正確に盛り込んで、しかも固有名詞などにも矛盾がありません(バルトロマイ=ナタナエルという描写になってます。マンガとして描く上での判断なのでしょう)。フルカラーというのも嬉しいところで、キャラクターの描き分けも上手いです。武骨なペトロ、計算高いフィリポ、ワイルドな洗礼者ヨハネ、渋いニコデモ、小心者のザアカイ、中間管理職風のポンテオ・ピラトなど、どのキャラクターも魅力的です。イスカリオテのユダが、ナルシストの美少年になっちゃってますが。

もちろん、日本聖書協会が作っているほどですから、新共同訳に実に忠実です。御丁寧に欄外には、該当する聖書箇所が全部明記されています。「ハイデルベルク信仰問答」も顔負けです(笑)。

特筆すべきは、この本「マンガとしてもとても面白い」んですよ。これは素晴らしい点です。ちゃんと笑えるところや盛り上がるところもありますし、ラストの「わたしは世の終わりまで、いつもあなたがたと共にいる」(マタイ福音書28:20)に至る辺りは、とても感動的です。絵も上手で今風。中高生が読んでも、また年配の方が読んでも楽しめるはずです。教会学校の教材としても最適ではないでしょうか。

1つだけ思ったのは、復活から昇天の辺りにもうちょっとページを裂いてくれれば、と。トマスが復活の主イエスに会ったシーンやエマオで2人の弟子に現れたシーンなど、1コマで済まされちゃってます。「道で話しておられるとき、また聖書を説明してくださったとき、わたしたちの心は燃えていたではないか」(ルカ福音書24:32)のシーンが、是非見てみたかった気がします。

聖書を読む前に、福音書の全体像を掴むには最適な入門書ですし、キリスト者の方が読んでも、聖書の新たな魅力を発見できる本。たかがマンガと侮れません。さすが日本聖書協会です。あまりに良く出来た本なので、後の2冊も注文してしまいました。そちらの書評も、いずれ書こうと思います。皆さんも、機会があったら是非読んでみてください。



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