■沢村五郎著
■いのちのことば社
■B6版・124ページ
以前ご紹介した「平民の福音」同様、分かりやすいキリスト教入門の本。あちらも古い本(1899年)でしたが、こちらも1930年ですから、負けず劣らず古い本。ページ数は124ページですから、「小冊子」と言っても良い程の小さな本ですが、この本は非常に素晴らしい本です。私が持っているキリスト教関連書籍の中で(大してたくさん持っている訳でもないですが)、どれか一冊と言われれば、これを選びます。あ、もちろんどれか一冊と言っても、聖書は除きますので念のため(笑)。
この本は、「平民の福音」と似た作りで福音を説きます。同じようなたとえ話が出て来たりもします。そして、あちらがどちらかと言えば「悔い改め」を説くのに対し、こちらを読んでまず感じられたのは「信仰の喜び」です。力強く悔い改めを語った「平民の福音」に対し、「救いは今です」の文章全体からにじみ出ているのは、福音の喜びです。それが最も端的に現れていると思う一文を、引用します。本文の最後の最後に書いてあります。
やがて、私たちの上に現れる栄えはとうてい何にも比べようのないものであります。現在、信仰によって感謝と喜びに満ちあふれています。それでさえも神の恵みのほんの一しずくを味わっているにすぎません。やがての日には、まさにその本源において、いのちの水を飲む事ができます。今はおぼろげに信仰の目をもって神を見、キリストを見ていますが、その時には顔を合わせて相見るのであります。そしてわたしたちの体さえも栄化されて、不朽の栄えの姿となり、神の世継ぎとしての特権が与えられます。前途を望んで、希望は洋々として春の海のように広がり、歓喜は心の中に躍ります。神の恵みは無尽蔵であります。
この一文に感動し、私は求道に招かれたと言っても過言ではありません。小さな冊子ですが、キリスト教の教えの素晴らしさの真髄に触れる事のできる名著だと思います。キリスト教入門書としても、順序立てて大変分かりやすく書かれています。
この本は、いのちのことば社より限定復刊キャンペーンで300冊だけ発行されたものです。「日本キリスト教文書史に輝く宝石のような本」という紹介文を見て、衝動買いしてしまいましたが、その日のうちに読破しました。間違いなく私が信仰を持つきっかけとなった本です。
ただこの本、現在ではかなり入手困難と思われます。が、大げさでなく、全ての教会に1冊ずつ置いて欲しいほどの名著だと思います。こんな素晴らしい本が今では手に入らないというのは、あまりにもったいない話です。求道中の方にこれを読んでもらえば、信仰に導かれる事間違いなし、かも知れません。
私がこの本を手に入れる事ができたのは、たまたまいのちのことば社のWebページを見たからで、全くの偶然なのですが、その偶然の働きこそが、聖霊の交わりであった事を、私は固く信じて疑いません。