■指揮/ブルーノ・ヴァイル
■管弦楽/エイジオブインライトゥンメント管弦楽団
■合唱/ウィーン少年合唱団
歌曲王と呼ばれるシューベルトは「野ばら」「魔王」のような有名曲を初めとして、膨大な歌曲を遺しましたが、メロディを作る天才であった彼は、合唱曲でも非常に優れた曲を書いています。そして、今回ご紹介するこの「ドイツミサ曲」は、プロテスタントの信徒であれば、非常におなじみの曲が入っており、一聴をお薦めしたい曲集です。
ミサ曲は、ローマカトリックの典礼で使われる音楽であり、ご存知のように第二バチカン公会議までは、典礼文は全てラテン語でした。なので、ミサ曲の歌詞も全てラテン語です。クリスマス讃美歌の「あら野の果てに」の、「グローリア・インエクセルシスデオ」は、ラテン語で「いと高きところにて栄光神にあれ」という意味です。
しかしそうなると母国語でも歌いたくなるのが人情というものでしょうか。シューベルトはドイツ語によるミサ曲を作りました(もちろん、教会での演奏は禁止された)。と言っても、ラテン語の典礼文をドイツ語に訳したものではないのですが、全8曲はどれもシューベルトのメロディメーカーとしての才能が遺憾なく発揮された傑作揃いです。
実はこの曲集の曲は、「讃美歌第二編」に全部収められています(232〜239番)。そして、その中の第5曲「サンクトゥスのために」(Zum Sanctus)のみ、「讃美歌21」にも入っています。83番「聖なるかな」です(54年版では546番)。小月教会では、礼拝開始はいつもこの歌です。小月教会だけでなく、多くの教会でおなじみの歌ではないでしょうか。
54年版の「讃美歌」と「讃美歌21」で、この歌の歌詞が変わったのは皆さんご存知かと思います。54年版では「聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな 主なる神 昔いまし 今いまし 永久にいます主を讃えん」でしたが、「21」では「聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな 主なる神 主の栄光は地に満てり 聖なるかな 主なる神」です。信仰歴の長い信徒の方ですと、「21」の歌詞には馴染めない方もいらっしゃるかも知れません。
では、ドイツ語の歌詞はどうなっているんでしょうか。ご紹介しましょう。
Heilig, heilig, heilig, 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
heilig ist der Herr! 主は聖なるかな
Heilig, heilig, heilig, 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
heilig ist nur Er! 主のみ聖なり
Er, der nie begonnen, 主には初めがなく
Er, der immer war, 常におわしまし
ewig ist und waltet, 永遠に統べ治められる
sein wird immerdar. 主は永遠なり
Heilig, heilig, heilig, 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
heilig ist der Herr! 主は聖なるかな
Heilig, heilig, heilig, 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
heilig ist nur Er! 主のみ聖なり
Allmacht! Wunder! Liebe! 全能、奇跡、愛
Alles ringsumher! 全てを天と地に!
Heilig, heilig, heilig, 聖なるかな 聖なるかな 聖なるかな
heilig ist der Herr! 主は聖なるかな
見ていただければお分かりのように、54年版の歌詞は1番に近く、「21」の歌詞は2番に近い感じがしますね。それにしても、「21」の2番の歌詞「ダビデの子にホサナ、ホサナ」は、一体どこから来たんだという謎は残りますが。
それはともかく、讃美歌でおなじみのこの曲、演奏を聴くとこの上なく美しいです。私など初めてCDを聴いた時は、あまりの美しさに腰を抜かしそうになりました。私のCDは女声合唱ではなく少年合唱なんですが、この少年合唱がまた良いんですよ。まさしく「御使いの讃美の声はこうではなかったのだろうか」と思える、天上からの歌声とも言える逸品です。
讃美歌は、名前の通り「讃美する」のが目的ですので、CDで改めて聴く事は少ないかも知れませんが、この曲集はお薦めします。こんな美しい合唱を聴いてしまうと、礼拝で中途半端な讃美はできなくなるかも知れません(?)。