■吉田隆訳
■新教出版社
■A5版・216ページ
言わずと知れた、改革派教会(のみならず全プロテスタント)必携の、有名な信仰問答がこの「ハイデルベルク信仰問答」です。この本を書評で取り上げるのは、何と言うか「今更感」が漂いますけど(笑)。
信仰問答(カテキズム)とは、キリスト教の教理を学ぶための、問答形式による教理指導書です。そしてハイデルベルク信仰問答には、証拠聖句がついている版と、ついていない版があります。私は、断然証拠聖句付きのものをお勧めします。
と申しますのも、カテキズムは確かにキリスト教の教理を学ぶためのものですが、その根底には絶対聖書がなくてはならないからです。カテキズムは大事ですが、それが聖書より上に来てしまうのでは、それは本末転倒です。あくまでカテキズムは、「聖書を学ぶための理解を与えるもの」でなければなりません。
教団美竹教会の上田光正先生風に言えば、カテキズムは先人が積み上げて来た聖書解釈の「解釈史」であり、それは聖書に「前理解を与えるもの」でなければならないでしょう。カテキズムは聖書を学ぶためのものであるはずです。
であるからこそ、「証拠聖句付き」なのです。カテキズムだけで終わってしまっては、意味がないとまでは言いませんが、画竜点睛を欠くと言ってもあながち大外れではないでしょう。聖書と合わせて理解してこそ、カテキズムの価値はより高まるのではないかと思います。
そしてこの「ハイデルベルク信仰問答」は、その証拠聖句の多さが際立っています。教理と聖書が同時に学べる(教理は聖書に由来しているので、当然と言えば当然ですが)ところが、この本の最大の長所です。この本を時間をかけて学ぶ事で、聖書全巻を通読した際にも、必ずや理解の助けとなるはずです。
問答は全部で129ありますが、それらが「第1主日」から「第52主日」までの順番に分けられ、1年間で学べるように配慮されています。問答の並びも、三位一体論やサクラメント論を順を追って学べるように作られています。最後には主の祈りについての問答が並び、最後の最後が「アーメン」についての問答で終わります。
この本は、私が読んだキリスト教関連書籍の中でも、最も初期に読んだものです。最初は小月教会に置いてあったものを借りたのですが、後に自分でも購入しました。
ハイデルベルク信仰問答は、最初の質問と答えにその全てがあると言っても過言ではないと思います。この美しくも簡潔な問いと答えに、プロテスタントの信仰がある意味集約されていると言えましょう。
問1「生きるにも死ぬにも、あなたのただ1つの慰めはなんですか」
答1「わたしがわたし自身のものではなく、体も魂も、生きるにも死ぬにも、わたしの真実な救い主イエス・キリストのものであることです」
このような書籍できちんとキリスト教の教理を学んでいれば、異端の教えに惑わされたりする事は絶対にないはずです。「キリスト教にちょっと興味がある」くらいですと、この本はちとハードですが、本格的に聖書を学ぶなら必読の書と言えましょう。是非ご一読をお勧めします。