日本基督教団小月教会

牧師室の窓から

牧師室の窓から ■小島誠志著
■日本基督教団出版局
■四六版・120ページ

教団松山番町教会の小島先生が、「信徒の友」に連載されていたものをまとめた、気軽に読めるエッセイ集。エッセイとは言っても、聖書論やら神学を語ったものではなく、著者の小島先生が感じられた、牧会を通しての苦悩や喜びを、軽いタッチでまとめたものですから、キリスト者でない人でも軽く読めるものです。

前半は、「牧師室の窓から」と題したエッセイが12編。1つ1つはほんの数ページですが、軽妙洒脱な文章でありながら、ところどころはっとさせられる事も多く、ところどころさらりと聖句を交えていながらも、全く堅苦しいところはありません。短いながらも、ずっしりとして、かつ上質の読後感を感じる作品ばかりです。

後半は、「ことばの意味」と題して、少し長目のエッセイが3つ。こちらは前半よりは聖句が多く登場しますが、それでもメインの話題は高校野球だったり大相撲だったりで、肩が凝りません。

小島先生は四国生まれで、ずっと四国の教会で牧会なさってますが、文章を読んでみると、なんとなーく当教会の生粋の江戸っ子牧師、篠原先生と近いものを感じてしまうのは私だけでしょうか(笑)。あるいはこれが、高知県人気質というもので、これぞ「いごっそう」なのかも知れませんね。

後半で笑ってしまったのは、一番最後の「二人の者は一体となるべし」の、小島先生と奥様とのなれそめの話。小島先生が出会ったばかりの奥様に思わず言ってしまった一言に、読んでる私もずっこけてしまいました。これから読む方のために、内容は書きませんが、その一言に奥様がどのような反応をされたのか、非常に気になるところです。

また同じく後半の「『貧しさ』ということ」では、マタイ福音書の「山上の説教」の冒頭部分が引用されています。「心の貧しい人々は、幸いである。天の国はその人たちのものである」です。ここで色々な訳(KJVとかルター訳とか)でこの箇所が紹介されているんですが、面白いのは岩波から出ている新約聖書、いわゆる「塚本訳」。

件の箇所は、こんな訳です。「ああ幸いだ、神によりすがる"貧しい人たち"」。私も塚本訳は読んだ事がなかったんですが、これは良い文章です。むしろ、新共同訳よりもすっと意味が通るような気すらします。もっとも、日本聖書協会からこんな訳が出たら非難されそうですけど(笑)。

こんな感じで、折々に聖句を混ぜてはいますが、この本の主題は聖書や神学ではなく、あくまで小島先生自らの「信仰生活」です。信仰生活がまったく揺らぐ事なくまっすぐな方というのは、なかなかいないでしょう。そんな時、この本を手に取ってみれば、きっと日々の信仰生活に勇気をもらえる事間違いなしです。教会生活、信仰生活に行き詰まりを感じた時、お勧めしたい1冊。

難点は、表紙のイラストが、お世辞にも小島先生に似ているとは言い難いところかも知れません(笑)。



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