■朝野洋解説
■日本基督教団出版局
■四六版・256ページ
教団出版局の本って、ページ数の割りに値段が高い気がするんですが、この「日本の説教」シリーズは、コストパフォーマンスが良いと思います。そして、救世軍の山室軍平。彼の「平民の福音」に感銘を受けた者としては、この本はどうしても読みたかった1冊なのです。
山室軍平は、名説教者として名高かったそうです。彼の「民衆の聖書」シリーズを読んでも分かりますが、何より分かりやすく、そして力強い。また、山室は唐突に(笑)色んな譬え話を持ち出してきます。その譬え話が、また的確で面白いんですよ。山室の博識ぶりに驚かされると同時に、「民衆に福音を宣べ伝える」ことにおいて、山室軍平に勝る牧者はいなかったのではないか、と思えます。
聖書解釈という点で言えば、もちろん古いです。「その解釈はどうなのよ?」と言いたくなる点もあります。聖書は全部文語訳ですし、主の御名は「エホバ」になってしまってます。しかし、この力強さはどうでしょうか。これほど力強く福音を証しできる牧師が、いるでしょうか? この不思議な力強い説教には、聖霊の働きがあったとしか言えないと思うのです。
我々プロテスタントの信徒にとって、説教とは別にキリスト教の講演会でも、聖書の解説会でもなく、それは「神の言葉を取り次ぐ」ものであるはずです。山室の説教には、間違いなく神の御言葉があると断言できます。
山室は救世軍の人ですから、特に「悔い改め」「聖潔」を重視した内容ですし、もちろん禁酒・禁煙厳守です。そういう内容の説教も収録されています。これがまた説得力があるんですよね。社会鍋で募金を集め、自前で炊き出しまでボランティアでやってしまう救世軍ならではの、「実行的な説得力の強さ」なのかも知れません。
冒頭には、キリスト者なら誰でも知っている「放蕩息子のたとえ」(ルカ福音書15:11-24)の説教です。ここで語られている山室流のユーモア、そして想像力も交えた山室流の福音が、非常に真に迫って来ます。この冒頭の説教は、恐らく山室も何百回も語った内容でしょうが、ここだけでも必読の内容です。
「キリスト者とは、福音を証しする者である」。それが、この説教集を読むと何より痛感させられます。あなたは、身近な人に福音を宣べ伝えていますか? この本を読むと、軍平先生の「行け、キリストの兵士達よ!」という檄が聞こえてきます。何度でも読んでみたくなる説教集。お薦めです。