日本基督教団小月教会

ゆうべの祈り

ゆうべの祈り ■C.ブルームハルト著/加藤常昭訳
■日本基督教団出版局
■B6版・278ページ

「祈り」の本は、色々と出ています。そもそも祈りというのは、神との会話であるので、別段整ったものであったり、文学的に優れていたりする必要性はないとは思いますが、礼拝での代表祈祷や、祈祷会での祈りは、会衆や参加者が心から「アーメン」と唱和できるものでなくてはならないでしょう。ですから、優れた先人の祈りに学ぶ事は、大いにキリスト者としての自己研鑽、また豊かな礼拝に繋がるものであると思います。

この本には、ブルームハルトの祈りが366篇、つまり1年分収められています。特徴としては、「シンプルでありながら、非常に力強い」事と、そして主の祈りの冒頭、「願わくは御名を崇めさせ給え 御国を来らせ給え 御心の天になる如く地にもなさせ給え」のバリエーションが、非常に多く使用されている事です。例えば、1月1日の祈りは、こうです。

天にいますわれらの父よ! み名があがめられますように。み国が来ますように。み心が天に行われるとおり、地にも行われますように! 新しい年も、この祈りにおいてわれらをお守りください。われらがともに手をたずさえて、永遠にして聖なるあなたとの交わりを見いだしうるようにしてください。そして、自分の道を、地上における自分の道を歩むわれらを祝福してください。そしてたとえ地上がどんなに悪しきものと思われる時も、すべての事において常に自由であり、あなたがなされるすべてのよきことを日ごと夜ごとに感謝しうるようにしてください。われらはみ名をたたえ、救い主が語ってくださったその通りに祈ります。 アーメン

いかがでしょうか。同じく名著として知られるJ.ベイリーの「朝の祈り 夜の祈り」が、流麗で美しいのに対し、こちらは大変力強い祈りです。それは、英語とドイツ語という元々の言語の違いという事も、もしかしたらあるのかも知れません。

また、これは後書きで訳者の加藤常昭先生も書かれていますが、「私」ではなく一貫して「われら」と祈り続けます。祈りとはすなわち自分一人のものではありえないという事でしょう。この本を日々ひもとく事で、自然と救いの確信に満ちた祈り、心から「アーメン」と唱和できる祈りに導かれるのではないかと思います。「ゆうべの祈り」ですから、私自身は寝る前にその日の祈りの箇所を読む事にしています。

それぞれの祈りには、全て該当する聖句の箇所が記されています。いくつか旧訳外典の「知恵の書」からの祈りもありますが、ちゃんと原文が引用されているのは嬉しい配慮です。

で、この本は日本基督教団出版局から発行されていた(過去形)のですが、現在では絶版になっています。これほど優れた信仰の書が絶版とは、何と言う理不尽! 古書で高値が付いている事自体、この本がいかに高く評価されているかの表れです。教団出版局には、是非ともこの優れた本を、再び入手できるようにご配慮いただきたいと思います。



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